水素社会実現の鍵はトラック? トヨタ・いすゞ・日野の3社提携で「MIRAI」の利便性が上がる訳

小型FCトラックの社会実装を進める

 記者会見のなかで明らかになったのは、3社がCASEのなかで優先的に取り組むのが電動化であるということです。

共同記者会見にて(日野自動車株式会社 代表取締役社長 下 義生/ トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田 章男/ いすゞ自動車株式会社 代表取締役社長 片山 正則)
共同記者会見にて(日野自動車株式会社 代表取締役社長 下 義生/ トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田 章男/ いすゞ自動車株式会社 代表取締役社長 片山 正則)

 電動化についてはEVとFCV(燃料電池車)で社会実装を進めるとしていますが、豊田社長は2021年3月に現地訪問した、福島県浪江町での「福島水素エネルギー研究フィールド」を活用する、30万人都市向けの水素エネルギーを活用したFCVを含むモビリティ実証の重要性を強調しました。

 福島県内には福島市、郡山市、いわき市という30万人規模都市があり、これをトヨタでいう「原単位(げんたんい)」として、全国各地に数多い30万人都市での本格的な社会実装に向けた足掛かりとしたい考えです。

 また、カーボンニュートラルでは、原料の採掘から輸送、部品製造や自動車の最終組立、ユーザーによる使用から廃棄に至るまでの長い年月を通じて考慮する、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の観点が重要です。

 LCAの観点から、6万8000枚の太陽光パネルで発電した電力で水を電気分解して水素を製造する福島での取り組みは、日本がこれから目指すべきカーボンニュートラルで適した方法だというのが、トヨタをはじめとした日系メーカー各社が加盟する日本自動車工業会の基本な考え方です。

 そのなかでは当然、トヨタと日野が共同開発する小型FCトラックに加えて、トヨタ燃料電池システムを搭載するいすゞの小型FCトラックも走り出すことになります。

 そのほか、トヨタとセブンイレブンが2019年から進めてきた小型FCトラックによる社会実証で、2021年からローソン、ファミリーマートを含めた形に拡大し、2022年以降の社会実装を目指すことも明らかになっています。

 こうして社会のなかに小型FCトラックの数が増えていくと、水素ステーションのインフラ整備も必然的に増加し、トヨタ「MIRAI」のような乗用FCVの利便性があがり、新規の乗用FCVの市場参入がしやすくなるはずです。

 今回の会見で豊田社長は「商用車は日本市場全体で見ると、台数では2割だが、走行距離では4割となり、CO2排出量では5割に達する」と具体的な数字をあげて市場現況を示しています。

 そのうえで、協業により日野といすゞで国内商用車市場の8割となることを踏まえると、今回の発表が日本におけるFCV普及の大きな転換期となる可能性が高いと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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1件のコメント

  1. また調味料が減るな、どうせ片方だけが血を流す同盟みたいなもんだろ?
    自分は大型トラックを改造した移動補充車の実際の仕事量を見たら皆さん見方が変わると思うけどね。
    TOYOTAは車作りが下手な会社だしISUZUと日野ではディーゼルの考えが違うし、それに日野は元はISUZUの分家だし、ギガとプロフィア見たら提携なんて無理じゃないの?
    今に始まった話じゃないけどユーザー不在の企業は要らないんだよな。

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