1000万円で始めるフェラーリ泥沼ライフ! 「612」「456」の4座フェラーリを狙え

パリ・サロンのブースを飾った「612」の注目のプライスは?

 2004年にワールドプレミア、その年の末には日本デビューも果たした「612スカリエッティ」は、今世紀初頭のフェラーリのフラッグシップとして君臨した、きわめてゴージャスな2+2グラントゥリズモだ。

 スカリエッティとは、数十年にわたり長らくフェラーリのボディを製作してきたカロッツェリアの名に由来する。

●2007 フェラーリ「612 スカリエッティ」

パリ・サロンのフェラーリブースに展示されたヒストリーを持つフェラーリ「612 スカリエッティ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
パリ・サロンのフェラーリブースに展示されたヒストリーを持つフェラーリ「612 スカリエッティ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 テクノロジー面における最大のトピックは、フェラーリV12モデルとしては初めて、アルミ製スペースフレームを採用したことだろう。また、旧456GTに端を発する、ベルト駆動式5.7リッターのV12エンジンをフロントアクスル後部に搭載する「フロントミドシップ」レイアウトも特徴としていた。

 ただ456シリーズでは思い切って短縮したホイールベースは、612では4つのフルサイズシートを収めるため、一気に350mmも延長。実質的な後継車である「FF(Ferrari Four)」と同じく2950mmというフェラーリ史上最長の雄大なサイズを誇ることになったが、フェラーリの古典を生かしたエレガンスを前面に押し出すことに成功した。

 4人の大人が快適に移動することができる612スカリエッティは、ベントレーやメルセデス・ベンツに求められそうな用途を充分にこなす一方で、性能面では容易に勝つことができる本物のグランドツアラーだった。

 V12エンジンが7250rpmで540psを発揮すると、4.2秒で100km/hに到達。最高速度は驚異的な315km/hだった。

 また、アルミニウム製のスペースフレームとアルミ合金製ボディパネルは、456時代から大幅に大型化していたにもかかわらず車両重量はほぼ同等。さらに456に対してねじり剛性は60%もアップされ、優れたハンドリングに大きく寄与することになったとされる。

 今回RMサザビーズ「OPEN ROAD FEBRUALY」オークションに出品された612スカリエッティは「ブル・トゥール・ド・フランス」のボディにグレー本革レザーという、古典的なカラースキームが魅力的な1台。

 ごく少数のみが作られた6速MT仕様ではなく、612としてはデフォルトの6速「F1マティック」仕様ながら、コレクションとしても望ましい「HGTCパッケージ」が装備されている。

 新車当時、日本では273万円プラスのエキストラだったHGTCパッケージは、約10%速めた変速タイミングやカーボンセラミック製ブレーキローター、スポーツエキゾースト、よりソリッドなスタビライザー設定などで構成されていたが、実際の装着車両はかなりレアとされる。

 この612スカリエッティでもっとも注目すべきヒストリーは、最初のプライベートオーナーのもとにデリバリーされる直前、2006年パリ・サロンのフェラーリ社ブースを、ブラックの「599 GTBフィオラーノ」および「F2005」フォーミュラ1マシンと一緒に飾ったことであろう。

 そしてパリ・サロンでの華々しい出演後、この個体はアラブ首長国連邦に輸出され、数年間をかの地で過ごしたのち英国に輸入。今回のオークション出品に至った。

 近年、かなり買い求めやすくなっている感のある612スカリエッティだが、今回のオークション出品にあたり、RMサザビーズ欧州本社は当初ドル建てで11万−14万ドル(邦貨換算約1200万−1520万円)のエスティメートを設定。

 ところが、理由は不明ながら中途からユーロ建てとなった実際のオンライン競売では「Without Reserve(最低落札価格なし)」だったことから、エスティメートを大きく割り込む6万6000ユーロ、つまり邦貨換算約854万円で落札となった。

 たしかに安価ではあるのだが、維持についてはV8フェラーリよりも格段にハードルが高いのも事実。あくまで「フェラーリ上級者」向けのモデルであることは、ここであらためて明言しておくことにしよう。

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