バーゲンブライスの2000万円!! 定番SUV「Gクラス」最強モデル「4×4スクエアード」とは

新車当時3510万円だった「Gクラス」の売り出し価格は?

 RMサザビーズ「OPEN ROAD FEBRUALY」オークションに、同社の欧州本社から出品されたメルセデス・ベンツG500 4×4スクエアードは、中東の産油国クウェートにおいて、現在に至る唯一のオーナーに新車としてデリバリーされた個体である。

●2017 メルセデス・ベンツ「G500 4×4スクエアード」

4輪Gクラス史上最高と謳われているメルセデス・ベンツ「G500 4×4スクエアード」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
4輪Gクラス史上最高と謳われているメルセデス・ベンツ「G500 4×4スクエアード」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 少々話題は脱線するが、筆者は2010年2月にクウェートでおこなわれたクラシックカーの祭典「第1回クウェート・コンクール・デレガンス」に招かれ、かの地で約一週間を過ごしたことがある。

 この滞在期間中、海外からの招待客にはクウェートの文化に触れるアトラクションの数々も設けられたのだが、なかでも目玉となったのは、首都クウェートシティ近隣の砂漠地帯に特設された豪華テントでおこなわれる昼食会+アウトドア体験だった。

 この時に現地の人から聞いたところによると、中東の王族をはじめとする富裕層は、もともと砂漠の遊牧民「ベドウィン」の血脈を受け継いでいることに誇りを持っており、週末には近隣の砂漠で巨大なテントを設営して過ごすことも多いとのことだった。

 この砂漠ヴァカンスに向かうためのアシとなるのが、高級なSUVないしはクロスカントリーカーたち。ショーファー任せではなく、オーナー自ら運転することが美徳とされていると聞いたが、当時からトヨタ「ランドクルーザー200」やレクサス「LX」、あるいはレンジローバーなどが絶大な人気を誇る傍らで、スタンダード/AMG版を問わずメルセデスGヴァーゲンは少々小さすぎると評されていたようだ。

 かつては砂漠で行動をともにするラクダの血統や見栄えにこだわったという彼らは、クロスカントリーカーにもエクスクルーシブな特性を求め、レンジローバーやランドクルーザー以上に目立つことのできるクルマを熱望していた。

 それゆえベントレー「ベンテイガ」やロールスロイス「カリナン」、あるいはランボルギーニ「ウルス」などの登場前夜だった時代において、特別に仕立てられたGヴァーゲン「G500 4×4スクエアード」がクウェートの贅沢な顧客に対する訴求力を備えていたことは間違いないと思われる。

 そろそろ本題に戻ろう。今回の出品車両はオニキスブラック・メタリックのボディカラーに、メルセデスのビスポークブランド「デジーノ(Designo)」仕立てのブラック本革レザー製インテリアを組み合わせる。

 そして、砂漠の王者となるべくクウェートにデリバリーされたにもかかわらず、現在に至るまでの走行距離は1800km足らずという。

 つまり、ほとんど乗られることがなかったことから、製作から4年を経た今なお、エクステリア/インテリアともども新車そのままのコンディションを維持している。

 加えて、サンルーフや「ハーマン・カードン」社製サウンドシステムを含むエキストラオプションが組み込まれているが、おそらくもっとも重要な装備はこのモンスターの駐車を支援するためのリアビューカメラといえるだろう。

 このエクストリームな1台に対して、RMサザビーズ欧州本社は15万−20万ユーロのエスティメート(推定落札価格)を設定した。そしてオンライン限定の競売では、締め切り前2時間半となっても最高額は10万ユーロにとどまった。

 締め切り時までにもビッド(入札)は12件のみで、最高額は12万5000ユーロ、つまり日本円にして約1600万円に終わったことから、残念ながら落札には至らなかった。

 現在ではRMサザビーズ欧州本社の営業部門によって、個別の顧客を対象とした「Still For Sale(継続販売)」の真っ最中。価格は15万5000ユーロ(邦貨換算約2000万円)となっている。

 5年前の新車時には3000万円以上で販売されていたこと、そして現状でも新車同様のコンディションを維持していることを思えば、予想される販売価格はリーズナブルといえなくもないが、やはりこの種の「顧客を選ぶ」クルマのビジネスが一筋縄ではいかないことを、如実に示しているかにも思われるオークション結果であった。

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