なぜ今10年選手のトヨタ「アクア」を販売強化? モデル末期でも鬼滅主題歌を起用した訳

自動車メーカーは、毎年さまざまな新型車やマイナーチェンジ、改良をおこなっています。同時にそれらの魅力を訴求するためにさまざまな場所で宣伝活動を実施していますが、なぜ発売から10年近くが経過したトヨタ「アクア」はアニメ「鬼滅の刃」の主題歌として高い人気を集める歌手LiSAさんの「紅蓮華」をCM曲に使用するなど宣伝に注力しているのでしょうか。

なぜアクアに鬼滅の刃効果を使ったのか?

 通常、商品やサービスの宣伝は新しいものが発売されたタイミングにおこなわれるのが一般的です。

 そのなかで、2011年12月に発売されたトヨタ「アクア」は2020年中頃から2021年にかけて多くの宣伝を見かけます。なぜ、発売から10年近く経過したモデルにも関わらず宣伝に力を入れるのでしょうか。

発売から10年目に突入したトヨタ「アクア」なぜいまになって販売強化となる宣伝に注力しているのか(画像は特別仕様車 S“Style Black”)
発売から10年目に突入したトヨタ「アクア」なぜいまになって販売強化となる宣伝に注力しているのか(画像は特別仕様車 S“Style Black”)

 トヨタが5ナンバーサイズかつハイブリッド専用車として販売しているアクアは、同じくトヨタのハイブリッド専用車「プリウス」の弟分として2011年に登場しました。

 2021年で10年目となるアクアですが、これまでも商品力を維持するためのマイナーチェンジや改良を実施しています。

 とくに、2017年には大がかりなマイナーチェンジをおこない、外観デザインを角のとれた丸みのあるスタイルへ変更。

 直近では、2020年8月に上級グレードにアクセルとブレーキの踏み間違いやアクセルの踏み過ぎなどで起こる衝突被害の軽減に寄与する「インテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]」を標準装備しています。

 このように商品力を磨き続けているアクア。2019年の登録車販売台数では毎月TOP10にランクインし、年間では全体5位となる10万3803台を記録しました。

 しかし、2020年2月にはトヨタから5ナンバーサイズの「ヤリス(ガソリン車/ハイブリッド車)」が「ヴィッツ」の後継モデルとして登場したことなどもあり、アクアの同年販売台数は全体14位の5万9548台まで落ち込みました。

 そうしたなかで、アクアの新しい宣伝として2020年7月21日からアニメ「鬼滅の刃」の主題歌として高い人気を集める歌手LiSAさんの「紅蓮華」を使ったテレビCMなどが放映されました。

 当時のSNSでは、「紅蓮華がアクアのCMに使われている!」「なぜいまアクアに紅蓮華?」と話題となっていたほか、2021年に入ってからはYouTube上の広告にアクアが頻繁に登場しています。

 なお、次期型アクアに関してはトヨタ販売店などから「2021年中頃に登場するのではないか」といわれており、現行モデルはまさにモデル末期といえますが、なぜこれほどまでアクアの宣伝が活発化しているのでしょうか。

 さまざまなメーカーの広告業務に携わる広告代理店の担当者は次のように説明しています。

「基本的にクルマの宣伝は、商品改良されるたびに膨大な広告予算をテレビ、ラジオ、ネットワークなどに振り分けて訴求していきます。

 モデル末期といわれるタイミングでも新車として売っていることもあり、販売をテコ入れする意味でも宣伝に力を入れることはあります。

 あくまで予想ですが、これまでコンパクトなハイブリッド車の代名詞だったアクアは市場でブランド化しています。

 そのため、ヤリスという新型車が登場した後もそのブランド力を継続させたいというメーカーの意図はあると思いますので、当時国民的アニメとなっていた鬼滅の刃の主題歌を抜擢することでアクアブランドに再度注目を集めたかったのではないでしょうか。

 また、モデル末期でアクアブランドが低迷しているなかで、仮に次期型が登場するのであれば、今後の販売に繋げるためにも『アクア』というブランドをさまざまな場所で訴求する必要があったのだと思います。

 これは、アクアに限らず人気商品であればやり方は異なるものの、商品ブランドを大切にする手法のひとつです」

※ ※ ※

 新車市場には、毎年さまざまな新型車が登場するうえ、既存車のマイナーチェンジや改良も頻繁におこなわれています。

 こうした状況があり、自動車メーカーはそのモデルの魅力を訴求するために、あらゆる切り口で宣伝しているのです。

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