超絶希少!! アルファ ロメオ「TZ3」に試乗して分かったダッジ「バイパー」との違い
アルファ ロメオの歴史のなかで、別格扱いの「TZ」。このTZが再び蘇ったのは、アルファ ロメオ創立100周年となる2010年に発表された「TZ3コルサ」であった。ワンオフモデルのTZ3コルサとは違い、ロードカーとして作られた「TZ3ストラダーレ」に、現地で試乗した数少ないモータージャーナリストのひとり、嶋田智之氏による貴重な新車当時のインプレッションで、ザガートの仕事ぶりを振り返ってみよう。
蘇る「TZ」の称号
スターターボタンを押してエンジンに火を入れると、一度ならず耳にしたことのある、8.4リッターV10の獰猛なサウンドが耳に飛び込んでくる。間違いなく、ダッジ「バイパー」のそれだ。
なのに、そのことがにわかには信じられないような、そんな気分が拭えなかった。強烈な吸引力と説得力を持つあの美しいフォルムのなかに、自分が今、潜り込んでいる。その事実が、そんな気持ちにさせた一番大きな理由だったと思う。
●叶わなかった「TZ3コルサ」の試乗
最初に「TZ3」とネーミングされたクルマの写真を目撃したときの衝撃は、ちょっと忘れられない。アルファ ロメオにとっても、そしてザガートにとっても特別な意味を持つ、それぞれの歴史のなかに輝く宝物、「TZ」。
それが幾分かモダナイズされて蘇ったような「TZ3コルサ」という名のそのレーシング・スポーツは、二次元の世界のなかから途轍もないオーラを放っていて、僕の目を完全に釘付けにしたのだ。そしていつか乗ってみたいものだと夢想していたのである。
残念ながら、それは叶わなかった。TZ3コルサは、新たに鋼管スペース・フレームとカーボンファイバーを組み合わせたシャシを設計・製作して、そこにマセラティ製4.2リッターV8ユニットを積み、アルミ製のボディを組み付けた構造を持つ完全なレーシング仕立て。
レギュレーションの関係でエントリーできるレースは限られていたとはいえ、公道を走るのを前提に作られていないため、試乗には大きな壁があるうえ、早々とドイツへ嫁ぐことが決まっていたのだ。試乗のリクエストはしたものの、許されることはなかった。
●「TZ3ストラダーレ」の試乗のため、ミラノへ!
代わりに「公道仕様のクルマができ上がったら取材に来るといい」という回答をもらい、2011年にようやくミラノへと飛んだのだった。
2011年の春前になって公開された「TZ3ストラダーレ」は、その構造からしてコルサとは違っていて、アルファ ロメオと同じフィアット・グループに属するクライスラーのバイパーをベースに選び、新たにデザインしたカーボンファイバーのボディを架装している。
しかもワンオフだったコルサに対して、ザガートの特別な顧客に向けて最大9台までは生産する用意がある、とされていた。僕がこのとき潜り込んだのは、その2号車である。
バイパーは確かにチュボラーレ(チューブラーフレーム構造)のクルマだから「TZ」の名前に嘘はないし、ディメンションなどもTZ3の計画に理想的だったと聞かされた。が、バイパーはとにかくあらゆる面で強烈な個性を持ったクルマであり、その匂いが簡単に消えるとは思っていなかった。
なのにコクピットに収まってもエンジンを始動しても、「やっぱりバイパーじゃん」という気がしてこない。それにはインテリアの視覚的要素も、かなり大きな影響力をも持ってるのだとも思う。この2号車は、これから生み出されるだろう個体も含めた他の8台とは決定的に異なる、特別あつらえのインテリアを持っていたのだ。
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