ホンダ「アクティ」終了後も軽トラは安泰か? EV化が波及し得ない事情とは
軽トラックの電動化はどう進展する?
では、軽トラックの電動化は今度、どのように進むのでしょうか。
電動化とひとことでいっても、マイルドハイブリッドやストロングハイブリッド、ピュアEVなどさまざまなものがありますが、経済産業省が2020年12月25日に発表した「グリーン成長戦略」によると、「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる」としています。
そのなかに「軽自動車・商用車の電動化」が盛り込まれるとの記載があります。つまり、近未来の軽トラックにとって電動化は必須です。
もっとも現実的なのは、スズキが「ワゴンR」などで採用している、発電機を兼用するモーターによる、いわゆるマイルドハイブリッドでしょう。
軽トラックの商品価値は、価格の安さ、耐久性、軽量、取り回しやすさ、そして地域に密着した販売協力店でも対処できる整備のしやすさです。
そうして需要性に対して、EVモードでの走行が可能となるなどシステムが複雑化する、いわゆるストロングハイブリッド車は適さない印象があります。
そうした社会実状を踏まえたうえで、軽トラックのEV(電気自動車)化という議論や構想があることは理解できます。
「働くクルマ」であるからこそ、たとえ燃費モードでのCO2排出量が少なくても、継続的な利用によってCO2排出総量が増えるので、EV化が有効です。また、クリーンな農業を目指すためには、積極的にEV化するべきなのです。
さらに、シェアリングサービスも考慮した、超小型モビリティの活用も視野に入れるべきだ、といったさまざまな考え方が出てくることも、当然だと思います。
ただし、そのためには農業従事者を中心とした「行動変容」が求められます。
価格はもちろん、軽さや取り回しという意味での機動性を担保するためには、軽トラックに搭載できる電池容量はあまり大きくできません。
そうした限られた使用条件のなかで、自宅や事業所のみでの充電を徹底する「計画的な生活」へのシフトが本当にできるのでしょうか。
筆者は現在、福井県永平寺町で、将来のまちづくりや交通環境などに対する政策を協議する、永平寺町エボリューション大使として、地域の住民や事業者とさまざまな案件で膝詰めの議論をしています。
実際に、地域の人と筆者が一緒に軽トラックを使用する機会もあります。
そうした実体験のなかで、軽トラックを日常的に活用している人たちの生活を、電動化という観点だけで大きく変えることは極めて難しいと感じます。
近い将来、「軽トラックEV化の一例」として日本各所で実証試験などがおこなわれる可能性はありますが、単なる技術的な実証ではなく、社会を変えるために住民の意識を大きく変えるには、地道な努力が必要不可避だと考えます。
繰り返しますが、当面は軽トラックの電動化はマイルドハイブリッドというのが、ユーザー、国、自治体、メーカー、ディーラー、整備工場など各方面にとって腹落ちする現実解だと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
既に存在した軽トラックの電気自動車は無視か・・・・。
ホンダは前代の軽トラでユーザーを失望させた、元に戻したが手遅れだっただけ。
スバルの軽トラック戦略は失敗ではなかったが、消されただけ。
4WDのEV軽トラックが有ったとしたら、需要は変わったかもしれない。
三菱自動車が2012年から軽トラEVのミニキャブミープトラックを出していた事は
無視なのか無知で知らないのか?