ユーザーは疑問視? 「ランドクルーザー」と「ディフェンダー」で異なる方向性の行方

どんな荒れ果てた道でも、どんな過酷な環境下でも最後まで走り抜く信頼性と長い歴史のブランド力を持つトヨタ「ランドクルーザー」とランドローバー「ディフェンダー」。似た者同士とされていましたが、ディフェンダーは大きく方向性を変えてきました。今後、それぞれのオフロード4WDはどうなっていくのでしょうか。

オフロード4WDで対を成す「ランドクルーザー」と「ディフェンダー」

 スズキ「ジムニー」の人気によって、ここ数年でオフロード4WDが復権しています。

 街にも溶け込むスタイリッシュなSUVとは異なり、泥だらけが似合うオフロード4WD。
 
 昨今ではよりヘビーデューティな雰囲気の、旧型のトヨタ「ランドクルーザー」やジムニーなどが、若年層の心を掴んでいます。

大きく変わったランドローバー「ディフェンダー」。ファンからは賛否両論?
大きく変わったランドローバー「ディフェンダー」。ファンからは賛否両論?

 そんなリバイバルの兆しのなかで、2020年4月にひっそりと1台の新型車が日本に上陸しました。

 ランドローバー「ディフェンダー」です。ディフェンダーというマスコットネームは、ランドローバーブランドの源流となったシリーズIのDNAを受け継ぐ証しですが、シリーズI、II、III、ランドローバー90/110、そして先代ディフェンダーと新型とではある点で大きく異なります。

 それは構造です。1948年に、ジープ「MB/GPW」の模倣から始まったランドローバーは、ジープ同様のラダーフレーム構造+リジッドアクスル式サスペンションという造りをしていました。

 アッパーボディこそアルミ製でしたが、それが低重心と高耐久性につながり、以後、世界中で使われるワークホースとして進化してきました。

 ランドローバーブランドはその後、ラインナップに「レンジローバー」や「ディスカバリー」、「フリーランダー」などのマルチパーパスな車種を増やしていきましたが、名前が変わってもディフェンダーだけは原点のコンセプトを守り続けていたのです。

 ところが、2019年にフランクフルトモーターショーで姿を現した新型は、予想していたとはいえ、親会社の“タタ色”の強いものでした。

 ボディはフルアルミ製のモノコックボディ、サスペンションは4輪独立懸架式に変わり、昔からのファンにため息をつかせたのです。

 では、なぜフルアルミ製のモノコックボディや4輪独立懸架式サスペンションでは、オールドランドローバーファンは納得しないのでしょうか。

 それは堅牢性や悪路走破性の低下を危惧しているからです。ラダーフレーム構造は頑丈な鋼鉄製の骨格によって、路面からの大きな入力を分散させ、アッパーボディに大きな負担をかけないようにできています。これはリジッドアクスル式のサスペンションも同じです。

 リジッドアクスル式は、ホーシングという頑丈な鉄のケースにドライブシャフトやディファレンシャルギアが内蔵されているため、路面にある障害物へのヒットに強く、同時に路面からの大きな入力も分散させてくれます。

 また左右輪が1本の軸で繋がっているため、片方のタイヤが路面で持ち上げられると、もう片方のタイヤは路面に押しつけられる作用があり、滑りやすい路面でもタイヤのトラクションを有効に使うことができるメリットもあります。

 アームの長さによってトラベル量が決まってしまう4輪独立懸架式に比べると、可動幅が大きいのもリジッドアクスル式の美点といえます。

 さらにラダーフレームはアッパーボディと分割されているため、例えアッパーボディが破損していても、ラダーフレームやサスペンション、パワートレーンがダメージを受けていなければ走行し続けることができます。

 そんなオフロード4WDのセオリーを破ったディフェンダーに乗ってみると、ボディは決してヤワじゃないことが分かります。

 捻れ剛性においてはラダーフレームの3倍と謳うモノコックボディは、走り出すとすぐに「プラットフォームがしっかりしている」と驚かされます。

 荒れたオフロードを走行しても、ミシッという音ひとつ立てず走ってくれました。

 サスペンションは4輪独立懸架式、タイヤはハイウェイテレーンですが、「オール・テレイン・プログレス・コントロール」という電子デバイスのおかげでイージーにオフロードを進むことができました。

 電子デバイスといえば、車体の下の状態を仮想的に可視化させる「クリアサイト・グランドビュー」も搭載されており、まさに最先端のオフローダーにふさわしい仕上がりといえるのではないでしょうか。

 モノコックボディや4輪独立懸架式サスペンションは、現代的なドライブフィールや安全性、環境性能を実現するためには、マストなものです。

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