ユーザーは疑問視? 「ランドクルーザー」と「ディフェンダー」で異なる方向性の行方
「ランドクルーザーは地上最後のクルマ」を守り抜くトヨタの思想とは
しかし、それでも新型ディフェンダーには、不安が残るヘビーユーザーも少なくないようです。その不安は、ライバルである「ランドクルーザー」を見れば分かります。
ランドクルーザーは1951年に誕生したオフロード4WDで、ディフェンダー同様にジープを模倣して誕生しました。
当初は「トヨタ・ジープBJ型」という名前でしたが、商標登録の問題から「ランドクルーザー」というマスコットネームに変更。
ちなみにこの名前は、ランドローバー(陸の放浪者)のローバーが、“海賊”という意味もあることから、それを駆逐する陸の巡洋艦という意味で、ランドクルーザーと名付けられたという逸話があります。
市場では常に比較され続けてきたふたつのオフロード4WDですが、ランドローバーブランドのモデルが続々とモノコック化を進めているのに対して、ランドクルーザーはあくまでも伝統的なメカニズムにこだわっています。
それはトヨタ開発陣のなかに「ランドクルーザーは地上最後のクルマ」という信念があるからです。
ほかのすべてのクルマが故障や経年劣化で動かなくなっても、ランドクルーザーは動いていなければならないという考え方です。
昨今のランドクルーザーは、200系とプラドを見るかぎり、SUV化と電子化が進んでいます。
200系に搭載されている電子デバイス「マルチテレインセレクト」を使えば、オフロードでステアリング操作以外をすべてクルマがやってくれる半自動運転を実現しました。
こうした電子化もまた世のオフローダーの批判を浴びましたが、トヨタはランドローバーとは異なり、70系というワークホースを僻地用に残しています。
実は、これこそがファンのディフェンダーに感じる違和感なのです。
短期間で見ればラダーフレーム構造の3倍の捻れ剛性を持つモノコックボディでも、世界の僻地でのオフロード4WDの使われ方において、10年20年という長期間を耐えることができるのでしょうか。
4輪独立懸架式サスペンションも、アームやピボットを岩にぶつけたとき、果たして走行不能にはならないでしょうか。
整備性の点でも不安が残ります。複雑なメカニズムを多用したディフェンダーが、ろくな整備施設もない僻地で、走行可能な状態を維持できるのか疑問です。
ランドローバーは今後、プロユースのためのバリエーションを増やすと発表しています。
たしかに新型ディフェンダーは、街でも山でも乗りやすく、完成度の高いクルマといえますが、世界で未だ活躍し続けるボロボロのランドクルーザー40系や70系のようになるのか。そのような姿が、新型ディフェンダーでは思い浮かびません。
ちなみに次期メルセデス・ベンツ「Gクラス」もモノコックボディ+4輪独立懸架式サスペンションになるという噂があります。
一方で、ランドクルーザー300系はHV化するものの、ラダーフレームとリジッドアクスル式サスペンションは踏襲といわれています。
乗用車やSUVに比べて、非常に長い年数使われるオフロード4WD。果たしてどちらの選択が正解なのか。その答えが出るのは、21世紀中盤です。
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。
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