EV災害時に役立つ印象も 大雪で立ち往生は想定外? 簡易充電が今後の課題か

現時点では、EVにとって大雪は「弱点」

 結論からいえば、もし今回立ち往生していたクルマのほとんどがEVであったとしたら、事態はより深刻なものになっていたといわざるをえません。

 まず大きな問題は、バッテリーの性能ダウンです。

 多くのEVで搭載されているリチウムイオンバッテリーはもちろん、基本的にはどのような方式のバッテリーであっても化学反応によって電力を発生させている以上、寒冷地ではその性能が落ちることが普通です。

 一般的に、氷点下以下の寒冷地では平時の20%ほど性能が落ちるといわれています。

 さらに、暖房の仕組みの違いも影響します。前述の通り、ガソリン車はエンジンの排熱を二次利用できるため効率的ですが、EVの場合は別途暖房システムを用意する必要があります。

 PTCヒーター式やヒートポンプエアコン式などが代表的ですが、いずれも航続距離には少なからず影響を与えます。つまり、EVにはガソリン車に比べて寒冷地に弱い要素が少なくないのです。

 そして、これらの影響を受けてエネルギーがなくなってしまう「電欠」状態になってしまったとき、EVはどうなるのでしょうか。

 2010年から販売されている日産のEV「リーフ」の場合、バッテリー残量が低下すると航続距離表示が消え、モニターにも出力制限が通知され、充電するように促されます。

 メーターの下にある出力制限を示す「亀マーク」が点灯するなどさまざまな警告が出現。完全に電欠になると、自動でNレンジにギアが移り、ハンドルもパワーステアリング機能がオフとなります。

 ただし補機類用のバッテリーが動いていれば、モニターから「エマージェンシーサポート」が利用可能です。

 日産独自のサポート「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム」に加入している場合、「電欠時レスキューコール」と呼ばれるサービスを利用して、最寄りの充電できる施設までレッカー移動する対応が可能だといいます。

 EVの充電時間について、日産の販売店スタッフは次のように話します。

「リーフを普通充電する場合、40kwhで8時間、62kwhで12時間半掛かります。また、急速充電器の場合、30分ほどで80%近くまで充電することが可能です。

 万が一、電欠となった場合にはむやみに作動させることはせず、レスキューを待って頂くのが最善といえます」

大雪時の立ち往生ではEVやFCVはどうすれば良いのでしょうか
大雪時の立ち往生ではEVやFCVはどうすれば良いのでしょうか

 従来のガス欠であれば、今回の関越自動車道での救援と同様に、携行缶などにガソリンを数リットル入れて給油をすれば、距離にして数十キロの移動や、暖気運転を継続することが可能です。

 しかし、EVを数十キロ移動させるために必要な電力を供給するためには、携行缶のような手で持てるサイズのバッテリーというわけにはいきません。また、給電時間も給油時間とは比較にならないほどかかります。
 
 現在では、日本全国でおおよそ20kmから30kmおきに充電インフラが整備されていることから、今回のような大雪による災害時でなければ、ある程度バッテリー残量に注意してさえおけば、電欠することはほとんどないでしょう。

 また、メーカーや保険、JAFなどのロードサービスに加入していれば、年に1回から数回までは無料でレッカーサービスを利用することもできるため、電欠による被害は最小限にすることも可能です。

 ただし、今回の関越自動車道のケースでは、レッカー車やバッテリー搭載車が通れるスペースもなかったことから、現在のEVの機能ではどうすることもできないのが実際のところです。

 現時点で、今回の関越自動車道で立ち往生したクルマのなかに、EVがいたかどうかは定かではありません。

 しかし、「脱ガソリン車」化が進めば進むほど、街を走るEVの台数は増えていくことが予想されます。

 一方、そうした時代でも大雪による災害はなくなることはありません。今後EVが進化していく過程で、寒冷地や大雪の際のパフォーマンス向上が重要課題となることは間違いありません。

※ ※ ※

 もちろん、今回の件を受けて「EVはガソリン車に劣っている」と考えるべきではありません。

 ガソリン車にはガソリン車のメリットが有るように、EVにはEVのメリットがあります。

 それぞれのメリットとデメリットを理解し、共存共栄の道を模索することが、本当の「脱ガソリン車」化といえるでしょう。

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コメント

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27件のコメント

  1. いや、どう考えても劣っているでしょう。しかもその劣っている部分は生死に関わる大事なところなんだから、完全にガソリンに置き換わるようでなくてはEVなんて問題外です。

  2. 福島沖海上風力発電は600億の巨費を投じて復興のランドマークとなってきた。しかし採算割れで50億の巨費を投じて撤去が決まった。太陽光発電は従来型に比べ5倍のコストが掛かり電力会社の買取価格の逆ザヤは税金で穴埋めしている。EVは原発再稼働とセットでなければ先へ進めないし不足する送電量を賄うために見苦しい送電線も増やさなければならない。
    ガソリン車が無くなれば電力会社は料金上げ放題、フクシマの一件を見れば彼らが消費者の為に仕事をしていないのは明らか、未だに事故の原因究明すら満足に出来ていない。
    EVに否定的なマツダが最も先が読めているのかも知れない。

    • そうですね、
      風力も太陽光も製造~設置~運営維持のコストとそこで消費する電力に対し
      発電供給量と採算性が悪く下手をすれば確かに逆ザヤになりかねないよね。
      だから経済的にはこれらの発電事業が活発にならないのも道理だし
      費用だけでなくCO2削減の本来の目的に立ち返れば
      太陽光発電などの為に森林伐採し切り開くよりも
      むしろその緑を育ててCO2吸収させた方が自然には良いのでは?
      とすら思えてなりません。
      このままの方策では環境も社会もズルズルと悪化す一方でしょうね、
      発想の転換が必要ではないでしょうか?

  3. 内燃機関の方がこういう時便利ではあるが排気口塞がると一酸化炭素中毒の危険があるのでご注意
    EVもFCVも氷温下では能力低下や最悪作動不能になる弱点があり
    且つ充電、水素充填も救助に適した携行出来る補給設備が無いのは死活問題だね、
    そこのところ脱ガソリン化推進を推し進めてる北欧の国ではどう対策するつもりでいるんでしょうか?
    あまり聞き及びませんがこういう問題が顕在化すると気になりますね。

  4. FCVの水素は運べるけど、EVの電気は運べない。
    充てん時間も大きく違う。

    • 水素は運べても自動車に入れる状態にして運ぶ事は可能なのでしょうか?
      そこが重要です。

      EVは移動充電器はありますよ。

    • 水素は運べても自動車に直ぐに入れる状態にして運ぶ事は出来ますか?
      そこが重要です

      EVは移動充電器ありますよ。

    • 調べたらありました。

      スミマセ

  5. 今日本政府がすべき事は、欧州や中国のEV一辺倒に追従する事ではなく、e-fuelのような大気中の炭素を利用した燃料や、ブルーアンモニアのような生産時に炭素を固定できる燃料の普及に尽力する事です。燃料電池車の補助金を大幅に増やしたのは、EV以外の道を模索する豊田章男社長の働きかけが大きいでしょう。遠いミライを見据えた企業かどうか、見極めながら消費したいものです。

  6. 何ですかこれ?90%の真実に10%の嘘。目的はEVネガの拡散?
    EVを所有した事がない人が妄想で記事書いては困りますね。
    EVオーナー歴が長ければわかる事ですが、EVは停車中(ガソリン車のアイドリング中)の電力消費は少ない。
    今回のように長時間立ち往生の場合は暖房の温度を最低の18℃にそしてEVなら付いてるシートヒーターで暖を取る。バッテリー残量は20%を残す(60kmは走れる)これでもバッテリー残量が立ち往生前80%以上なら13時間前後持ちますね。 最悪今回の様に2日以上になりそうな場合は、エアコンオフでシートヒーターを高温にして暖を取れば凍死することはない。しかもたかだか30wくらいなので2日どころか1ヶ月余裕。車内にブランケット又は電気ブランケット備え付ければ最強です。
    対してガソリン車はエンジンの排熱で暖房だから無駄は無いでしょうが立ち往生では暖房の為にエンジンを回さないといけない。ガソリン何時間持つ?いくら燃費良くても30Lか40L有っても24時間前後じゃないでしょうか?
    エンジン掛けなければ車内の電源はアクセサリーでは1時間程でバッテリー上がり。 その上一酸化炭素中毒が怖くてまともに寝られないでしょう。
    EVを所有しいた事のない方は知らない世界でしょうけど意外にEVはタフですよ。

    • 私も同様のコメントをしました。
      記事に「さらに、暖房の仕組みの違いも影響します。前述の通り、ガソリン車はエンジンの排熱を二次利用できるため効率的ですが、EVの場合は別途暖房システムを用意する必要があります。」
      とあり、排熱を二次利用出来るために効率的? これは普通に走行している時の話で、ここを比較すれば確かにEVは別に電気ヒーターを使うので効率は落ちます。
      しかし、ここでは雪に閉じ込められた場合の想定で、全く状況が違い理解されていないと思います。
      ここには排熱とあり、まさに捨てる為の熱を作る為に、燃料でエンジンを廻して排熱を作りそれで暖房を取る事がどうして効率的ですかね? 燃料に火を付けて燃やした方が効率が良いのでは?
      私も2台EVを乗り継いでおり、世間で言われる様な欠点も多々ある事は事実ですか、EVの様な特殊な部類に入ると思われる車は、「惚れて仕舞えばあばたもえくぼ」的な考えで無いと乗れないかも知れません。
      単純にエコだとか電気代が安いとかでは長くは乗れず、結局は不満を抱えて批判する側に回る事になる気がします。
      記事を書くときに偏見やバイアスが有ってはダメで、同時によく調べて理論的に納得出来る様に書いて欲しいものですね。

    • 80%以上なら13時間ですか確実に死ねますね。最初の段階で2日以上になりそうだと予想がつくのですか?それはEVがすごいのではなくて…

    • ガソリン車1.8Lの場合エアコンOFFで5日間近くは持ちます。
      24時間とはどの計算で算出したんですか?ちゃんと調べてないのはあなたも同じかもね。
      そうとう前の燃費基準から算出された1時間あたりのアイドリングガソリン消費量です。
      http://www.env.go.jp/earth/cop3/dekiru/ta_03-2.html

      ちなみにEVの放電やら災害時の気温は考慮されていますか?
      ものにもよりますがテスラのモデルSは3日間で勝手に10%も放電したとユーチューバーの報告があります。
      ガソリンタンクと違ってバッテリは確実に放電するし超低温時にどのような影響が出るのかも分かりませんよね。
      一般的には低温だと走行距離は減ります、走行距離が減ると言う事はエアコンの動作時間も減ります。
      あなたが実際に寒冷地でEVのエアコン実験しないと実際の所は分からないと思いますよ。

      ただし電気毛布の活用はかなりいいですね。
      どでかいモバイルバッテリのカイロみたいなね。

  7. この筆者が取材した日産販売店スタッフはバカです、最低限の知識を備えていません
    このようなスタッフがいるから、リーフの販売台数が伸びないのです

    ※普通充電にかかる時間
    40kwh車で13時間強
    62kwh車で21時間弱
    ※急速充電30分で80%ほど充電出来るのは、
    旧型の30kwh車までで、現行車では難しいです

  8. 雪国育ちなら、ヒートポンプのエアコンだけで暖をとるのが難しいのも、PTCヒーターのエアコンが電力バカ食いなのも、エアコンなしのシートヒーターだけで夜を越すなんて冗談なのも、ガソリン車のアイドリングがそんなに燃費悪い訳ないのも、みんな分かってるんですよね。

    EVは良いものだけどまだイケてないところがあるから改善が必要だねって記事にまで噛みつこうとする信者には困ったものです。

  9. 脱ガソリン、電動化と言っても、電動車にハイブリッドが含まれるんだから、何をあれやこや騒いでるのかわからないなぁ。

    今回の電動化ってEV化じゃないのに。

  10. 急速充電の為にあちこちに200v電源を張り巡らせてくれないと困るのと
    幹線道路以外にも全道路脇に電源とケーブルの用意をガードレールに沿って国はやってくれないと困ります。

  11. 暖房のためのエネルギーはガソリンや電池からで、同じくらい確実に消費します。
    アイドリングは1L/時くらいで、走行時の15%前後のエネルギー消費です。ガソリンが30L残っていると30時間。
    EVはヒートポンプ冷暖房ですので外気温との差で消費エネルギーが決まり、冷房時は10~15度差で走行エネルギーの10%とかが使われます。暖房時は15~30度差となるので2倍近く消費しますので走行エネルギーの20%くらいでしょう。(シートヒータなどだともっと直接なので効率はあがります)
    走行で電気を使い切るのにかかる時間の5倍以上は持つということです。400km走れるEVなら60km/hで6~7時間走行可能として30~35時間くらいは持つ計算になります。 
    電池の低温での出力低下は、この程度の低負荷では気にならないですし、通電していれば自己発熱もすこしあるので電池温度はめちゃくちゃに下がらないです。

    EVとガソリン車、あまり変わらない値です。ガソリン車は走行に使えなくて捨てていた熱の一部を拾って暖房しているので、見えていないだけです。

  12. この辺のガソリン車の優位はおかしいので突っ込ませて下さい。

    > 暖房をONにしても燃費にはほとんど影響がない
    停止してアイドリング中なら燃費は最悪の0。暖房のためだけに効率を無視してアイドルさせているだけです。

    > 近年のクルマは車内の断熱性も高いため
    これはガソリン車の特性ではないです。

    > 近年は燃費性能も向上しているため、ある程度のガソリンがあれば、かなりの時間アイドリングをすることが可能
    直接比較がないです。

    > このように、2000台以上におよぶ立ち往生が発生したなかで、ガス欠や故障でエンジンが止まってしまい生死に関わるような事態となる人が皆無だった背景には、成熟したガソリン車の技術があったことは間違いありません。
    皆無なことを確認したのでしょうか? 1名は救急搬送されていますが。燃料節約のためにエンジンを止めていた車両があると報道されていますし、足りなくなったからこそ燃料を補給していたわけです。過去には一酸化炭素中毒での死亡事例があります。

  13. このライターの話の展開がよくわからない。
    1.寒冷地ではEVは、ガソリン車より劣っている。
    2.しかし、EVにはいろいろなサポートがあり、何となる。と言いたいのか?
    しかし、今回の問題は、JAFとか日産のサポートができない状況だから問題じゃないの?
    普段の話をしているのではありませんがねぇ~。

  14. ガソリン車とEV車の優劣は別として、記事での見解に相違があると思います。
    ガソリン車は余熱を利用して暖房を行うために、ヒーターを使っても燃費には影響が無いです。
    と言う事は走る為のエンジンをアイドリングさせ、それで余熱を発生させ暖房を取っている訳です。
    この方法は非常にエネルギー効率が悪いです。
    一方、EVは電池の電力でモーターを回して走行し、記事の通り暖房は電気ヒーターにより行います。
    従って、冬場は走行+ヒーターで電力を使う為電費は悪くなります。
    雪に閉じ込められてヒーターを使う場合、電力はヒーターだけに供給されます。
    つまり、エネルギー効率は良い訳です。
    新型リーフの62kwhバッテリー満充電で計算すると、250Wのヒーターを連続して使った場合62/0.25=248h、
    500Wでも124h使える計算で、排ガスが出ないので酸欠の心配は無いです。
    無論、低温下では電池の性能が落ち、空になった場合の充電は燃料を補充する様な訳には行きません。
    どちらも一長一短がありそれを理解して乗る事が大切と思います。

  15. あー言えばこー言うw
    せっかくの記事も綻びをひっかかれるばかりだなw

  16. EVオーナー歴10年です。ハッキリ言ってこの記事書いた方は勉強不足もいいところです。
    結論は化石燃料車もEVもどっちもどっちです。ただし残量次第ではEVの方が圧倒的に優位で一酸化炭素も出さないので安全。初代リーフやI-Mievは別として今のEVは満充電の場合冷暖房だけなら間違いなく2昼夜~3昼夜平気です。走らずに装備品だけだとかなりもちます

    • みんながみんな満充電状態で立ち往生の場所に着いたとは考えにくいし、2100台のうち1000台がEVかもしれないと考えたら安心感よりも不安感が勝ります。そもそも解消まで何日かかるか止まった時点ではわからないので、EVは不安でしかない。ちなみに燃料と食料に関してはスノーモービルで配られました。

  17. 日本は大雪で動けないニュースを見るが完全に電気自動車になれば凍死の危険もでるかもね
    欧州の流れにしたがうだけの日本政府はもっと考えるべきだ

  18. 雪国の道に充電コンセントを張り巡らすことくらいしか対策浮かばない。

  19. 物事を東京中心や雪の降らない地域中心に考えないことです。豪雪地帯に限らず、雪が少なくても氷点下の地域はあります。少なくとも軽自動車規格だけはガソリンエンジンやハイブリッド車を残し、普通車以上はEV化を進めるなど選択肢だけは残すべきです。
    豪雪地帯では除雪が追いつかず道路も狭くなりすれ違いが困難なほどの狭さの道路は市の中心部でも発生します。前方で事故や立ち往生が発生すればやむなく引き返すことさえ強いられるため、Uターンが容易な軽自動車。特に軽四駆はベストです。というより利便性や生存率を考えればガソリン車の軽四駆以外に選択肢が無いんですよね。

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