レストアベースでも約5500万円で落札! ボンドカーは「DB4」「DB5」どちらが正解?
世界でもっとも有名なクルマの1台、アストンマーティン「DB5」は、ボンドカーとしてその名を知られている。しかし、映画『007 ゴールドフィンガー』では、代役として「DB4」が使われており、両車の違いが分からない人も多いだろう。そこで、DB4とDB5の違いについて、最新オークション結果をもとに調べてみよう。
不動の人気「DB5」は高値安定
2020年10月26日から31日まで、RMサザビーズ英国本社が再びオンライン限定でおこなった「LONDON」オークションにおいて、一見そっくりな2台のアストンマーティンが出品されていた。
映画007シリーズで「ボンドカー」としても活躍し、誰もが知るアストンの歴史的名作「DB5サルーン」と、その先代にあたる「DB4ヴァンテージ・サルーン」である。
今から四半世紀前に東京都内に存在した、アストンマーティンを得意とするクラシックカー専門店で勤務し、DB4/DB5ともにミントコンディション(新車同様)からレストアベース車まで、数多くの個体に接する機会を得た筆者が、2台のアストンの違いを説明するとともに、「LONDON」オークションのレビューをお届けしよう。
●1965 アストンマーティン「DB5」
1963年夏にデビューしたDB5は、デーヴィッド・ブラウン時代を代表する偉大な三部作、DB4‐5‐6のなかでも、総合バランスや完成度の圧倒的な高さから「最高傑作」と称され、現在のクラシックカーマーケットにおける評価ももっとも高いモデルである。
そのオリジンとなったのは、1958年に発表されたDB4。完全なハンドメイドによる美しいアルミニウム製ボディに、こちらも総アルミニウム軽合金製の3670cc直列6気筒DOHCユニットを搭載。1960年代初頭における世界最速車のひとつとなったモデルである。
そして満を持して登場したDB5は、DB4の最終型シリーズ5と比較すると、3995ccまで拡大されたエンジン。独ZF社製5速トランスミッションの採用(最初期型のみはデーヴィッド・ブラウン自社製4速が組み合わされる)。後席のヘッドルームを拡大するため若干かさ上げしたルーフラインなどが比較的目につく変更点だが、そのほかにも細かい仕様変更は多岐にわたっていた。
DB4時代には、トリプルキャブレターは高性能版「ヴァンテージ」の特権だったが、DB5からは標準モデルにも3連装SUキャブが与えられ、DB4ヴァンテージから16psアップの282psを発揮していた。
今回の「LONDON」オークションに出品されたDB5サルーン(アストンマーティンではクーペのことをサルーンと呼ぶのが伝統)は、後継車「DB6」のデビューと同じ1965年に製作された最終期の1台。
RMサザビーズ社のWEBカタログでは「Perfect opportunity for a no-expense spared restoration(大きな費用をかけずに修復できる絶好のチャンス)」と謳われているように、ボディ表面に艶はなく、レザーシートも所々に破れがある。また、ボディカラーは元色のシルバー・バーチから塗り替えられているので、ひと思いにリペイントしてしまってもよい。つまり、内外装のレストアを施すためのベース車と見るのが妥当だろう。
しかし、2010年代中盤のクラシックカー価格高騰に伴い、DB5はもっとも相場価格を上げた人気車のひとつとなり、ひと頃は日本円で1億円以上の取り引きが世界各地でおこなわれていたことも記憶に新しい。
それゆえ、この個体に設定された37万5000ー42万5000ポンド、日本円に換算すれば約5120万円ー約5800万円のエスティメートは、このコンディション相応と思われた。
そしてオークション最終日におこなわれた競売では順調に入札が進められ、終わってみれば手数料込みで40万7000ポンド、邦貨換算にして約5500万円で落札された。
蛇足ながら、筆者がスペシャルショップの現場にいた1990年代中盤の相場感であれば、600万ー700万円あたりが妥当とも見えるコンディションなのだが、やはり現代のマーケットにおけるDB5が、不動の人気モデルであることを実感させられるオークション結果であった。
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