なぜ国産スポーツカーの価格が高騰? コロナ禍で「25年ルール」物件も下降気味か

所有していれば価値が上がりそうな日本車はまだあるのか!?

 では、これから先はどんな日本車の中古車相場が高騰するのだろうか。市場規模が小さいカナダでは、15年ルールが適用されるため、2005年式以前のクルマ、ということになる。

内外装ともに美しい状態を保っている日産「フェアレディZツインターボ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
内外装ともに美しい状態を保っている日産「フェアレディZツインターボ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 しかし、ここで問題がひとつ。日本では平成12年、つまり2000年に排ガス規制が強化されたことで、それまで販売されていた多くのスポーツカーが、2002年には生産中止となっている。

 たとえばマツダFD3S型「RX-7」がそうだ。燃焼室が移動するため効率的な燃焼状態が得られにくく、潤滑のためのオイルが混合気とともに燃えやすいというロータリーエンジンの特性から、厳しくなった規制に対応できなくなったため、販売中止となってしまった。

 それまで販売されていたスカイラインGT−Rやシルビア、スープラも同じく、2002年に一旦は生産中止となっている。

 ということは、その後の日本車で、チューニングやカスタマイズ心をくすぐられるクルマが、今後の値上がりが期待できるということとなる。ではどんなクルマがそこにあるのかというと、これがまた難しい。

 日産では、R34型スカイラインGT−RとS15型シルビアの生産中止以降、登場したスポーツカーはZ33/Z34型「フェアレディZ」だが、これはアメリカでも販売されている。

 マツダはSE3P型「RX-8」を発売したが、これも正規に輸出されていたクルマだ。「ロードスター」は世界に誇れるスポーツカーだが、これもアメリカで販売されている。

 トヨタはA80スープラ以降で考えると、ZN6型「86」とか、「マークX GRMN」、「ヴィッツGRMN」ということになりそうだが、限定車のマークXやヴィッツGRMNはもともと高値であり、86もついこの間まで北米でも販売していた。レア車でいえば、NCP13/91型「ヴィッツTRDタイプM」というターボモデルもあるが、アメリカ人好みとはいえないだろう。

 ホンダはタイプRシリーズを開発し続けているが、どれも正規で買えるものだし、現行「NSX」はアメリカホンダが開発の主体となっているクルマだ。

 ほかにもスズキ「スイフトスポーツ」、ダイハツ「コペン」、ホンダ「S660」など、日本でしか販売されていないクルマもあるが、現在の北米における日本製スポーツカーのようなプライスまでは上がらないだろう。もちろん、軽トラのように、ひと桁万円だったものがふた桁万円になる、というくらいの値段上昇はあるかもしれないが。

 つまり、北米大陸での15/25年ルールのおかげで現在高値となっているクルマは、この先も値上がりを続けるだろうし、その後に登場したクルマで北米大陸で人気が出そうなものは、おそらく「持っておけばいまごろ大金持ちだった」とはなりにくいと思われる。

 そういう夢を見たいなら、内燃機関を動力とするクルマがレアとなるであろう数十年先まで大事に保管しておき(もしくは放置?)、その時代がきたところで、マニア向けに販売するというのもある。現在のオークションでたまに見かける「納屋物件」というものだ。

 しかし、それはあまりにも現実的ではないだろう。クルマ好きならばクルマでひと儲けしようなどとは考えず、乗って愉しむというのがベターなのではないだろうか。クルマは、飾って愉しむものではなく、走って愉しむものなのだから。

●VAGUE編集部の予想

 参考として、最近北米で開催されたRMサザビース主催のオンラインオークションでは、日本から北米に流れた1990年の日産「フェアレディZツインターボ」が、エスティメートの3万ドルー4万ドル(邦貨換算約310万円ー415万円)を大きく下回る2万350ドル(邦貨換算約210万円)で落札された。

 同じオーディションでは、1995年のマツダ「アンフィニRX-7 タイプR バサースト」も出品されたが、こちらは4万5000ドルー5万5000ドル(邦貨換算約467万円ー570万円)のエスティメートであったが流札となり、現在も4万5000ドル(邦貨換算約467万円)で継続販売中だ。

 また、北米ではなく英国で開催されたRMサザビース主催のオンラインオークションでは、2005年のホンダ「NSX」が10万5000ポンド(邦貨換算約1470万円)のエスティメートで出品されていたが、こちらも流札し、現在10万ー12万5000ポンド(邦貨換算約1400万円ー17650万円)で継続販売中である。

 対面型ではなくオンラインのために盛り上がりにかけてしまうこともあるかもしれないが、コロナ禍のオークションでは、日本車熱はしばし冷めてしまっていると見た方がいいかもしれないが、数年先のアフターコロナ時代には再び脚光を集めることは間違いないだろう。

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