「ホンダe」と「リーフ」は一長一短!? ホンダと日産のEVの意外な違いとは
ホンダeは航続距離が短いが、電費はリーフに勝る!?
モーターの出力については、リーフ(40kWh)が110kW/320Nm、ホンダeが100kW/315Nmと出力的には大差ありません。車両重量もリーフは1520kg、ホンダeは1510kgと、スペック的にはほぼ同一といえます。
しかし実際に運転してみると、ホンダeのほうが軽快な印象を持ちました。リア駆動という点もそうですが、常用域でのレスポンスはリーフを上回っている感覚です。
その理由は最終減速比にありました。
リーフは8.193なのに対し、ホンダeは9.545とローギヤードだったのです。タイヤの外径は両車ほぼ同一ですから、ギア比が低い分、俊敏な印象を持ったというワケです。
ただし、ローギヤードにすれば当然同じ速度でもモーターの回転数は高くなるので、電費性能に差が出ることになりますが、電費性能でもホンダeのほうが伸びるという結果になったのです。
カタログ上の航続距離(WLTCモード)は、リーフ(40kWh)が322km、ホンダeが283kmとなっています。
リーフの場合、普段使いで8km/kWhくらい走れば良い印象ですが、ホンダeは極端なエコ走行をせずとも9km/kWh台をマークできました。
実電費で1km/kWh違うとなると、バッテリー容量の差を考慮しても航続距離は同等となるわけで、この点はもっとも予想外でした。
電気自動車はモーターの強力な回生ブレーキを利用して、アクセルオフで大きく減速することができるシステムを持っており、リーフでは「e-Pedal」、ホンダeでは「シングルペダルコントロール」と呼んでいます。
同じようなシステムを持つ両車ですが、リーフでは一気にアクセルを閉じるとかなりの減速力が立ち上がりますが、ホンダeではそこまでではなく穏やかな印象です。
また、ホンダeはステアリングに備わるパドルを操作することで、シングルペダルコントロールの減速力の強さを変更できるほか、オフにした状態でもパドル操作で減速力を調整できる(シフトダウンでのエンジンブレーキの要領で)ため、アクセルペダルのみでのコントロールが苦手なユーザーでも速度の調整がしやすくなっているのは美点といえるかもしれません。
電気自動車を走らせるのに欠かせない電気ですが、首都圏のディーラーであれば、ほぼ100%に近い確率で急速充電スタンドが設置されている日産に対し、ホンダのディーラーにはほとんど急速充電スタンドは設置されていません。
ただし、この事実だけを切り取ってホンダが電気自動車に力を入れていないと考えるのは尚早といえるでしょう。
なぜなら、ホンダの充電カードサービスである「Honda Charging Service」は、手数料や月の会費はゼロであり、その代わり急速充電は16円/分、普通充電は1.5円/分という従量課金制。
つまり、他メーカーのディーラーでもサービスエリアでも公共施設でも一律の金額となっているのです。
これは、ホンダeはあくまで自宅充電を基本とし、それで走れる距離の範囲で使用するシティーコミューターであるということが関係していると思われますが、出先での充電は緊急回避的なものという位置付けなのでしょう。
一方のリーフは、過去に展開していた「旅ホーダイ」からも分かるように、62kWhのバッテリーを搭載した「e+」の航続距離458km(WLTCモード)を誇り、電気自動車でも遠出を諦めなくてもいいというキャラクターとなっています。
この辺りはどちらが正しいというワケではなく、ユーザーに選択権があるということでしょう。
個人的には、シティーコミューターとしてコンパクトなボディと後輪駆動の走りの楽しさを持ち合わせたホンダeに惹かれる点も多くありました。
しかし、残念ながら自宅で充電できる環境がないということと、そして何より、332万6400円からのリーフ(40kwh)、441万1000円からのリーフe+(62kwh)に対し、ホンダeはそれを上回る451万円から495万円という車両価格が高いハードルだと感じました。
とはいえ、リーフもデビュー当時は24kWhのバッテリーでも400万円近い価格だったわけですが、ホンダeも時代が進むにつれて買いやすい価格になっていくことを期待したいところです。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。
日産はすでに旅ホーダイはやめ、従量課金に移行しています。それに触れないのは何か意図でもあるのでしょうか。
ホンダeは「ミスターインクレディブル」に見えて仕方ないのだが…