あの「クラウン」が生産終了!? セダン離れのなか それでも超高級車のセダンが登場する理由

高級ブランドのフラッグシップがセダンを続ける理由

 ちなみに、近年になってモータリゼーションがスタートした中国でも、状況は日本と似たようなものだという。中国人が最初に購入するのがセダンであり、その後に2台目のクルマとして注目を集めているのがSUVであるというのだ。

 日本の場合、人口というクルマを購入する受け皿のサイズが年々減少している。いわゆる少子高齢化の結果だ。

 人口というパイが小さくなるなかで、ボディタイプが増えてゆけば、当然のこと、もとからあるセダンの台数は減っていくのが当然かもしれない。日本におけるセダン販売の低調さは、そうした全体の流れが背景にあるといっていいだろう。

2020年11月19日にドイツで発表された新型「メルセデス-マイバッハSクラス」
2020年11月19日にドイツで発表された新型「メルセデス-マイバッハSクラス」

 では、このままセダンが消えてなくなってしまうのか? というと、高級ブランドによるセダン踏襲のスタンスを見る限り、それはないといえるのではなだろうか。数は減るかもしれないが、消えてなくなることはないということだ。

 では、高級ブランドがなぜセダンを守り続けているのだろうか。

 その理由は、セダンというボディタイプの特性にあるといえるだろう。セダンの特徴といえば、荷室(トランク)が居住空間(キャビン)と別になっていることだ。これが何を意味するのかといえば、乗員と荷物は同じ空間にないということ。これは重要なポイントだ。

 そして、荷物とは、もともときれいな物であるとは限らない。汚れていたり、埃っぽかったり、下手をすると臭いこともある。それが乗員と同じ空間にあるのは嫌だと思うもの。

 そうした考えは、クルマが高級になればなるほど、フォーマルな使い方をするほどに強くなっていくのは当然のことだろう。

2020年11月19日に発表・発売されたレクサス新型「LS」(LS500h)
2020年11月19日に発表・発売されたレクサス新型「LS」(LS500h)

 また走行性能を考えたときに、セダンは背の高いミニバンやSUVよりも上になる。クーペやカブリオレと比べると、セダンは走行性能に不利かもしれないが、そちらに対しては、セダンは快適性が上となる。つまりセダンは、走行性能と快適性のバランスが良いのだ。

 フォーマルさや走行性能と快適性などを鑑みたとき、もっともバランスよく実現できるボディタイプがセダンなのである。だからこそ、セダンの販売が低調とはいえ、高級ブランドほどセダンから離れることが難しいのだろう。

 軽自動車やコンパクトカー、SUV、ミニバンのシェアが高まる日本においては、セダンという存在は、もはやそういった高級車にしか残らない可能性はある。

 そして高級車は、数多く売れるものではない。高級車と数多く売りたいという思惑のはざまで、いま苦悩しているというのがクラウンなのではないだろうか。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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