若者の愛車は「3ドア」が定番! かつて人気のハッチバック5選
安くてシンプルでも十分だった3ドアハッチバック
●マツダ「ファミリア」
1970年代から2000年代の若者にとって、クルマを所有することはステータスでした。お金はないが夢はある若者にとって、1980年代から1990年代前半で憧れたクルマの1台がVW「ゴルフII」です。
しかし当時の輸入車は高値の花。そんななかでサイズ感や雰囲気などが似ていることから、国産車として人気だったのがマツダ「ファミリア」(5代目)でした。
マツダ初の小型乗用車として1963年に誕生したファミリアですが、デザインはイタリアの名門であるベルトーネに任され、2ドア/4ドアセダンをメインに、3ドアライトバンとステーションワゴン、2ドアピックアップトラックというラインナップで、エンジンは0.8リッターと1リッターを搭載。
1967年に初のフルモデルチェンジで2代目へと移行しましたが、4ドアセダン/2ドアクーペがメインで、2ドアピックアップトラックもまだありました。
1973年には3代目へとフルモデルチェンジ。パワーはダウンしたものの排出ガス規制をクリアした1.3リッターエンジンを搭載していました。
1977年には、欧州での小型車を参考にした2BOXスタイルのハッチバックを採用した4代目へとモデルチェンジ。当時はまだFFの技術は難しく、オーソドックスなFRを採用していました。
そして1980年、オイルショックから立ち直った日本の市場に、輸入車や海外の遊びが続々と上陸します。また、生活も豊かになり、ドライブデートを楽しむ若者が増加していました。
そんななか、3ドア/5ドアハッチバックを中心としたラインナップの5代目へと進化したファミリアは、欧州小型車と同じFF方式&2BOXスタイルで、大ヒットモデルとなります。
ボディサイズは全長3995mm×全幅1630mm×全高1375mmで、1.3リッター/1.5リッターターボエンジンを搭載していました。
なかでも3ドアのハッチバックにキャリアを装着し、サーフボードを載せるのが大流行。実際はサーフィンをしない人が多かったため「陸(おか)サーファー」なる流行語も生み出すほど人気で、第1回「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。
1985年には、キープコンセプトで6代目へと移行しますが、バブル期前夜の好景気の波に乗り、3ドア/5ドアハッチバックだけでなく4ドアセダンに加えカブリオレまでバリエーションを拡張。
1.6リッターターボエンジンや国産乗用車初となるフルタイム4WDなど先進技術を搭載するなど、バリエーションも充実していました。
その後1989年には7代目へ、1994年には8代目へと進化を続けますが、1998年の9代目でファミリアシリーズは4ドアセダンと5ドアステーションワゴンのみとなり、ハッチバックが終了。その役目を「アクセラ」へ譲りました。
●スズキ「アルト」
現在の軽自動車の礎を作り、スズキの主力車種として長い歴史を誇るのが「アルト」です。
このアルトの長い歴史は1979年にスタート。それまでスズキの軽乗用車の主力モデル「フロンテ」の後継車として登場しました。
当時の軽自動車には15%超の物品税が課されていましたが、「軽ボンネットバン(商用車)」が非課税になることに着目したスズキは、アルトを商用車として登録することを前提に開発します。
徹底したコストダウンと既存パーツの流用で、当時としても驚きの47万円(軽のライバル車の平均が60万円前後)の新車価格を実現したことでも話題になり、実際は乗用として大ヒットしました。
初代の大ヒットを受けて、1984年に2代目にモデルチェンジ。軽自動車で画期的な4WDモデルも追加されるなど、幅広い層でさらに支持を集めました。
またこのモデルをベースに、3気筒DOHCターボという、このクラスとしては最強のエンジンを搭載した独立車種として「アルトワークス」が1987年に誕生。
あまりのハイパワーぶりに、軽自動車の自主規制枠(64馬力)が誕生するきっかけになったといわれています。
1988年になると、当時の軽自動車としては最長のホイールベースとした、3代目へとフルモデルチェンジ。
3ドア/5ドアハッチバックのみならず、両側をスライドドア化した「スライドスリム」というモデルや、荷台を全高1600mmまで拡大した「ハッスル」を乗用/商用として設定しました。
その後、1994年に4代目、1998年に5代目、2004年に6代目、2009年に7代目と時代とともに進化を続け、2014年に現行型となる8代目へモデルチェンジしています。
また、アルトワークスは1999年の5代目ベースモデルを最後に生産が中止されていましたが、この8代目をベースに15年ぶりに復活しました。
現在では5ドアハッチバックがメインのアルトですが、3代目までは3ドアがメインであり、いい意味でシンプルな作りがいかにも軽自動車でありました。
お金はないけどクルマに乗りたい若者にとっては、軽くて小さくて安いアルトは普段使いできる相棒だったのです。
※ ※ ※
多人数乗車は念頭になく、あくまでパーソナルな乗り物として人気だった3ドアハッチバックは、その構造ゆえに使い勝手が良いとはいえませんでした。
しかしその反面コスト的には有利で、当時のクルマ好きの若者にとって実際に手が届く価格のリアルな愛車として、3ドアハッチバックは人気を博したのです。
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