なぜ疑似音が発生? ハイブリッド車の接近音が全面義務化で歩行者の反応は?
世界初の量産ハイブリッド車としてトヨタ「プリウス」が登場してから、20年以上経っています。最近では、多くの国産車にガソリン車とハイブリッド車が設定されており、そのため耳にする機会が増えた接近音ですが、なぜ擬似的に音を発生させているのでしょうか。
継続生産車も2020年10月より搭載義務化、気にするユーザーも多い?
最近では、多くの国産車にガソリン車とハイブリッド車が設定されており、そのため耳にする機会が増えた接近音ですが、なぜ擬似的に音を発生させているのでしょうか。

ハイブリッド車は走行時に音がしにくいため、歩行者などが接近に気が付きにくく危険との声も上がっています。
こうした声に対応するため国土交通省は、車両接近音を発することを義務化しており、継続生産車についても2020年10月より搭載が義務化されました。
ハイブリッド車や電気自動車が接近する際、「ウィーン」とモーター音のような電子的な音が聞こえます。
この音は実際のモーターが作動している音ではなく、車体に取り付けられてスピーカーから発せられる疑似音なのです。
この電子音(接近音)が採用されているのは、ハイブリッド車のモーター走行時は、エンジン音がほとんどしないため車両の接近に気が付きにくく、事故やトラブルにつながる恐れがあるほか、歩行者などから「身の危険を感じた」という声も多かったためです。
視覚障害者団体や一般ユーザーからの要望で、2010年頃から接近音の採用が検討されました。
そして、2016年に「車両接近通報装置」について国土交通省によりガイドラインが定められ、新型車の場合は2018年3月8日から、継続生産車の場合は2020年10月8日から、接近音の搭載が義務化されています。
これに伴い、接近音を切ることができる一時停止機能などのキャンセラー機能も、搭載不可となっています。
義務化以降に生産されたクルマについては、何らかのカスタムで接近音を無くすことや、キャンセラーを装着してしまうと、車検に通らないため注意が必要です。
なお、国土交通省によれば、義務化以前に生産されたクルマであれば、キャンセラーが装着されていても問題はないとしています。
適用範囲となるのは「燃料電池自動車を含む、EV走行が可能なハイブリッド車及び電気自動車」で、これは、エンジンが回転停止状態でも、モーターのみで走行可能なクルマを指します。なお、EV走行とエンジン走行が切り替え可能なクルマも対象です。
その理由は、モーターのみで走行ができないハイブリッド車は、発進時にエンジンの出力を必要とするため、一般的なエンジン車と同等の気付きやすさが確認されていることから、対策は不要と判断されました。
また、接近音が鳴る条件も明確に決められています。国土交通省では「車両の発進から車速が20km/hに至るまでの速度域及び後退時において、自動で発音するものとする」としています。
これは、EV走行では発進時がもっとも危険と考えられているためです。走行時はタイヤのロードノイズやモーター音が発生しますが、発進時はほぼ無音に近く、視界で捉えない限り認識は難しいとされています。
ちなみに、一般的なエンジン音との差は、発進から時速20km/h程度の速度までで最大で20dBで、この音量とは、「5m先のささやき声が聞こえる」程度といわれています。
では、ハイブリッド車の接近音について、ユーザーからはどんな反応があるのでしょうか。首都圏の日産の販売店スタッフは以下のように話します。
「ハイブリッド車の接近音について気にされる人は意外と多く程度いらっしゃいます。
自分がぶつかられそうになっただけでなく、運転中に気づかれずにぶつけそうになった、という方も多いです。
とくに、都心部で人通りの多いところにお住まいの人は、『ちゃんと音が鳴るのか』『どれぐらいの音量か』などを気にされるようです」
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また、同じく都心部の中古車販売店スタッフは以下のように話します。
「少し前のクルマだと、接近音のキャンセラーが装備されている車種があります。
義務化以前のクルマは、一応は車検には通りますが、一部のお客さまからは外して欲しいとの要望も受けます。
以前、実際に『運転者が高齢のため、間違って押してしまう危険がある』と、ご家族の人が希望するケースがありました」
ひと昔前と比べてハイブリッド車の普及が進んだ現在も、接近に気が付かず、また気が付かれずにヒヤッとしたユーザーは多いようです。


















