パドルシフトは2種類存在! ハンドルと一緒に回るのと回らないものがある理由とは

日産「GT-R」は2017年モデルからステアリング側に変更された

 まず、ステアリング側に装着されているパドルシフトのメリットとデメリットは何か。

ランボルギーニ「ウラカンevo」
ランボルギーニ「ウラカンevo」

 メリットは、パドル自体を小さくできることだ。小ぶりなものでも操作性が悪くならない。また、半回転以下のステアリング操作、つまりステアリングを持ち替える必要のないくらいのコーナーならば、コーナリング中にそのまま変速操作ができる。これはサーキット走行などでは有効だ。

 では、デメリットはなにかといえば、半回転以上のステアリング操作をおこなってステアリングを持ち替えると、パドルの左右が分からなくなる。つまり、パドルでのシフト操作ができなくなるという問題がある。ジムカーナなど、大きくステアリングを切り、頻繁に持ち替えなければならない場合には、シフト操作は難しい。

ランボルギーニ「ウラカンevo」のパドルシフトはコラムに付き、ステアリングと一緒に回らない固定式タイプ
ランボルギーニ「ウラカンevo」のパドルシフトはコラムに付き、ステアリングと一緒に回らない固定式タイプ

 一方、コラム側にパドルが装着されていれば、どれだけステアリングをグルグル回してもパドルの位置は動かないので、わかりやすくパドルシフトが可能となる。

 ただしコラムからスイッチを伸ばすため、パドルのサイズはハンドル装着の場合よりも大振りになる。これはデメリットだ。

 さらに、左コーナーのときは右手がステアリングの頂点以上に切り込むと(右コーナーのときは左手が頂点以上)、どんなにパドルシフトが大きくても変速操作はできない。つまり右手は常にステアリングの右半分の180度の範囲内、左手は左半分のなかにあることが前提となる。

 逆にいえば、いわゆる「送りハンドル」と呼ばれる操作方法ならば、いかなる場合でも変速ができるということだ。このステアリング操作の場合、常に右手はステアリングの右半分、左手は左半分の位置にあるため、パドルの位置が動かないコラム側のパドルだと変速が可能なのだ。

 面白いのは、オープンホイールのフォーミュラのレーシングカーのほとんどが、ステアリング側のパドルシフトを採用しているのに対し、WRCなどのラリーカーはコラム側を採用することだ。

 フォーミュラの場合、ステアリング操作の角度は小さいというのも、ステアリング側にパドルシフトを装着する理由となるだろう。またドライバーが乗り降りするのにステアリングを外して、移動空間を作る必要がある。そのときにパドルシフトが残っては邪魔になるというのも理由だろう。

 逆にWRCなどのラリーカーは、ステアリングを常に大きくグルグルと回している。そこでパドルシフトができないというのでは、導入する意味がない。だからこそ、使うならコラム側のパドルシフトとなるのだろう。

※ ※ ※

 では、量産車は、どうなのだろうか。

 実際に採用されている車種を見てみると、どうやら日本車やドイツ車といった日本人にとって身近なクルマは、ステアリング側に装着する例が多いようだ。ただし、三菱ランサーエボリューションXなどはコラム側についている。日産GT-Rは、登場当時コラム側に付いていたが、2017年モデルからステアリング側にパドル位置を変更している。

 また、イタリア車やフランス車は、多くがコラム側に付いているようだ。

2020年式 日産「GT-R NISMO」のパドルシフトはステアリング側に装着されるタイプ。GT-Rは、2017年式からパドルシフトがコラム側からステアリング側に変更された
2020年式 日産「GT-R NISMO」のパドルシフトはステアリング側に装着されるタイプ。GT-Rは、2017年式からパドルシフトがコラム側からステアリング側に変更された

 しかし、考えてみれば、本来、量産車はコラム側のパドルシフトのほうがメリットは多いだろう。たとえサーキットを走ろうとも、量産車であればヘアピンなどでは半回転以上のステアリング操作が必要となる。フォーミュラとは違うのだ。また、乗り降りするときにステアリングを取り外す必要もない。

 しかし、現実を見ると、量産車に採用されているのはステアリング側のパドルシフトが多数派だ。これは、モータースポーツのイメージを反映させたいというのであれば、日本やドイツではWRCよりもF1の方が認知度は高い。

 つまり、パドルシフトは“F1と同じほうが好まれる”という判断が理由なのではないだろうか。また、コスト的にはステアリング側の方が有利そうだ。また、最近のクルマは、ステアリングにオーディオやADAS系の操作系スイッチを集中させていることが多い。それに合わせて、パドルシフトも同じステアリングに配置するということもあるのだろう。

 一方、実際にモータースポーツに利用するために、どうしてもコラム側にパドルシフトがないと困るというシーンがそれほど多いわけでもない。公道のワインディングを走る程度であれば、どちらにパドルシフトが付いていても問題が発生することは現実にはないのだ。

 イメージ、操作系の統一、コスト。そういった理由や都合が重なったのが、現状のステアリング側の優勢という理由ではないだろうか。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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