なぜスポーツカーはFR多い? 「FR派」「FF派」あなたはどっち? 理想のクルマとは
FFのデメリットが解消!? 結局、どのレイアウトが優れているかは「主義」の問題?
しかし、近年では技術の革新によって、それらのデメリットも小さくなりつつあります。
とくに、クルマにおける最大の重量物であるエンジンのダウンサイジング化が進み、十分なパワーを持ちつつ軽量化を実現できるようになったことで、重量バランスも改善するようになりました。
とはいえ、大型な大排気量エンジンは構造上FFレイアウトに向かないため、必然的にコンパクトなパッケージングとなります。実際、FFレイアウトのスポーツカーはほとんどが「ホットハッチ」と呼ばれ、ハッチバックベースのものが多くなっています。
また、スポーツカーにとってFFレイアウトの弱点ともいえるハンドリングの悪さも、電子制御技術の進化によってかなり改善しました。
このように、FFレイアウトだからといって、スポーツカーには向かないということはなく、むしろ特定の条件であればFRレイアウトよりもスポーティかつ速く走れるということもあるようです。
FFとFR、あるいはそのほかのレイアウトのなかで、スポーツカーとしてもっとも優れているものはなにか、という点が気になるところかもしれません。
しかし、これは、単に機能上の優劣の話ではなく、スポーツカーの定義に関わる問題でもあります。
例えば、単純に加速の早さや最高速だけを追求するのであれば、日産「GT-R」のように大型のエンジンを搭載し、4WDレイアウトでその力を余すところなく地面に伝えるのが理想的です。
あるいは、サーキットを1秒でも速く走ること目的であれば、レーシングカーのように、エンジンを限りなく車体の中心に置いた、MRレイアウトが採用されるでしょう。
ただ、こうしたコンセプトのクルマは、いわゆるスーパーカーやスーパースポーツカーと呼ばれ、多くの人が乗れるものではありませんし、また居住性や積載性は皆無のため、日常の移動にはあまり適さないものです。
「多くの人が運転する喜びを味わえるもの」という点を重視するならば、FRかFFかは大した問題ではないということもできます。
かつては技術的な制約から、スポーツカーに限らず乗用車のほとんどがFRレイアウトでしたが、現在ではFFの技術も進み、乗用車全体で見ればむしろFFが優勢です。
前述の通り、ハンドリングのデメリットも、電子制御技術の進歩によって、ほとんど気にならないものとなっています。
つまり、どのレイアウトが優れているかは、そのユーザーの「主義」によって大きく変わってきており、FR至上主義であるのか、「羊の皮をかぶった狼」のようなホットハッチに魅力を感じるのか、とにかくスペック重視なのか、などです。
繰り返しになりますが、純粋にサーキットの早さだけを追求するならば、現時点ではMRが理想的です。
「911」でRRレイアウトを採用する数少ないブランドであるポルシェでさえ、世界最速を追求するル・マン24時間耐久レースではMRレイアウトのレーシングカーで戦っています。
しかし、911がMRレイアウトに生まれ変わることはあり得ないでしょう。RRであることは911のアイデンティティでもあるからです。
同様に、86やフェアレディZもまた、FRであることをやめたりはしないはずです。前出の多田氏のコメントにあるように、「FRであること」自体が、86を86たらしめている重要な要素なのです。
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かつては、FRもFFも、それぞれにメリットとデメリットがありましたが、技術の進歩によってその差はほとんど実感できないものとなっています。
その分、スポーツカーはどうあるべきか、という各ユーザーの主義が、スポーツカーのレイアウトに大きく影響しているといえるかもしれません。
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