なぜスポーツカーはFR多い? 「FR派」「FF派」あなたはどっち? 理想のクルマとは

クルマにはさまざまなジャンルが存在しますが、なかでも歴史や伝統を受け継いでいるのがスポーツカーです。理想のスポーツカーを語るうえで話題となるのが、FR派・FF派の「どちらがスポーツカー」に適しているか、という問題です。なぜ、これまでFRの方がスポーツカーに最適といわれていたのでしょうか。

あなたはFR派、FF派? スポーツカーではどっちがいいのか

「理想のFRを目指した」という日産の新型「フェアレディZ(プロトタイプ)」が話題となっている一方で、「FF最速」を目指すホンダ「シビックタイプR」も登場しました。
 
 長年、スポーツカーにおいて、FR派とFF派というように好みが分かれますが、どのような違いがあるのでしょうか。

理想のFRを目指す「フェアレディZ」とFF最速を目指す「シビックタイプR」
理想のFRを目指す「フェアレディZ」とFF最速を目指す「シビックタイプR」

 1980年代から1990年代にかけて全盛期を迎えたといわれる国産スポーツカーですが、近年にわかにブームが再燃しています。

 その先駆けとなったのが、2012年に発売されたトヨタ「86」です。スバル「BRZ」を兄弟車としているように、スバルとの共同開発で生まれたこのスポーツカーは、漫画「頭文字D」で話題となったAE86型の「スプリンタートレノ(通称:ハチロク)」をオマージュしています。

 86がオマージュしているのは名前だけではありません。NAエンジンを搭載したコンパクトスポーツカーであり、そしてFRレイアウトを採用している点も、かつてのハチロクと同様です。

 86のチーフエンジニアである多田哲也氏は、あるイベントで「スポーツカーはFRでなくてはダメなのです!」と発言するほど、FRであることにこだわりがあったようです。

 また、2019年に登場したトヨタ「スープラ」も、かつての歴代モデルと同様にFRレイアウトを採用しています。

 さらに、2020年9月16日にプロトタイプが発表され話題になった「フェアレディZ」も、初代から一貫してFRレイアウトです。なぜ、これほどまでにスポーツカーはFRレイアウトを採用するのでしょうか。

 そもそもFRとは、「フロントエンジン/リアドライブ」の略で、フロント部に搭載したエンジンの動力を、プロペラシャフトと呼ばれる部品を介して後輪に伝えて駆動する仕組みを指します。

「フロントエンジン/フロントドライブ」を意味するFFに比べて、部品点数が多い分コストが上がったり、車内空間が狭くなったりするというデメリットがある一方で、スポーツカーにとっては大きなメリットがあります。

 FRレイアウトによる最大のメリットは前後重量配分の均整化です。コーナリングの際、重心が中心にあればあるほど、車体にかかる遠心力が理論上もっとも安定します。

 不安定な挙動とならない分、ハンドル操作に対して正確にクルマが動くことから、「人馬一体」感を得ることができ、端的にいえば、「ハンドリングがよい」クルマとなるのです。

 スポーツカーの定義には議論の余地がありますが、仮に「気持ちのいいドライビングができるクルマ」と定義するのであれば、この「人馬一体」感は、スポーツカーとして、非常に重要な要素であるといえます。

 さらに、FRレイアウトにアクセルを踏んだ分だけ自然に回転数が上がるNAエンジン(=過給器、つまりターボをもたない自然吸気エンジン)を組み合わせることで、よりドライバーの意のままに操れるクルマができあがります。

 これらが転じて、「スポーツカー=FR」という図式が定着してきました。

 一方、FFのスポーツカーも見直されつつあります。2020年10月9日にはFFスポーツカーの代表格であるシビックタイプRのマイナーチェンジモデルが発売されました。

 今回のマイナーチェンジでは、国内200台限定販売となる「シビックタイプR リミテッド・エディション」を設定し、鈴鹿サーキットで2分23秒993というタイムを叩き出しています。

 このタイムはFF車最速であり、なおかつ鈴鹿サーキットにおける86の公式コースレコードである2分29秒949をも上回りました。

 シビックタイプRと86では車格やコンセプトが異なるため、単純には比較できませんが、少なくとも、FFレイアウトだからといって遅いということはないようです。

 一般的に、FFレイアウトを採用するメリットは、部品点数が少ないことによるコストメリットと、居住空間を大きくとれるという、FRレイアウトと逆の点にあるといわれています。

 その反面、前輪で駆動と操舵をおこなわなければならないことから、各部に大きな負担がかかり、スポーツカーのように大きな負荷を与える走行をするモデルには向かないとされてきました。さらに、前述の通り、前後の重量配分の均整をとりづらいこともデメリットです。

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