初代「ゴルフ」をジウジアーロが作るきっかけとなったクルマとは?【THE CONCEPT】

もし、ポルシェ「914/6」が期待通りの大成功を収めシリーズ化されることになっていたら、市販車両のデザインに活かされたかもしれないコンセプトカー「VWポルシェ・タピーロ・コンセプト」とは、どんなクルマだったのだろうか。

ポルシェ「914」ベースのデザインスタディコンペで生まれた

 ポルシェにとっては、同社の開祖たる「356」から「912」に至る4気筒モデルの後継車。他方、コラボレーションのパートナーたるフォルクスワーゲンにとっては、タイプ1「カルマン・ギア」に代わるスポーティモデルとして、1969年のフランクフルト・ショーにてデビューを果たしたのが「VWポルシェ914」である。

 とくに2リッター時代のポルシェ「911T」と同じ、1991ccのボクサー6気筒を搭載した「914/6」では、クラスの水準を上回るパフォーマンスを発揮したほか、ごく低い重心を生かした異次元的なハンドリングとロードホールディング、4m足らずの全長に2名の乗員とそのバゲッジをたっぷり収められるパッケージングの妙など、このクルマの美点は枚挙に暇がない。

1970年のトリノ・ショーに、ポルシェではなくフォルクスワーゲンのブースから出展された「タピーロ」
1970年のトリノ・ショーに、ポルシェではなくフォルクスワーゲンのブースから出展された「タピーロ」

 しかし、フェルディナント・ポルシェ博士の孫で、ポルシェ・デザインチームの初代チーフスタイリストの地位にあったフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(愛称ブッツィ)がデザインを担当したボディデザインは、いかにストイックなキャラクターで知られるポルシェとはいえ、機能主義一辺倒にも映りかねない無機質なものであった。

 モーターショーとそののちの市場調査の結果や、実際にデリバリーが開始された直後の販売実績も、ポルシェおよびフォルクスワーゲンの期待を若干ながらも裏切るものだったとされているのはご存知のとおりだ。

 そこでポルシェとフォルクスワーゲンは、リサーチのために914をベースとするデザインスタディのコンペをおこなうことを決定。1970年内からヨーロッパ各地のモーターショーにて、随時発表させることになった。このコンペには3つのコーチビルダーないしはデザインスタジオが参加、それぞれ1台ずつのコンセプトスタディをショーデビューさせるに至る。

 そのひとつが、フランスの特装車メーカー兼コーチビルダーでもあるユーリエが、のちにBMWのチーフスタイリストとして活躍するポール・ブラックのデザインで制作した「ムレーナ・コンセプト」。そしてトリノを本拠とする新興のカロッツェリア、ユーロスタイル社が、BMW503/507のデザイナーとして知られるアルブレヒト・ゲルツのデザインで制作したコンセプトカー(特定のネーミングは存在しないようだ)。同じく新興のデザインスタジオ、イタルデザインが制作、1970年秋のトリノ・ショーにてお披露目されたのが、今回の主役「VWポルシェ・タピーロ・コンセプト」の3台である。

 デザインコンペに参加した3台のコンセプトスタディのなかでも、もっとも鮮烈かつスタイリッシュと評されたタピーロ。制作者であるイタルデザイン社は1968年に創業して間もない、この時点での実績はまだ十分ではなかったデザインスタジオだったが、そのチーフスタイリストは、カロッツェリア・ベルトーネとギアで輝かしい作品を残し、さらに1970年代以降は「巨匠」と呼ばれることになるジョルジェット・ジウジアーロであった。

【画像】市販化されていたらと思わずにいられない「タピーロ」の魅力(9枚)

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