メルセデスにロータリーEgがあった! ガルウイングのコンセプトカーとは?【THE CONCEPT】

ロータリーだけでなく、ディーゼルやガソリンエンジンを搭載した「C111」シリーズとは?

 表舞台から姿を消したかに見えたメルセデスC111シリーズだが、再びスポットライトを浴びる日が訪れる。オイルショック以後、世界中の自動車メーカーが乗用車用ディーゼルエンジンの開発に注力していた1970年代中盤のことである。

 ディーゼルのパイオニアでもあるダイムラー・ベンツ社は、当時開発中だったターボ付きディーゼルのテストベッドとして、C111を再び引っ張り出すことにしたのである。

●開発実験車両としての「C111」

写真は右から「C111」のプロトタイプ、「C111-II」(1970年)、「C111」(1969年)
写真は右から「C111」のプロトタイプ、「C111-II」(1970年)、「C111」(1969年)

 1976年に発表された「C111-IID」は、2代目C111-IIのシャシ/ボディを流用。当時の生産車「300D」のために開発していた3リッター直列5気筒ターボディーゼルエンジンに、大幅なチューンアップを施した上で搭載した。最高出力は190psと、当時の自動車用ディーゼルの常識を遥かに上回っていた。

 2年後の1978年には、ボディワークまで完全リニューアルした3代目「C111-III」が登場する。従来のC111の面影がほとんど失われたボディは、第二次大戦前の速度記録車を思わせる流線型のスタイルとなっていた。

 車輪はスパッツによって4輪とも完全に覆われ、航空機の垂直尾翼のごとき巨大なフィンも取り付けられていた。その結果として得られたエアロダイナミクス性能はCd値にして0.191という自動車の領域を超えたものとなる。エンジンは、最高出力230psまでパワーアップした直5ターボディーゼルが搭載された。

 C111-IIIに課せられた最大の目的は、メルセデス乗用車用ディーゼルエンジンの優秀性を世界に示すためのPRだった。そして同じ1978年にイタリアのナルド・サーキットに持ち込まれたC111-IIIは、322km/hという最高速を記録。その成果は、世界中に喧伝されることになった。

 さらに翌1979年には、4代目に当たる「C111-IV」が発表される。空力にはさらなる改良が加えられ、センター単葉だった垂直尾翼は左右ツインに。さらにテール下部には水平尾翼状のウイングも追加された。

 エンジンは、ここへきてディーゼルからガソリンへとスイッチ。500psを発生するKKK製ツインターボ付きの4.8リッターV8エンジンを搭載された。C111-IVは最高速403.78km/hを記録し、試験開発車両としての責務を全うする。そして今度こそC111シリーズの幕を閉じることになったのだ。

 その後メルセデス・ベンツは、生産化を見越したコンセプトカーとして、1991年のフランクフルト・ショーにて「C112」をデビューさせる。同時代の「600SEL」用の6リッターV12をミドシップに搭載。「ABC(アクティブ・ボディ・コントロール)サスペンション」、「アクティブ・エアロダイナミクス(ブレーキ連動リアウィング)」など現在の市販車に採用されているテクノロジーも、既に満載していたとされている。

 ところが、ショーデビュー直後から約700件に及ぶオーダーを受けたとも噂されていたC112は、諸般の事情で生産化プロジェクトがキャンセル。結局、メルセデス・ベンツから300SLに相当するスーパースポーツが復活するのは、2003年リリースの「SLRマクラーレン」まで待たねばならなかったのである。

【画像】市販化されてほしかった「C111」とは?(24枚)

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