洒落男御用達の鉄板デートカー!! アルファ製スパイダー3選

ダスティン・ホフマンが映画『卒業』で乗っていたアルファの実勢価格は?

 今回のボナムズ・オークションでは「アルファ ロメオのスパイダー」といえば多くの人が連想するであろうこのクルマも、もちろん出品リストを飾っていた。

●1967 アルファ ロメオ「デュエット1600スパイダー」

約478万円で落札された1967年式アルファ ロメオ「デュエット1600スパイダー」(C)Bonhams
約478万円で落札された1967年式アルファ ロメオ「デュエット1600スパイダー」(C)Bonhams

 1966年にデビューした「1600スパイダー・デュエット」。基本的なメカニズムを「ジュリア・スプリントGTV」や「GT1300ジュニア」とともにするバリエーションモデルである。

 流麗を究めたボディのデザインは、ジュリエッタ時代に次いで名門ピニンファリーナが手掛けたもので、空力的でスマートなプロポーションと、「osso di seppia(甲イカの骨)」というイタリア国内におけるニックネームの由来でもある、ラウンド形状の長いテールを最大の特徴としていた。

 スパイダー・デュエットは、ジュリア・ファミリーの発展に伴ってバリエーションを増やし、「1300」や「1750」も設定。1969年にはテールを潔くカットした第二世代、通称「コーダ・トロンカ」に移行し、1970年代には「2000」が最上級モデルとなった。

 さらに1980年代には、樹脂製の空力パーツでモダナイズを図った第三世代「アエロディナミカ」へと進化。そして、さらなる大幅なモダナイズが施されて1989年に登場した「シリーズ4」へと最終進化を図り、1993年まで生産された。

 実に27年にもわたって生産された超ロングセラーの開祖であるとともに、独特の美しさを誇るデュエット。現在のクラシックカー国際マーケットにおける評価も、一連のジュリア系スパイダーのなかでは格別のものとなっている。

 ボナムズ・オークションの出品車両は1967年型で、新車時から南カリフォルニアで過ごしてきたというヒストリーを持っている。イタリア車だけを対象とするコンクール・デレガンス「コンコルソ・イタリアーノ」2016年版では、「The Most Original Duetto(最もオリジナリティを保ったデュエット)」に選ばれたほか、有名どころのコンクールで数々の入賞を果たしてきた個体でもある。

 このデュエットに、ボナムズ社が設定したエスティメートは5万−7万ドル、日本円換算で約530万−800万円と、かなり広めにとられていた。そして8月14日に入札締め切りとなったオンラインオークションでは、4万4800ドル、日本円換算で約478万円という、来歴を考慮すればかなりリーズナブルな価格で落札されるに至った。

●2009 アルファ ロメオ「8Cスパイダー」

約3162万円で落札された2009 アルファ ロメオ「8Cスパイダー」(C)Bonhams
約3162万円で落札された2009 アルファ ロメオ「8Cスパイダー」(C)Bonhams

 今回、最後のオークションレビューは、数ある「アルファ ロメオ・スパイダー」のなかでも、おそらく最強・最速の市販モデルと目されている1台、「8Cスパイダー」である。

 8Cスパイダーは、もともとアルファ ロメオ社内で「スポルティーヴァ・エヴォルータ」というコードネームのもと開発され、第二次大戦前のアルファ ロメオの伝統を復活させたスーパーカー、「8Cコンペティツィオーネ」のオープン版である。

 起源となる8Cコンペティツィオーネは、まずは2003年フランクフルト・ショーにコンセプトカーとして出品された。

 翌2004年の「コンコルソ・ヴィラ・デステ」のコンセプトカー部門で金賞を得たのち、2006年のパリ・サロンにて「500台を限定生産、2008年からEU圏内でデリバリー開始」という生産スケジュールとともに、市販モデルの正式なワールドプレミアが実現。世界限定500台のみが生産されたといわれている。

 そして、8Cコンペティツィオーネの生産が予定どおり終了した2009年からは、2005年の北米「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」にてデビューし、翌2006年にはクーペと同様「コンコルソ・ヴィラ・デステ」コンセプトカー部門で金賞を獲得した8Cスパイダーも生産化。こちらも500台のみが限定製作・販売されることになった。

 8Cコンペティツィオーネ/スパイダーともに、まだ「ヤングタイマー・クラシック」と呼ばれる世代のクルマではなく、どちらかといえば「ユーズドカー」に近いのだが、依然として新車時ないしはそれ以上のマーケット価格を保っていることで知られる。

 この8Cスパイダーに、ボナムズ・オークション社が設定したエスティメート(推定落札価格)は、けっこう強気な27万−32万ドル。日本円では2900−3400万円とされた。

 そして入札開始の一週間後、31日に締め切りを迎えた競売では29万6500ドル(邦貨換算約3162万円)で落札。新型コロナ禍に翻弄される現況のなか、無事エスティメートに到達することができたのだ。

 日本国内では、筆者がスーパーバイザーとして企画・監修した「東京コンクール・デレガンス2009」でプレミア発表会がおこなわれたため、なんだか不思議な親しみを勝手に抱いてしまう8Cスパイダーだが、まだまだマーケットにおける評価が高いことに安堵する一方で、これから先も手の届くクルマにはなってくれそうもないことを再認識させられたようで、ちょっとだけ寂しくも思うのであった。

【画像】ダスティン・ホフマンも乗ったスパイダーとは?(24枚)

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