トヨタ「プリウス」は空力がスゴイ!? 空気抵抗がクルマに与える影響とは
クルマに関する用語で、「Cd値」という単語を目にすることがあります。空力特性を表す数値ですが、空力はクルマにどのような影響を及ぼすのでしょうか。
空力特性にどれだけ優れているかを示す「Cd値」
近年はあまり耳にしなくなりましたが、かつては新型モデルが登場すると、「あのクルマは空力がスゴイ」とか「エアロボディ」とか「Cd値」などという話が出ました。
空力やCd値は、クルマにどのような影響があるのでしょうか。

空力とは、クルマが走行するときに受ける空気による抵抗力を指す「空気力学」を略した言葉です。
空気力学的には、クルマの進行方向と反対方向に働く「抵抗」、クルマに対して垂直に働く「揚力(リフトとダウンフォース)」、側面から働く「横力(よこりき)」が発生する特性があります。
走り出すと感じる風は、空気の抵抗が正体です。一般道では窓を開ければ心地よい風も、高速道路では強すぎて窓を閉めるように、抵抗は速度に比例して強くなります。
そして走行中に同時に働く力が「揚力」です。走行しているとボディ上部だけでなく下部にも空気が流れ、車種によってはボディが浮き上がってきます。
この浮き上がる現象を「リフト」、ボディの形状により車体を路面に押し付ける下向きの力を「ダウンフォース」といいます。
「横力」とは横滑りや横揺れ、偏揺れなどタイヤにかかる力のことです。これは、コーナリングのときに感じる遠心力と通じる部分があります。
クルマが速度を上げて地上を走る以上、あらゆる方向から空気の力が作用して抵抗となり、これを上手にコントロールするために空力は研究されているのです。
そして、空気の抵抗力を表す係数として使われるのが、「Cd値」と呼ばれる数値です。Cdとは「Constant Drag(コンスタントドラッグ)」の略で「走行上に空気がボディにあたりながら流れていくときの空気抵抗係数」のことです。
ボディ表面を通る空気がどれだけスムーズに流れるかを示す数値で、低いほど空気抵抗が少ない形状ということになります。
Cd値が優れているのに越したことはありませんが、これはボディ表面を流れる空気の数値であって、実際の空気抵抗は、「Cd値×車体の大きさ(クルマの真正面のサイズ)×走行速度の二乗×空気密度」という複雑な計算式で導き出されます。
車体が大きくなるほど空気抵抗も大きくなるので、少しでも空気抵抗を減らすためにCd値に優れたボディデザインにするというのが現在のトレンドとなっているのです。
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一般的に、Cd値が「0.30」を下回ればかなり優秀だといえますが、意外なのはF1マシンの数値で、Cd値は「0.50」前後もあるのですが、それは軽い車体とハイパワーなエンジンでボディが浮き上がるのを抑えるために、強力なダウンフォースを必要とするからにほかなりません。
車体の前後に大きなウイングを装着しているため空気抵抗になりますが、リフトを抑えてトラクションを稼ぐために必要不可欠なパーツです。
Cd値だけが良ければいいのではなく、さまざまな空力特性のなかで最適なバランスを見つけることが大切だといわれています。
ただし、Cd値が良いほど燃費性能が上がるといわれており、エコカーやハイブリッド車のボディラインがどことなく似ているのは、風洞実験やコンピュータの計算上、空力に優れた形状を採用しているためです。
空力に優れていると少ない空気抵抗で走行でき、少ない燃料で同じ距離が走れることになります。
実際にCd値が良いクルマは燃費が良かったり、走行中の風切り音が少なくなったりというメリットを体感することもできます。























