古くて新しい「F40」は、エンツォが遺した最後のフェラーリ【THE CAR】
「F40」は、本当に雨の日は危険なのか?
代わりに、サーキットと高速道路を平然と、しかも最高性能レベルで行き来できるようなスーパースポーツカーが続々と現れだしたのだ。マクラーレン「F1」などは、さしずめ、その頂点というべきモデルである。
F40は、現代スーパースポーツカーの起点だ。だからこそ、オーナーをして、“次に欲しいクルマもF40”と言わしめるに十分な魅力が詰っている。
今でも思い出すのが、1995年4月におこなわれた「F50」のデビューを兼ねた第1回フォルツァ・フェラーリ(フェラーリ社公認の国内最大級規模でおこなわれたフェラーリのイベント)in鈴鹿サーキットにおける、1シーンだ。
大雨のさなかに開催されたデモンストレーションで、全日本級のドライバーが各種フェラーリを、はためにも怖々とゆっくり走らせているなかを、水しぶきをあげて狂気の走りをみせる、ノーマルF40の姿があった……。
日本のGT選手権に出場しているレースマシンのF40でも追いつけない。それを駆っていたのは、アンドレアス・ニコラウス“ニキ・ラウダ”だった。
雨のF40。人はそれを禁忌のようにいうけれども、超プロフェッショナルにとっては、さほど困難なモデルではないようだ。逆に、基本ポテンシャルのすさまじいまでの高さを物語る。
キーを捻り、脇のスターターボタンを押すと、ランチア「LC2」由来の3リッターV8ツインターボエンジンが、一瞬、猛々しい叫びをあげ、目覚めた。
走り出す前に、これほど深呼吸をしたくなるクルマも珍しい。何度も何度も呼吸を整えずにはいられない。
そう、それが、F40の魔力。
それが、人を惹き付けるのだ。
路面が荒れていた。
プロの腕前を自認する、とでもいうならともかく、決してそうではないと知る筆者は、ターボを利かさないよう細心の注意を払ってアクセルペダルをコントロールし、低回転でゆっくりと走り出した。ターボさえ利かせなければ、ただの3リッターV8エンジンだ。
車体が軽く、クラッチリリースですっと発進させているかぎり、危険があるはずもない。低回転域のスカスカなライドフィールにイライラしながら街をクルーズする。身体がクルマに慣れ、タイヤが路面に慣れ、エンジンが空気に慣れて、すべてが暖まるのを待つのだ。
心と身体とマシンの暖機運転。これは、1970年代スーパーカーの所作にも近い。そう、F40のもつ、ターボの危険以外は……。
準備が整った。
F40のノーズが、まるで路面に食い込むかのように、高速道路への進入路を駆けあがる。車体が真っ直ぐになっていること、そして、路面に妙なアンジュレーションがないことを、何度も何度も確認してから、右足を、アクセルペダルをじわりと踏み込んだ。
高速道路で解放されたF40のターボパワーのフィールは、絶対的な加速感で最新のスーパースポーツに決して劣らず、むしろ恐ろしさでは完全に上回っていた。車体がふわりと浮くような、ボディパネルが紙細工でできているかのような、そんな圧倒的な軽さは、スリルというよりもむしろ、下界とは紙一重という恐怖を生み出すのだろう。
前方からの、目に見えぬ何かからいきなり、ぐいっと引っ張られたかのような劇的な加速は、未来、即ち21世紀の今を、確かに向いていたのだった。
古くて新しい。だから凄いのだ。
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●FERRARI F40
フェラーリF40
・全長×全幅×全高:4430×1980×1130mm
・エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
・総排気量:2936cc
・最高出力:478ps/7000rpm
・最大トルク:58.8kgm/4000rpm
・トランスミッション:5速MT
●取材協力
DREAM AUTO
ドリームオート/インター店
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・所在地:栃木県栃木市野中町1135-1
・営業日:年中無休
・営業時間:10:00~18:30
・TEL:0282-24-8620
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