スーパーカー少年はみんな憧れた! ロータス「ヨーロッパ」の大いなる誤解とは【THE CAR】

旧世代のスーパーカーに共通する特徴とは?

 実をいうと、漫画『サーキットの狼』をしっかり読み込んでみれば、池沢先生自身も、ヨーロッパをスーパーカーとして捉えていたわけでは決してなかったことが、分かるはずだ。読者であるボクたちが、フェラーリやランボルギーニに目を奪われていたなかで、勝手に一緒くたにしてしまった。

 もっとも、当時の日本車事情を考えれば、ロータス・ヨーロッパも憧れのガイシャ、高価なスポーツカーであったことには違いないのだが。

モノコック・ボディにミドシップエンジンを搭載する当時最先端の技術を取り入れ、新時代のピュアスポーツとして登場
モノコック・ボディにミドシップエンジンを搭載する当時最先端の技術を取り入れ、新時代のピュアスポーツとして登場

 漫画のコンセプトは、勧善懲悪型のスポコン育成物語である。つまり、庶民派のヒーローが、手にしうる最高のパートナーでもって、強敵(お金持ちや最新マシン)に立ち向かい、幾多の困難を乗り越えて、最終的に頂点に立つ。そのプロセスに、読者は自分の成長を重ね合わせて夢中になる。

 サーキットの狼の場合、たまたま、その倒すべき強敵の役どころとして、当時最新のスーパーカーたちに白羽の矢が立ったわけで、決して、スーパーカーが主人公の物語ではなかった。スーパーカーはむしろ悪役。スーパーカーブームとは、ウルトラマンにおける怪獣ブーム、仮面ライダーにおける怪人ブームのようなものだったのだ。

 旧世代と新世代の激しい戦いも存在した。主人公側の仲間たちが乗っていたのは、池沢氏のまわりに実在したオーナーたちが楽しんでいた旧世代、つまりは1960年代の名車たち、ヨーロッパや「ディノ」、「ミウラ」、「ナローポルシェ」であったのに対して、敵となる人物が駆ったのは、新参でパワーもあって高価なクルマたちであった。それが、スーパーカーというものなのである。

 昔、丸い目玉がむき出しになったクルマが嫌いだった。リトラクタブルライトのスーパーカーに憧れた世代にとって、丸いヘッドライトがそのまま見えるという事実は、旧世代であることの証拠であったからだ。リトラクタブルライトブームと並行して、乗用車の世界では角目や異形が主流になっていくから、丸目は、やはり古いクルマであることの象徴となった。

 クラシックカー好きとなった今となっては、画一的な丸目でありながら表情豊かな旧世代に、ひどく憧れる。歳を取ったのかもしれない。けれん味たっぷりの最新空力モダンな顔には、もはや嫌悪感さえ覚えることがある。リトラクタブルライトにしても、開けてみれば丸目である。時代は変わった。

 そういうわけで、ロータス・ヨーロッパは、勧善懲悪のヒーローであったことからも分かるように、決して、絶対性能に優れた高級車ではなかった。否、ロータスが作ったスポーツカーだったから、造りは多少雑であっても、一流のハンドリングマシンであったし、1960年代のスポーツカーのなかでは秀でたドライビングファンを持っていたのだろう。

 そして、その理想をもっともよく表現しているのが、やはり初代のS1であるという事実が、近年、S1、もしくはS2前期に憧れるマニアが多いという事実からも伺える。

 1966年末に登場したルノー製82psエンジンを積むS1を、イメージ的にはスーパーカーとなったアメリカ仕様左ハンドルのストロンバーグキャブヘッド搭載ビッグバルブ・スペシャルが追い抜くことは、恐らく不可能だ。

 そこが、誤解を紐解く鍵でもある。

* * *

●LOTUS EUROPA SPECIAL
ロータス・ヨーロッパ スペシャル

・生産年:1972−1975年
・年式:1972年
・総排気量:1558cc
・トランスミッション:5速MT
・最高速度:200km/h
・全長×全幅×全高:4000×1635×1080mm
・エンジン:直列4気筒DOHC 16バルブ
・最高出力:126ps/6000rpm
・最大トルク:15.6kgm/5500rpm

<

●取材協力
魔方陣 スーパーカーミュージアム
・所在地:栃木県栃木市野中町553
・営業日:水曜日
・営業時間:10:00~18:30
・TEL:0282-20-5521

【画像】助手席の女性にシフトチェンジしてもらいたい「ヨーロッパ」のコックピットとは?(12枚)

「えっ!カッコいい!」 マツダの「スゴいSUV」登場! どこが良いの?

画像ギャラリー

1 2

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー