もはや世界遺産級のクルマたち!? 偉大な大衆車5選
現在、日本の庶民の足といえるクルマは軽自動車やコンパクトカーです。そうしたクルマは、かつて「大衆車」と呼ばれ、世界中のモータリゼーションを支えてきました。そこで、国内外のメーカーがつくった偉大な大衆車を、5車種ピックアップして紹介します。
モータリゼーション発展の礎となった偉大なクルマを振り返る
最近、あまり耳にしなくなったクルマ用語で「大衆車」があります。現在は「ベーシックカー」や「エントリーカー」などと呼ばれるのが一般的ではないでしょうか。
この大衆車が本格的に普及したのは第二次大戦後で、それまでクルマは超高額な買い物でしたが、戦後に生産や開発の技術が発達したことで安価になり、庶民でもクルマが買えるようになったということです。
そこで、国内外のメーカーがつくった偉大な大衆車を、5車種ピックアップして紹介します。
●BMC「ミニ」
1959年、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)は、天才技術者といわれたアレック・イシゴニスによる設計の「ミニ」を発売。
それまでにもイシゴニスはモーリス「マイナー」という小型車を設計し、大ヒットを記録していましたが、さらに小さいモデルとしてミニを設計しました。
ミニは全長3m、全幅1.4mほどの小さなボディに、大人4人と荷物を載せてドライブできるパッケージを実現。
搭載されたエンジンは初期モデルで850ccの直列4気筒OHVで、フロントに横置きに搭載して前輪を駆動するFFを採用し、エンジン下部にトランスミッションを内蔵することでエンジン長を短くし、狭いエンジンルームを有効につかっています。
このレイアウトはその後も継承され、1.3リッターまで排気量を拡大しても変わっていません。
ミニの最大の特徴は、サスペンションのスプリングが、一般的な金属コイルばねではなく「ラバーコーン」と呼ばれるゴム製のばねを採用したことです。
これは、室内の寸法を極力広くするためにレイアウトされたサスペンションに不可欠なもので、ミニ独特のドライブフィーリングも生み出しました。
また、優れた基本設計によって、「ミニ クーパー」や「ミニ クーパーS」といった高性能モデルや、セダン、ワゴン、バン、ピックアップトラックと多くのバリエーションが設定されました。
2000年に最後モデルが販売され生産を終了しますが、欧州では大衆車としてヒットし、日本では趣味のクルマとして、いまも人気があります。
●フォルクスワーゲン「タイプ1」
第二次世界大戦勃発以前の1938年、アドルフ・ヒトラーの国民車構想のもと、フェルディナンド・ポルシェ博士によって「タイプ1」が開発されました。
しかし、第二次世界大戦が開戦すると、タイプ1は国民車としてではなく主に軍用車として生産されます。
そして終戦を迎え、ドイツ復興のためイギリスの管理下でタイプ1の量産が開始。欧州での販売を皮切りに世界中に輸出され、ボディ形状から「ビートル(カブトムシ)」の愛称で呼ばれるなど大ヒットしました。
タイプ1は空冷水平対向4気筒OHVエンジンを、軽量かつ剛性の高いシャシの後部に搭載したRRを採用。
このシャシは汎用性が高く、セダン、ステーションワゴン、クーペ、1BOXワゴン、トラックなど、さまざまな派生車を展開することで、あらゆる顧客のニーズに対応しました。
タイプ1の生産はドイツ本国では1978年に終了し、主力モデルはFFの「ゴルフ」にバトンタッチしますが、メキシコでの生産は2003年まで継続され、じつに65年もフルモデルチェンジすることなく生産されたことになります。
●シトロエン「2CV」
いまから100年ほど前の1919年にシトロエンが創業されました。創業当初に製造していた「山歯歯車」の歯の形状をモチーフにしたエンブレム「ダブルシェブロン」は、形を変えながらいまも健在です。
そしてシトロエンは第二次大戦勃発前に、不整地でも快適な乗り心地で経済的な国民車の開発を計画し、戦後の1948年に「2CV」として実現します。
2CVという車名はフランス語で「2馬力」にあたりますが、最高出力が2馬力だったわけでなく、出力によってクラス分けされる車格の分類のひとつて「2CVクラス」という意味です。
強度を保つ曲面と、安価に製造できる平面をたくみに組み合わせたボディを採用し、当初は375cc、最終型でも600ccの小型な空冷水平対向2気筒OHVエンジンをフロントに搭載。前輪を駆動するFFとなっていました。
内装は無駄なものが一切ないほど簡素化されていますが、巧みにデザインされており、安っぽさよりもシンプル・イズ・ベストという気概が感じられます。
衝突安全性の確保や環境対応が困難になったため、1990年をもって生産を終了しましたが、大きな変更が無いまま40年以上に渡って生産されました。
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