マセラティ「MC12」のベースは、「エンツォ フェラーリ」だった!【エンツォ物語:03】

特別なフェラーリオーナーだけに許される「FXXプログラム」とは?

 それでは、このMC12ベルジオーネ・コルセの前身ともいえる、フェラーリFXXとはいかなるモデルなのか。ここからはふたたびフェラーリ・ブランドでのエンツォからの進化を追っていこう。

オーナーもフェラーリの開発ドライバーになれるというコンセプトのもと、FXXプログラムと呼ばれる究極のカスタマーサポートを提供
オーナーもフェラーリの開発ドライバーになれるというコンセプトのもと、FXXプログラムと呼ばれる究極のカスタマーサポートを提供

 フェラーリからFXXの生産計画が正式にアナウンスされたのは、2005年6月のことだった。実際に同年12月に開催されたボローニャ・ショーで実車を初披露することになるのだが、モーターショーの華やかな舞台ではなく、単なるリリースでこのような歴史的な作品を発表してくるあたりも、いかにもフェラーリらしい演出といえなくもない。

 FXXは、もちろんエンツォをベースに、それをサーキット走行専用車として仕立てた作品だ。生産台数はわずかに29台。カスタマーは当時で150万ユーロの支払いをフェラーリに求められ、一方フェラーリはFXXプログラムと呼ばれる究極のカスタマーサポートを提供。

 オフィシャルイベント参加のための輸送やメンテナンス、さらにはサーキットでの万全のホスピタリティなどがそれには含まれていた。ピロータFXXと呼ばれたカスタマーは、身ひとつでサーキットに向かえば、そこにはF1パイロットと同様の体制とともに待つ、自身のFXXがあったのである。

 FXXのエクステリアデザインは、エンツォのシルエットこそ忠実に受け継がれているものの、そのディテールはさらに魅力的なエアロダイナミクスを得るために、積極的にモディファイされていた。

 フェラーリによればエンツォ比でのFXXのダウンフォース量は、実に40%増。それを裏付けるかのように、フロントのバンパースポイラーやボンネット上のエアインレット&アウトレット、リアには左右にボックスデザインのサブウイングを備え、同時にセンターセクションを可変式とした専用のウイングを装備するなど、その変化は著しい。

 エグゾーストの位置がサブウイングの直下に移動しているのは、ディフューザーの機能をより効率的なものとするための策だろう。ボディパネルはオールカーボン。車重はエンツォからさらに100kgが軽減され、1150kgが公式なデータとなる。

 リアミッドに搭載されるエンジンは、FXX専用となるV型12気筒DOHCで、ボア×ストロークを新たに94×75.2mmとすることで6262ccの排気量を得た。

 最高出力はエンツォからさらに140psものエクストラを得たもので、フェラーリは800ps以上と発表している。ミッションは最短100mm秒でのシフトが可能な、当時のF1マシンとほぼ同等の速さでのシフトが可能となるロボタイズド型6速MT=F1マチックとなり、スパルコ製のバケットシートや、液晶パネルを採用したメーターなど、インテリアにもFXXに独自のフィニッシュは多く見受けられる。

 FXXプログラムは、当初2006年、2007年の2年間にわたってFXXのカスタマーに提供される計画だったが、その後フェラーリはさらに、最新スペックのトラクションコントロールやCCMブレーキ、さらには880psへのパワーアップを可能とするエンジンのアップデートキットなどから構成される、エボリューション・パッケージを提供。同時に2008年、2009年の2年間、FXXプログラムを継続することを決定した。ちなみにこのFXX、そしてFXXプログラムのコンセプトが、後に599XXと599XXプログラムに継承されたことは、フェラーリの事情に詳しい人には周知のとおりだろう。

 ちなみにFXXは当初計画された限定生産数29台のほかに、ミハエル・シューマッハのために1台を追加生産。トータルで30台が生産されている。

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