創始者の名前がついた「エンツォ フェラーリ」は、永遠だ!【エンツォ物語:02】

「エンツォ」はどうして巨大なリアウイングなくて300km/h以上で走れるのか?

 リアミッドに搭載されるエンジンは、デビュー以前にはV型10気筒という噂も絶えなかったが、フェラーリの選択は当然のことのようにV型12気筒だった。

 プロトタイプの「M3」では、F140A型と呼称されたのに対して、量産型のエンツォでは新たにF140Bという型式名が与えられた。

 しかし、このエンジンは過去の12気筒エンジンとは一切の関連性を持たない、まったく白紙の段階から新設計されたDOHC4バルブユニットである。

ボア×スローク値は、92×75.2mm。ブロックはアルミニウム素材=ALS17を用い、660psの最高出力を得た
ボア×スローク値は、92×75.2mm。ブロックはアルミニウム素材=ALS17を用い、660psの最高出力を得た

 ボア×スローク値は、F50用のF130型と比較して7mm大きなボア径の設定となる92×75.2mm。ブロックはアルミニウム素材=ALS17で成型されている。

 F50用のF130型は、それ自体が応力負担のための構造体として使用する事情から、ノジュラー鋳鉄製であったため、重量面でのアドバンテージは大きい(事実F140B型ユニットの単体重量は225kg抑えられている)。

 その一方でサイズ的には特に前後方向での拡大は避けられなくなるが、実際に見るF140B型ユニットでは前後方向の大きさよりも、むしろ重心高低下を目的に、ドライサンプの潤滑方式を採用したことに加え、上下方向が驚異的なまでにコンパクトな設計となっていることの方が印象的だ。

 Vバンクの角度は65度。振動面でもこれならば十分に対応の余地はある。さらに吸排気の両側に連続可変をおこなうバルブタイミングシステムを装備したほか、吸気システムには可変慣性過給を採用。その結果5998cc排気量から、プロトタイプのF140A型からさらに10psのエクストラとなる660psの最高出力が得られることになった。

 このパワーを後輪から路面に放出するためのシステムは、前方から後方に向かって、215mm径のツインプレートクラッチ、加速側30%、減速側50%のロッキングファクターを設定したLSD式デファレンシャル、トリプルコーンシンクロメッシュを全ギヤに適応させた、6速の縦置きギヤボックスという構成だ。

 ロボタイズドミッションのF1マチックが採用されたのも、エンツォでの大きなトピックスだった。ちなみにエンツォ用F1マチックの制御モードは、スポーツとレースの2タイプ。後者ではローンチコントロール機構へのリンクも可能となる仕組みだった。

 ちなみにエンツォは、このパワートレインシステム一式の搭載を、2650mmのホイールベース内で実現している。

 F50比では70mmほど大きな数字であるが、1660mm/1650mmという前後のトレッド値を考え合わせれば、その比率自体はF50から変化がないことが理解できる。ホイールベースの延長は、高速域における安定性確保に直接の狙いがあったと見るのが妥当なところだろう。

 前後のサスペンションは、プッシュロッド方式のダブルウィッシュボーンデザイン。ダンパーとコイルスプリングのユニットは水平方向にインボード配置され、ダンパーには電子制御方式の減衰力可変システムも組み込まれている。

 ブレーキはブレンボとの共同開発で誕生したCCM=カーボンセラミックマテリアル製ディスクを採用したもの。これによって1輪あたりのバネ下重量は12.5kg軽量化することが可能になった。

 キャリパーはフロントに6ポッド、リアには4ポッドが組み合わされている。タイヤはフロントに245/35ZR19、リアに345/35ZR19サイズのブリヂストン製ポテンザRE050Aスクーデリアを装着。これはエンツォ専用タイヤとなる。

 ドライウエイトでわずかに1255kgというエンツォは、0−100km/h加速3.65秒、0−200km/h加速9.5秒、最高速350km/h以上という究極のスーパースポーツだった。

 しかしエンツォのストーリーは、ここまででは終わらなかった。ここからさらにデビュー時には想像することさえできなかった派生形が続々と生み出され、世界のスーパースポーツファンを強く刺激して止まない存在となったのだ。

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1件のコメント

  1. エンツォが御存命だったらこの車に
    自分の名前を許したか?
    そこが一番重要だと思う。
    最速だろうと最新だろうと
    エレガントさのかけらもないスポーツカーは
    ランボルギーニで良いではないのか。

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