親戚同士!? ドイツを代表するカーメーカー ポルシェとVWの長くて深い関係とは?
かつてはポルシェ家とピエヒ家の争いもあった
そしてポルシェ356の量産化の目処がついた1948年に、国営企業だったフォルクスワーゲンと業務提携を、続いて技術コンサルタント契約も結んでいる。この取り決めは、それ以降の両社に大きなメリットをもたらすことになった。この契約は、原則的に今日まで継続して施行されている。
その骨子は大きく分けると4つだ。
1:これから先、ポルシェはVWと競合する車種を他メーカーのために設計しない。
2:VWはポルシェの持つパテントを自由に使うことができるが、その代わり生産されたVW1台ごとに定額のロイヤリティ(特許使用料)を支払う。
3:ポルシェはVWのパーツを利用して自由にスポーツカーを製作することができる。
4:ポルシェは自由にVWの販売網とサービス網を利用できる。
フォルクスワーゲンからの安定したパーツの供給やヨーロッパ全土を網羅した販売店とサービス網を使えることに加え、ロイヤリティまでも受け取れたことは、初めてスポーツカーを送り出すポルシェに多くのメリットをもたらした。
ポルシェ博士は息子のフェリーにポルシェ社を任せ、娘のルイーゼは博士のビジネスパートナーだった弁護士のアントン・ピエヒと結婚し、ポルシェ持ち株有限会社を創設する。ちなみにふたりの間に生まれたのが、後にフォルクスワーゲンの社長とVWグループの取締役会会長にのし上がり、辣腕を振るうフェルディナント・カール・ピエヒだ。
フォルクスワーゲンは1960年に民営化されたが、議決権を持つポルシェ家とポルシェ家の女系であるピエヒ家は、その後も筆頭株主としてフォルクスワーゲングループを支配し続けている。
ポルシェ社との契約から誕生した名作は少なくない。その筆頭がミッドシップのポルシェ「914」だ。また、グループ企業のアウディのパーツを使ってポルシェ「924」も生み出された。今世紀になってからもタッグを組んで「カイエン」や「マカン」などの高性能SUVを誕生させている。
ポルシェ家系とピエヒ家系による同族統治はうまく機能し、ポルシェはフォルクスワーゲンの親会社として高い利益率を誇っていた。
だが、21世紀になってポルシェ家とピエヒ家の間で権力闘争が起こり、ポルシェとフォルクスワーゲンのどちらが支配権を持つかで争うようになる。この買収劇は両社が経営統合し、ポルシェがフォルクスワーゲンの合弁子会社になる形で決着した。
新たな持ち株会社を設立して再スタートを切ったが、今もポルシェ家はフォルクスワーゲンの役員に名を連ねている。だから、今後も両社の関係が大きく変わることはないだろう。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。