なぜ新型車はSUVばかり? 軽・コンパクトから高級車までSUVが続々と登場する事情
SUVはスタイリングの良さと実用性を両立出来る!?
SUVはもともと悪路を走破できるオフロード4WDから発展したカテゴリーなので、キックスのように2WDしか用意しない舗装路向けの車種でも、大径タイヤの装着など外観が力強いです。
またボディの上側はワゴンと同様の形状なので、4名乗車時の居住性や荷物の積載性も優れています。SUVの天井を低くすれば、居住性と積載性は悪化しますが、外観はさらにスポーティな5ドアクーペ風になります。
つまりSUVは、カッコ良さと実用性を兼ね備えたカテゴリーで、このふたつの要素の配分も自由自在です。デザイン優先にも、あるいは実用指向にも、どのようなニーズにも対応できます。
一部のオフロード4WDを除くと、SUVのプラットフォームはセダンなどほかの車種と共通化できます。開発するとき時も合理的で都合が良く、SUVは世界的に人気を高めて、車種のリストラが進むなかでも生き残っているのです。
そして直近では、シティ派SUVが普及した影響もあり、少し無骨なオフロード4WDの持ち味が改めて見直されています。
日本でも外観をオフロードSUV風に仕上げたトヨタ「RAV4」やライズ、本物のオフロードSUVであるスズキ「ジムニー」などが注目されています。
輸入車でも、ジープブランドのオフロードSUVとされる「ラングラー」が人気です。
SUVの原点回帰ともいえますが、今後人気を維持するうえでは、注意すべき傾向でもあるでしょう。SUVがオフロード4WDからシティ派、クロスオーバーへと多様化を続けた結果、一種の行き詰まり傾向に陥り、トレンドが過去に遡ってオフロード4WDに回帰したとも受け取られるからです。
セダン、ワゴン、クーペなどのカテゴリーは、一度ブームを経験して廃れた過去があります。従って今後、売れ行きが盛り返すことは考えにくいです。
そうなるとSUVは、趣味性を備えた高価格車が堅調に売れる最後のカテゴリーかも知れません。
今後も人気を維持するためにも、SUVの多用途性を生かした新型車の登場に期待したいです。
今後発売される電気自動車のアリアやマツダ「MX-30」は、デザインにも新鮮味があるので、SUVの新しいトレンドを築くかも知れません。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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