超ド級「IS F」復活か!? レクサスが新型「IS」の改良を大々的にアピールするワケ
“迷い”を振り切ったレクサスが送り出す次の一台とは
換言すると、レクサスには、この少し前まで「迷いがあった」といわざるを得ません。
レクサスの歴史を振り返ると、初期にあったのはやはり、メルセデス・ベンツやBMWなど独プレミアムブランドに対するチャレンジ精神です。
モデルラインアップとしても、メルセデスベンツのS・E・Cクラス、BMWの7・5・3を事実上のベンチマークとして、レクサスはLS・GS・ISを軸足として構成。
また、レクサスの主力市場アメリカで1990年代後半から2000年代にかけてのSUVブーム。さらに2000年代から2010年代にかけてのSUVシフトへの対応に追われました。
そうしたトレンドが飛び火した中国市場でも、世界中のプレミアムブランドとの競争が激化するなか、中国政府の動向を気にしながら対応策を練ってきました。
一方、日本市場では導入当初、レクサス側の想定以上に、富裕層の欧州プレミアムブランドに対する忠誠心を切り崩すのに苦労したという経緯もあります。
2010年代中盤に入ると、ライフスタイルブランドとしてのアピールを強化。「アメイジング・エクスペリエンス(心躍る新しい体験)」というキャッチコピーも採用しています。
そしていま、CASE(コネクティビティ、自動運転、シェアリングなど新サービス、電動化)に代表される大規模な技術革新の波のなかで、日本を含め世界中で「人とクルマ」「クルマと社会」「社会とクルマ」との関係が大きく変わり始めています。
レクサスとしても明らかに、大きな転換期、次世代に向かうための岐路に立っているのだと感じます。
そうした状況で、レクサスは「これからのレクサスがどうあるべきか」と、自問自答を繰り返すなかで導き出したのが、「基本に戻り、レクサスとしてやれることを、とことんやる」という原点回帰なのだと思います。
そのためにも、独ニュルブルクリンクを参考とし、高低差75m・全長5.9kmの過酷なレイアウト設定を実現したトヨタテクニカルセンター下山(愛知県豊田市下山)で「人とクルマ」の関係を徹底的に追求。その成果として初めて量産されるのが、今回の新型ISです。
事実上のビックマイナーチェンジですが、レクサスの思いとしては明らかに、新たなるレクサスの出発を意味する重要なモデルなのです。
今回、アメリカ発のデジタルカンファレンスの後半、話がハイパフォーマンスモデルに位置づけられる派生モデル「IS F」に及びました。
量産について「ユーザーのフィードバック次第」と明言を避けましたが、ここまでいうからには量産にある程度の目途がある。そう見るのが、妥当ではないでしょうか。
振り返ると、先代ISをベースに開発されたIS Fの初期モデルは、とてつもなく尖ったクルマでした。
導入間もない頃、米ロサンゼルス郊外のサーキットでテスト走行した経験がありますが、サスペンションのセッティングがかなり硬く、アクセルレスポンスは過激で、まるで公道レーシングカー。
担当エンジニア自身も「少々やり過ぎ?」というイメージがあるほど、攻めたクルマでした。
その後、IS Fは段階的に洗練されていくのですが、販売実績などを踏まえて、「F」の立ち位置が見直されていきます。
結果、現行モデルではIS Fのラインナップは消滅し、販売が見込めるライトチューニングな「Fスポーツ」が、レクサスのおもなスポーティ性を担ってきました。
そしていま、「F」も含めて、レクサスは次世代に向けたスタートを切りました。
これまでのレクサスに対する取材を通じて、そう確信しています。
もしかすると、トヨタテクニカルセンター下山ではすでに、さまざまな「F」が走り出しているのかも知れません。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
決して悪くはないけど段付きテールは必然的にリヤスポイラーが小っちゃくなるのがなぁ
逆に派手めなGTウィング付けた方がカッコ良さそう
セダンだったらボルボの方が…って言う人もいそう。