梅雨の時期は事故に注意! いま「雨にも強いエコタイヤ」が増えている理由
エコタイヤの進化は「シリカとゴムの混合」がキーワード
カーボンブラックに代わる補強材として注目されたのが「シリカ」だ。レース用タイヤには1980年代から使われていたが、乗用車用としては1992年にミシュランが発売した「MXGS」というタイヤに使われたのが最初といわれている。
シリカはカーボンブラックと似た構造を持つ、ケイ素と酸素で構成された物質(=二酸化ケイ素、SiO2)で「ホワイトカーボン」とも呼ばれている。身近なものとしては、シリコンゴムや歯磨き粉、乾燥剤、珪藻土バスマットなどにも使われている。
カーボンブラックをシリカに置き換えると、ゴムの変形回復が早くなるという特徴があり、そのためタイヤが転がりやすくなるという。タイヤメーカーの横浜ゴムによると、カーボンブラックのみ配合のゴムに比べ、シリカ配合ゴムは、路面との接触面積は1.23倍、タンジェントデルタ(エネルギーロス)は約27%減、という数値になったそうだ。
結果、ゴムにシリカの配合量を増やせば増やすほどウエットブレーキ性能も良くなり、ころがり抵抗も減っていく。さらにシリカを配合したゴムは、低温でも硬くなりにくいという特性も持っている。
ただ難しいのは、カーボンブラックは油と馴染みやすい(親油性)のに対し、シリカは親水性だということだ。ゴムは油なので、ゴムにシリカをそのまま混ぜても「水と油」なので結合しない。またシリカ同士が強く引き合うため、塊(ダマ)になりやすい性質がある。
そこで必要となるのが、シリカとゴムを結びつける「シランカップリング剤」だ。この化合物は、材料を混合中に化学反応させることで、シリカとゴムを結合させる。また、ダマになりやすいシリカに分散剤を加えて混合することで、ゴムのなかに均一にシリカが分散(高分散)される。
こうした混合(ミキシング)のノウハウが、新たなタイヤの性能向上に直結している、と横浜ゴムの担当者は語る。「同じ材料を同じ分量使っていても、混合する時間、温度のコントロールによって、出来上がったゴムに差が出ます」
ゴムを混合すると、発熱して温度が上昇する。その温度を冷却しながら適切な値に制御、十分に反応が進むまで混合するという、高度な混合制御技術が必要になってくるそうだ。タイヤメーカーそれぞれが、混合技術を研究し、日々開発していることが、最近ウエットグリップが良くエコ性能も高いタイヤが増えてきた理由なのだ。
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シリカを配合したゴムは、転がり抵抗が少なくウエットグリップが向上するため、タイヤにとってメリットばかりのように感じてしまうが、じつは弱点もある。
それは、シリカが多く配合されたトレッドゴムの導電性が低いということだ。ブラックカーボンのみ配合のタイヤの場合は、タイヤから地面に電気を放出できたが、シリカ配合ゴムの場合、電気を通しにくいことから、クルマにたまった静電気を逃がすのが難しいという欠点がある。
静電気を逃せなくなると、電磁波ノイズによりクルマの電子機器への悪影響が出る。ラジオにノイズが入るだけでなく、各センサー類にも影響が出る可能性もある。さらに可燃物への引火なども考えられる。
その対策として、シリカを配合したタイヤのトレッド部には、電気を地面に逃がすアース(=導電スリット)を作っているため、生産性が悪くなり、製造コストもかかってしまうという。
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