「ディーゼル推し」は過去のもの? 欧州メーカーがいま電動化にチカラを入れる理由
米テスラ社のモデルをはじめ、BMW「i3」やメルセデス・ベンツ「EQC」などのピュアEV(バッテリーEV=BEV)も日本にやってきている。また欧州メーカー発のプラグインハイブリッド(PHEV)も続々と上陸している状況だ。つい数年前まではクリーンディーゼルばかりが目立っていたのに、ここに来ての電動化モデルが増加した理由はどういうことなのだろうか。
ハイブリッドやEV技術で先行した日本メーカー
21世紀を前に、自動車を取り巻く環境は大きく変化した。
その発端となったのは、1997年に採択された京都議定書である。環境保全のために、先進国を中心に地球温暖化の元凶となるCO2(二酸化炭素)の排出量規制を強化しようと動き出したのだ。
クルマのCO2排出量を減らすには、燃費を向上させるのが手っ取り早い。ヨーロッパが選んだのは、ディーゼルエンジンの改良と、そのダウンサイジングである。日本はガソリンエンジンの改良に加え、エンジンにモーターを加えたハイブリッドシステムを導入する道を選んだ。
1999年、東京都は「ディーゼルエンジンNO!」を突きつけている。日本の道路事情ではNOx(窒素酸化物)やススに代表されるPM(微粒子状物質)など、大気汚染物質の排出量はガソリンエンジンのほうがはるかに少ない。CO2削減は、ガソリンエンジンの燃費向上と電動化で達成しようと考えたのだ。
欧米と違い、日本は人口密度が高く、人口100万人を超える都市が全国にたくさんある。またヨーロッパと違い、市街地を中心とした短距離移動の使いかたが多い。だからハイブリッド車の登場からわかるように、早い時期に電動化に舵を切った。
ハイブリッドシステムも多彩だ。その筆頭が、世界で初めてハイブリッド車を量産に移したトヨタの「THS」で、エンジンとモーター、変速機とデフが動力分配機構で連結され、両方の動力源を走行に使うことができる。発電機を積んでいるからモーター走行のときに発電をおこなったり、エネルギー回生が可能だ。
シンプルな構造で、生産性も高いのがマイルドハイブリッドである。エンジンにモーター機能付きの発電機を搭載し、発進や加速時にエンジンをアシストする。スズキや欧米でも採用するクルマが多い。
日本は大容量バッテリーを搭載したEV(ピュアEV、BEV)の開発にも早い時期から乗り出し、三菱は時代に先駆けて2009年に「i-MiEV」を、日産も2010年から「リーフ」を市販に移している。
これに対しヨーロッパは、積極的にディーゼル戦略を推し進めた。
ディーゼルは低回転から分厚いトルクを発生するし、ターボなどの過給機との相性もいい。ガソリンエンジンモデルに比べると燃費も優れている。
とても魅力的だが、排出ガスはきれいではなかった。そこで排出ガス規制をユーロ4、ユーロ5、ユーロ6と段階的に強化している。また、ダーティな旧世代のディーゼル車は都市部への乗り入れを禁止し、買い替えを奨励した。
だが、排出ガス規制と燃費規制が強化されると、当然、生産コストは一気にアップする。
最新のユーロ6規制は、EGR(排気再循環装置)と尿素SCR(選択触媒還元)がないと乗り切ることは難しい。ヨーロッパだけでなく、世界中が規制を厳しくすると、対策費用がかさみ、自動車メーカーは利益率が大きく減ってしまう。
だから、フォルクスワーゲンなどは耐え切れず、排出ガス偽装という不正手段に出てしまったのである。当然、ヨーロッパの自動車メーカーは、クリーンディーゼルを中心とした販売戦略の見直しを迫られることになった。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。