「ディーゼル推し」は過去のもの? 欧州メーカーがいま電動化にチカラを入れる理由
「アフター・コロナ」時代にクルマは大きく変貌していく
2021年以降は、さらに大幅にC02排出量規制を強化するし、世界一の自動車マーケットに成長した中国も、大気汚染を減らすために排出ガス規制を大幅に強化する。これから先は電動化なしにクルマは生き残ることができない。
そこで大型車やSUVは、燃費改善効果が大きいマイルドハイブリッドを採用するようになった。燃費の悪化を防ぐだけでなく、モーターアシストによってパンチのある走りを楽しめる。だから12ボルト電源に加え、電力効率に優れた48ボルト電源を採用するハイブリッド車が増えてきた。
また、プラグインハイブリッド(PHEV)と呼ばれる発展型のハイブリッド車もメジャーな存在になりつつある。これは大容量バッテリーへの外部充電機能を加えることによって電気だけで走れる距離を大幅に延ばしたハイブリッド車だ。
日本では先代「プリウス」が最初にPHEVを仲間に加え、三菱「アウトランダーPHEV」の登場によって知名度が高まっている。ちなみにBMW「i3」に設定されているレンジエクステンダーは、基本はモーター走行だが、発電用のエンジンを追加してEVの弱点だった航続距離を延ばすことに成功した。
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2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、どの自動車メーカーも販売台数を大きく減らしている。そして新型コロナウイルスの蔓延により、自動車業界の風向きも変わってきたのだ。
2020年4月の欧州での販売台数データを見ると、欧州では前年同月比マイナス78%の29万2600台(2019年4月は134万台)という記録的な減少に陥った。4月は新型コロナ禍により欧州各国でロックダウンがおこなわれたため、この数字は予測できた落ち込みではあるが、それでも自動車産業全体が落ち込んだわけではない。
BEVは1万6700台と、前年同月比マイナス16%と抑えられ、PHEVには1万4000台と、前年同月比プラス7%になっている。ハイブリッド車の数字を合わせると5万400台となり、電動化モデルは市場全体の17%までを占めるまでになった。
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地球温暖化の原因となる温室効果ガスの発生を止めるために、電動化は必至だ。もちろん、その先にはBEVがある。
その証拠に、欧州だけでなく世界中で電動化モデルの販売は好調だ。販売トップのテスラは台数を大きく伸ばしている。
早い時期から電動化モデルに注目していたBMWも15%もの伸びを見せ、中国のBYDに一気に迫った。アウディとフォルクスワーゲンも2020年からBEV戦略に本腰を入れ、アメリカ勢のGMやフォード、フィアット・クライスラー(FCA)も追随する。
日本では今なおハイブリッド車が主役だ。リーズナブルな価格で、燃費は良いし、快適性も高いからである。しかも電欠の不安はないし、充電の手間もいらない。
だが今後、排出ガス規制や燃費規制がさらに厳しくなり、税制の見直しなどが図られれば、PHEVやBEVが一気に増えてくるだろう。これからはコネクティングや自動運転なども見据えた『CASE』の時代だ。数年の間に、自動車を取り巻く環境は大きく変わってくる。
当然、モーターとバッテリーの存在感は大きくなるはずだ。遠からずエネルギー効率を高め、容量を増やした進化型バッテリーも登場するだろう。間もなく世界を巻き込んでの本格的なEV時代に突入するのである。
エンジンを持たないEVが主役に躍り出れば、クルマのデザイン改革も始まる。これからの10年、自動車の動向から目が離せない。
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