目的のためなら快適性はどうでもいい!? 走りを極めた車3選
多くのクルマはさまざまなユーザーや用途に対応できるように設計されていますが、なかにはある用途に特化してつくられたクルマが存在。そこで、ストイックなまでに性能を追求したクルマを、用途別に3車種ピックアップして紹介します。
方向性は異なるが性能を極めたクルマを振り返る
現在販売されているクルマのほとんどは、多くのユーザーがさまざまな用途に使うことを前提に設計されています。
一方で、限られた用途や、ある性能に特化して開発されたクルマも存在。そこで、ストイックなまでに性能を追求したクルマを、用途別に3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「インサイト」
1997年に発売された世界初の量産ハイブリッド車のトヨタ「プリウス」は、各メーカーに大きな衝撃を与えました。
そこで、ホンダは1999年、プリウスに対抗するために、世界最高水準の低燃費を目指したハイブリッド専用車「インサイト」を発売。
パワーユニットは、70馬力の新開発1リッター直列3気筒エンジンに13馬力のモーター、ニッケル水素電池を組み合わせた、「ホンダIMA(インテグレーテッド・モーターアシスト)システム」と呼称されるパラレルハイブリッドを採用。
トランスミッションは5速MTとCVTが設定され、燃費はプリウスを上回る量産ガソリン車で当時世界最高の35km/L(10・15モード、MT車)を達成しました。
その実現のために、アルミ製シャシに樹脂とアルミを組み合わせたボディパネルを採用して、乗車定員は2名とし、ほかにも各部材にグラム単位の軽量化を施した結果、車量は820kg(MT車)に抑えられています。
また、リアタイヤをスカートで覆い、空力性能に特化したスポーツカーのようなフォルムによって、Cd値(空気抵抗係数)0.25を達成するなど、すべてが燃費追求のために設計されました。
しかし、インサイトは2名乗車としたことで多くのユーザーからは受け入れられず、2004年のマイナーチェンジで36km/L(10・15モード、MT車)と、さらに燃費が向上しましたが販売の回復にはつながらず、2006年に生産を終了します。
その後、2009年に発売された2代目インサイトはプリウスを意識した5ドアハッチバックに改められましたが、シャシはスチール製となるなど、初代ほどのインパクトはありませんでした。
2018年には、セダンに改められた現行モデルの3代目インサイトが発売されています。
●三菱「ジープ」
国産クロスカントリー4WD車の元祖といえば三菱「ジープ」が挙げられ、悪路走行性をストイックなまでに追求したクルマです。
1952年に三菱自動車の前身である新三菱重工業とアメリカのウイリス・オーバーランド社との間で締結した契約のもと、1953年にはジープ第1号車がノックダウン生産され、1956年からは部品を国産化したジープの生産が本格的に始まります。
ボディタイプはショートボディ、ミドルボディ、ロングボディがあり、ソフトトップとメタルトップが設定されるなど豊富なバリエーションを展開。
基本的なデザインはどのボディも共通で、縦格子のフロントグリルに丸形2灯ヘッドライト、各部が直線基調なフォルムが特徴的です。
シャシはトラックと同じ構造のハシゴ型フレームと、サスペンションは前後板バネのリジッドアクスルを採用したことで、頑丈で高い耐久性を誇りました。
歴代モデルに搭載されたエンジンも多岐にわたり、用途によってガソリンとディーゼルが選べ、手動でトランスファーを切り替えるシンプルなメカニズムのパートタイム4WDシステムが組み合わされています。
軍用車がルーツだったことから装備は必要最低限に留まり、快適装備というとヒーターとラジオくらいでパワーステアリングも装着されておらず、興味本位で買ってみたものの普段使いには厳しく、すぐに売ってしまうユーザーも多かったといいます。
1998年に専用のボディカラー、専用幌生地、防錆強化などを採用した「最終生産記念車」が発売され、国産ジープは長い歴史に幕を閉じました。