Oh!モーレツ~、猛烈ダッシュしそうなピニンファリーナ製コンセプトカーって?

フェラーリのデザインで有名なピニンファリーナが、フィアット・アバルトのレーシングマシンをベースにつくった、公道を走るコンセプトカーは、1960年代から見た未来のスーパーカーの姿だった。

イタリアン・カロッツェリアが、もっともデザインにチャレンジできた時代

 イタリアの名門カロッツェリアたちが百花繚乱のごとく、美しいボディと気鋭のコンセプトでしのぎを削った1960年代から1970年代。

 彼らは市販スポーツカーだけにとどまらず、純粋なコンペティツィオーネをもベース車両としてピックアップし、さらに先鋭的なスタンスを打ち出そうとしていた。

ピニンファリーナが1969年1月にベルギーのブリュッセル・ショーで発表したフィアット・アバルト2000スコルピオーネ
ピニンファリーナが1969年1月にベルギーのブリュッセル・ショーで発表したフィアット・アバルト2000スコルピオーネ

 1969年1月のベルギー、ブリュッセル・ショーにて発表されたフィアット・アバルト「2000スコルピオーネ」もそのひとつである。登場前年にあたる、1968年4月の仏「アンピュ・ヒルクライム」にて鮮烈なデビューウィンを飾ったグループ6プロトタイプマシン、フィアット・アバルト「2000スポルトスパイダー」をベースに、ピニンファリーナが斬新かつ鮮烈極まりないボディを架装したコンセプトスタディである。

 フィアット・アバルト2000スポルトスパイダーは、この時代のグループ6マシンとしては特異なリアエンジン車だった。

 この選択は、元々ポルシェ設計事務所から出向するかたちでアバルト&C社の前身、チシタリア社に入社し、そののちも生涯ポルシェ博士を尊敬していたカルロ・アバルト自身の固執によるものだった。

 その傍らで、長らくアバルトの技術陣を率いていたインジェニェーレ(技師)、マリオ・コルッチは既に定番となりつつあったミドシップを主張。両者の意見は真っ向から対立していたものの、カルロが社主として自分の信念を突き通した結果であった。

 それでもフレームワークに関しては、コルッチ技師は自身の得意とする鋼管スペースフレームを巧みに開発。20mm角と22mm角のクロームモリブデン鋼材を使い分け、FRPの補強材を加えても、わずか47kgのバードケージフレームを作り上げた。

 この純コンペティツィオーネ用のフレームは2000スコルピオーネにも流用された結果、全長3780mm×全幅1780mmに対して、全高は970mmという驚異的な低さ、車両重量はわずか740kgを実現したという。

 一方、リアエンドに配置されたエンジンも、2000スポルトスパイダーと同じもの。1964年にデビューしたレーシングGT「アバルト・シムカ2000」用の直列4気筒DOHC1946cc「ティーポ236」ユニットをもとに、気筒当たり4バルブ化するなどの進化を施した、生粋かつ高度なレーシングエンジンである。

 ただし、スポルトスパイダーがウェーバー58DCO3気化器との組み合わせによって250ps/8700rpmを発生していたのに対して、一応はロードユースも念頭に置いていたスコルピオーネは、キャブレターをウェーバー40DCO3に小径化するなどのディチューンによって、220ps/7600rpmまでダウン。

 それでも、リッターあたり100psを大きく超えるパワーは当時のストラダーレとしては凄まじいもので、スコルピオーネ発表時にリリースされたスペックシートでは、実に270km/hの最高速をマークすると謳われた。

 しかし、この2000スコルピオーネにおける最大のトピックは、やはり鮮烈なボディにあると言わねばなるまい。極端に低いノーズから一直線に立ち上がる、広大なウィンドシールドは、ルーフと一体化されて前方に開いて、事実上のドアの役割も果たす。

 また、このルーフにはリアのエンジンを冷却するサイドラジエーターもデザインに組み入れ、あたかもプリズムのような形状を成す。さらにリアエンド下部にカバーの類は設けられず、この時代のアバルトの象徴でもある巨大なオイルパンともども「ビアルベロ(DOHC)」エンジンは完全にむき出し。アバルト独特の野趣を見事なまでに表現していた。

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