「背の高さ」が人気を左右する!? 低身長の軽自動車がイマイチ売れない理由
販売低迷でも背が低いモデルはお買い得!? 空気抵抗が少なく燃費も◎
背の低い軽自動車は販売が伸びませんが、機能と価格のバランスではスーパーハイトワゴンよりもお買い得です。
とくにミラトコットの「GリミテッドSAIII」グレードは、衝突被害軽減ブレーキのスマートアシストIII、サイド&カーテンエアバッグ、バイアングルLEDヘッドランプ、オートライト、運転席&助手席シートヒーターなどをフルに装着して、価格(消費税込、以下同様)は125万4000円です。同等の安全&快適装備を備えたタントXの149万500円に比べると、約24万円安いです。
また低価格とされるミライースの「GリミテッドSAIII」グレードは、ミラトコットの同グレードに比べてアルミホイールを加えましたが、カーテンエアバッグは装着されません。
ほぼ同水準の装備で、「GリミテッドSAIII」の価格は124万8500円と同程度ですから、内装の質が高い分だけミラトコットが割安と考えられます。
一方、アルトラパンは「S」グレードを133万1000円に設定しました。ディスチャージヘッドランプは標準装着されますが、サイド&カーテンエアバッグやエアコンのオート機能は備わりません。
その代わりマイルドハイブリッドが採用され、JC08モード燃費は35.6km/Lです。ミラトコットの29.8km/Lよりも優れています。
また同じエンジンを搭載するスーパーハイトワゴンのJC08モード燃費は、タントが27.2km/L、スペーシアは28.2km/L(ハイブリッドX)ですから、アルトラパンやミラトコットなら燃料消費量も抑えられます。
背が低いために空気抵抗が少なく、車両重量もスーパーハイトワゴンに比べると約200kg軽い700kg前後ですから、燃料が良いのです。
ボディが軽ければ、加速力にも余裕が生まれます。ノーマルエンジンを搭載するスーパーハイトワゴンは、登り坂でパワー不足を感じることもありますが、ミラトコットやアルトラパンなら不満は生じにくいです。このようにメリットが多いです。
その代わり、ミラトコットやアルトラパンは車内が狭そうですが、実際に乗車すると意外に窮屈ではありません。
身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は、ミラトコットが握りコブシ2つ分、アルトラパンは2つ半に達します。
トヨタ「カローラツーリング」やマツダ「マツダ3」などのミドルサイズカーが握りコブシ1つ半なので、十分な広さでしょう。
ミラトコットやアルトラパンの後席は、座面が短いために座り心地に改善を要しますが、広さとしては4名乗車も十分に可能です。後席にチャイルドシートを装着する使い方にも対応できます。
このように見ると、大きな荷物を積まない限り、実用的にはミラトコットやアルトラパンで十分なユーザーも多いと思われます。
それなのに「次に買うクルマは、ミラトコットやアルトラパンにするか?」と筆者(渡辺陽一郎)が自問自答すると、気分がいまひとつノリません。「スポーティな『アルトワークス』ならアリだけど」などと考えてしまいます。
なぜ食指が動かないのでしょうか。おそらく外観とクルマのイメージだと考えます。または、ミラとかアルトという車名も関係ありそうです。アルトの場合「ワークス」が付くと、スポーティな印象にガラリと変わります。
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今後の軽自動車を面白くするのは、背の低い車種の新しい商品企画かも知れません。かつてのダイハツ「ソニカ」やスズキ「セルボ」といった背の低い軽自動車は成功しませんでしたが、これらの車種が廃止されてから約10年を経過します。走りも含めて背の低い上質なクルマ造りに取り組む余地はあるでしょう。
N-BOX、タント、スペーシアのカスタム(エアロパーツ装着車)を並べると、見分けが付かないほど似ています。機能には特徴がありますが、デザインはパターン化されています。
2020年6月に発売されるダイハツ「タフト」も、スズキ「ハスラー」にソックリです。個性的な軽自動車の登場に期待したいです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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