筑波速攻インプレ! ロータス「エヴォーラGT410スポーツ」は、サーキットで通用する!?
プロレーサーでありテストライダー/ドライバーの丸山浩による、ロータス「エヴォーラGT410スポーツ」のサーキットインプレッションをお届けしよう。「エスプリ」のチューニングにはじまり、「エリーゼ」や「エキシージ」をサーキットで走らせてきた丸山氏が、ロータスのラインナップ中ではやや大柄、スーパーカー的ポジションにあるエヴォーラのハンドリングをどのように評価するのだろうか。
エヴォーラは、本当に街乗りができるロータスなのか?
ロータス「エヴォーラ」が誕生したのは2009年、最初に搭載されたエンジンは自然吸気(NA)だった。そして2011年にスーパーチャージャーを搭載。さらに2015年のモデルチェンジで406psまで引き上げられる一方、車重は過去最大の1395kg(MTモデル)になった。
ところが現行の「410」への進化で、プラス10psとパワーアップしつつ、カーボンルーフなどの採用で一気に75kgもの軽量化を達成した。
ライトウェイトハンドリングというロータスの本懐を守りつつ、更にラグジュアリーさを増したモデルへと進化している。
エンジン始動時は、最初の一発、激しくエキゾーストが吠える。しかし内装が充実しているため、バルブさえ閉じていれば室内は非常に静かで、他のロータスのようにエンジンルームのメカノイズが届いてくることはない。
動き出してまず感じるのは乗り心地の良さ。これは車重の軽さによりサスペンションを固める必要がないからで、見た目とは裏腹な、素のロータス特有の性質でもある。
クラッチの重みこそハイパワーマシンらしさがあるが、シフトは節度感を出しながらも軽々と入っていく。V6のフライホイールに程よい重たさがあり、クラッチミートにも粘りがあって神経質になる必要もない。
アクセルレスポンスもピーキーさはないので、普段の街乗りレベルから取り回しが非常に楽だ。スーパーカーらしさを全面に押し出しながらも、扱いやすさが感じられる優しいセッティングとなっている。買い物すら気負わず乗り出せそうなほどだ。
聞くところによるとエヴォーラはMTの方が売れているらしく、なるほどと納得。低速域からヒール&トゥも狙い通り決められるので、MTの方が積極的にマシンを操っている感覚が楽しめることは間違いない。
●エヴォーラを筑波サーキットで全開インプレッション
さて、いよいよ筑波サーキット・コース2000にコースイン。今回はタイムアタックではなく、十分なマージンを残した上でのハンドリング&パフォーマンスのチェックだ。
まずはSPORTモードから。サーキットで全開にした時のスーパーカーサウンドもさることながら、車体の安定感がとにかく気持ち良い。何より驚かされたのは、足回りのしなやかさだ。
とくにダンロップ下の右コーナー、ダメージのないよう丁寧に右フロントから縁石に乗せてみると、車体は一糸乱れずスッと片足だけで抜いたようにクリアしていく。これぞ前述の通り、軽量化が為せる技だ。
1.3tの車重で攻め込んでいっても、急な沈み込みに対してダンパーで押さえつけることなく、ギャップというギャップをいなしていく。アタック気味にペースを上げていくとさすがに柔らかさを感じる部分もあるが、決して破綻することはない。
筑波でもっとも高速コーナーである最終コーナーに飛び込んでも、フラつくことなく1本の線をトレースするように曲がっていく。これこそがハンドリング・バイ・ロータスの真骨頂、スーパーカーであってもそこは変わらないのだ。
SPORTモードのまま、結構なペースでラップできるのも凄いところだ。トラクションコントロールや横滑り防止が足かせになることもなく、強いていえばABSの作動がちょっと早いくらい。となるとRACEモードでは更にハイレベルな走りも許容できる。
トラクションコントロールをはじめとした電子制御系の介入は最小限となり、コーナーではリアを流し旋回力を引き出す走りも可能。しかし元々の重量バランスが秀逸なので、コーナーリングスピードを上げていかないとそうそうリアが出ていくことはないだろう。
このマシンでアンダーが出てしまうような無茶な走りさえしなければ、ミッドシップシャーシのコーナーリング性能を思う存分楽しむことが可能だ。
* * *
今回の試乗で、エヴォーラは高いスポーツ性を持っていることが分かった。だが、もしサーキットでさらにタイムを詰めていくならばやはり「エキシージ」を選択するべきだ。そして、コーナーリング重視でロータス・ハンドリングを味わい尽くしたいのなら「エリーゼ」がおすすめだ。
では、エヴォーラを選ぶ理由は何かと問われれば、所有した満足感に加え、普段の使い勝手を併せ持ち、サーキットでのポテンシャルも十二分であることだろう。
すべてをこなすオールマイティというのは、あるいはスポーツ性特化と反するキャラクターかもしれないが、エヴォーラは高次元でこれらを両立させているのだ。
ともすれば、エヴォーラでロータスのハンドリングワールドを知ってしまうと、エキシージやエリーゼといった特化型にステップアップ(と言って良いのだろうか?)してドップリとハマっていく、という未来予想図も描くことができる。エヴォーラはスーパーカーでありながらも、ロータスへの入り口を広げる役目すら担っているといえるだろう。
●LOTUS EVORA GT410 SPORT
ロータス・エヴォーラGT410スポーツ
・車両価格(消費税込):1496万円
・全長:4390mm
・全幅:1850mm
・全高:1240mm
・ホイールベース:2575mm
・車両重量:1361kg
・エンジン形式:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
・排気量:3456cc
・エンジン配置:リアミッド
・駆動方式:後輪駆動
・変速機:6速MT
・最高出力:416ps/7000rpm
・最大トルク:420Nm/3500rpm
・0-100km/h:4.2秒
・最高速度:305km/h
・ラゲッジ容量:160リッター
・燃料タンク容量:60リッター
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)ダブルウィッシュボーン式
・ブレーキ:(前)Φ370mm2ピースクロスドリルドベンチレーテッド・ディスク、(後)Φ350mm2ピースクロスドリルドベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)235/35ZR19、(後)285/30ZR20
・ホイール:(前)8.0Jx19、(後)9.5Jx20
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