スゴい個性的!? 今なら爆売れだったモデル5選
オープンなのにSUV!? 奇想天外なモデルの正体とは
●スバル「インプレッサ・グラベルEX」
現在では「フォレスター」や「XV」といったクロスオーバーSUVのヒット車を連発しているスバルですが、1990年代には迷走した時期もありました。
1990年代半ばといえば、トヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」といった、いわゆるライトクロカンが登場してヒットしていた時期。スバルはWRC人気で「レガシィ」や「インプレッサ」がヒットしていましたが、市場に投入するライトクロカンモデルを持っていませんでした。
そこで1995年に発売したのが、「インプレッサ・グラベルEX(エックスと読むが、エクスプレスの表記も)」です。インプレッサワゴンをベースにしており、ロングストローク化したサスペンションで十分なロードクリアランスを確保し、さらにグリルガードと背面スペアタイヤを装着。なんちゃってライトクロカンに仕上げていました。
こうした手法は、大ヒット車だった三菱「RVR」を真似たものですが、こうしたクロスオーバースタイルは当時まだ馴染みのないものでした。
さらにスペアタイヤキャリアを開かないとリアゲートが開けないという不便さや、当時社会問題になりつつあったグリルガードのイメージの悪さなどがあって、販売的には失敗。結局、1300台程度を作ったのみで消えてしまいました。
しかしスバルはこの経験を活かして、やはりインプレッサのシャシーを使ったフォレスターをその2年後に発売。こちらは大ヒットとなり、さらにグラベルEXの遺伝子はXVへと受け継がれていくのです。
●スズキ「X-90」
クロカン4駆の人気に陰りが見え始め、ユーザーの視線がSUVやライトクロカンに移り始めている時期に、突如登場したのがスズキ「X-90」です。
外観からはSUVに当てはまらないものの、X-90は当時ライトクロカンの先駆けとして大人気だった初代の「エスクード」のシャシに、2シーターオープンのボディを載せたクルマでした。
当時のスズキは、軽自動車カテゴリでショートデッキロングノーズの「カプチーノ」というオープン2シーターのモデルを販売。
このカプチーノは、ホンダ「ビート」と並ぶ人気車でしたが、X-90はこのコンセプトをSUVで再現するという意欲作だったのです。
X-90はクーペスタイルに、デタッチャブルトップタイプのTバールーフを採用するなど、当時のSUVとしては非常に画期的なものでした。
しかし、ルーフをトランクルームに入れるとほぼ満杯になり、スペースユーティリティはお世辞にも良いとはいえませんでした。
さらにデフォルメしたファニーなフォルムも仇となり、スマートなスタイリングを好んだ当時のユーザーには受け入れられず、国内外の市場で販売されたものの、結果的にはほとんど出回ることはありませんでした。
生産台数は1500台にも満たないものでしたが、クーペSUVというコンセプトは、その後の海外製SUVに少なからぬ影響を与えているのではないでしょうか。そういう意味では、X-90は生まれてくるのが早すぎたのかもしれません。
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今回は、あまりに先進的すぎて失敗してしまったクルマをご紹介していきました。現在のSUVやクロスオーバーのブームは、当時の迷車があってこそのムーヴメントなのかもしれません。
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。
やきなおし記事ばっかだな