落札価格2億6000万円! フェラーリ「エンツォ」はどんなスーパーカーだったのか?

フェラーリには通常のプロダクションモデルとは別に、スペチアーレモデルがある。その特別なスペチアーレのなかでも、創業者エンツォの名前を冠したモデルが存在する。これほどはないと思えるグッドコンディションの「エンツォ」は、最新のオークションで、どれくらいの落札価格となっているのだろうか。

純粋な自然吸気V12エンジンを搭載した最後のスペチアーレ「エンツォ」は、今後価格が下る要素がない

 2002年6月27日、フェラーリは創業者であるエンツォ・フェラーリの名前を掲げた新型スペチアーレ(スペシャルモデル)の内覧会を、VIPカスタマー向けに開催した。

最後の自然吸気V型12気筒エンジンを搭載したスペチアーレ、フェラーリ「エンツォ」
最後の自然吸気V型12気筒エンジンを搭載したスペチアーレ、フェラーリ「エンツォ」

 フェラーリ「エンツォ」は、1984年に発表された「288GTO」、1987年に創立40周年を記念して誕生した「F40」、1995年に創立50周年を祝うために発表された「F50」と同様に、いずれも限定生産を前提として特別なカスタマーのみに販売が許されたモデルだ。

 またそのスペチアーレの流れは、エンツォ以降は2013年発表の「ラ フェラーリ」、そして2017年に登場したオープン仕様の「ラ フェラーリ・アペルタ」へと続く。

 ちなみにフェラーリ伝統のV型12気筒エンジンをミッドシップするモデルは、現在ではプロダクションモデルのラインナップには存在せず、F50以来のスペチアーレのみが採用するものとなっている。それもまたスペチアーレがフェラーリのなでも特別な、そして容易には手が届かないモデルである理由でもあるのだ。

 実際に生産されたスペチアーレは、チャリティ・オークション用などのために後に生産されたものを除けば、諸説あるものの288GTOが272台、F40が1411台、F50が349台、エンツォが399台、ラ フェラーリは499台、ラ フェラーリ・アペルタは209台という数字が一般的に伝えられている。

 オークション・マーケットでは、当然これらのスペチアーレは、常にビッダー(入札者)からは高い人気を集めている。先日アメリカのフロリダ州で開催された、RMオークションのアメリア・アイランド・オークションに出品された2003年モデルのエンツォ・フェラーリも同様に注目を集めていた。

 今回のオークションに出品されるまでは、15年間にわたって同じオーナーのもと、細心のメンテナンスを受けながら保管され、走行距離はわずかに1700マイル以下(2720km以下)というから、そのコンディションは新車としてデリバリーされた時とほぼ同様と考えても間違いはないだろう。

 唯一オリジナルと異なるのは、Tubi製のエグゾーストシステムを装着していることだが、オリジナルはきちんと保管されており、落札者にはそれも同時に引き渡されることになっている。

F1マシンのイメージを落とし込んだ「エンツォ」は、F1コンストラクターであるフェラーリだからこそできるデザインだ
F1マシンのイメージを落とし込んだ「エンツォ」は、F1コンストラクターであるフェラーリだからこそできるデザインだ

 ここでもう一度、エンツォというスペチアーレのディテールを解説しておこう。創業者の名前をそのまま車名にしたことの驚きは、当時は相当に大きなものだったことは記憶に新しい。それ以上にバリューのある名前は、今後はいくらそれを探しても見つかるはずはないからだ。

 フェラーリが次に見つけたラ フェラーリは、英語に訳せば「ザ・フェラーリ」の意で、これは頂点にある唯一無二のフェラーリを表している。

 399台が生産されたエンツォに搭載されたエンジンは、社内ではティーポ140と呼ばれる6リッターのV型12気筒自然吸気エンジンである。可変吸気コントロール、可変バルブタイミング機構等々のシステムを採用し、最高出力660psを発揮する。

 前作のF50が4.7リッターの排気量から、やはり自然吸気で520psを発揮していたことを考えると、フェラーリのパワー志向は相当に強かったことが伺える。

 さらにF50では、エンジンそのものをカーボン製のセンターモノコックにリジッドマウンド(剛結)したため、走行中の振動やノイズが大きかった。その反省からか、エンツォではカーボン製の軽量で高剛性なモノコックはそのままに、前後にアルミニウム製のサブフレームを接合。エンジン等のドライブトレインはこのサブフレーム上にマウントするレイアウトが実現したため、エンジン自体の軽量化もさらに積極的に進められることになった。

 V12エンジンに組み合わされるトランスミッションは、セミATの6速F1マチック。サスペンションはインボード式のダブルウィッシュボーンで、ブレーキは当時スクーデリア・フェラーリF1チームに最新のシステムを供給していたブレンボ製のCCM(カーボンセラミックディスク)が組み合わされた。タイヤはブリヂストン製のポテンザRE050スクーデリアが唯一の装着ブランドとなる。

 F1マシンのイメージを強調してデザインされたボディはピニンファリーナによるもの。とりわけその関係が強く表れているのはノーズセクションの造形だろう。エアロダイナミクスはもちろん前作のF50をはるかに上回るものだが、ボディのアンダーフロアと路面との間で構成されるヴェンチュリートンネルでダウンフォースを得るグランドエフェクトカーの理論を継承しているのは変わらない。

 350km/hとされる最高速度は、この優秀なエアロダイナミクスがあればこそ実現されたデータなのだ。インテリアはかなり現代的な雰囲気となり、ステアリングホイール上にスイッチ類が統合され、機能性がさらに高められているのも見逃せないところだ。

 注目のアメリア・アイランド・オークションでの、2003年モデルのエンツォの落札価格は、278万2500ドル(約2億6562万7500円)だった。ちなみにフェラーリでそれに続いたのは、1963年式の250GTベルリネッタ・ルッソの160万ドル(約1億7120万円)。フェラーリのスペチアーレには、オークション・マーケットではまだまだ絶大なバリューがあるようだ。

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1件のコメント

  1. F40の生産台数は僕の記憶では1311台と記憶しています。evidenceとしてWikipediaを紐解くと同じく1311台と記載されています。一般ど素人でも知っている数字を訂正無しで記載しているのは読者を愚弄しているのでしょうか?

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