アメリカを代表する高級車ブランド「キャデラック」 なぜその名の由来はフランス人なのか【ブランド考察】

アメリカが誇る高級車ブランドが「キャデラック」だ。日本でもXT6/XT5、エスカレードなどのSUV系、CTS/CT6のセダン系が展開されているが、キャデラックとはどのような歴史を持つブランドなのか。

自動車の技術とデザインを革新し続けたキャデラック

 アメリカのビッグスリーで最大の規模を誇るゼネラルモーターズ(以下「GM」)の中でも最高級レンジに位置づけられる「キャデラック」は、もちろん今でも世界的な高級車ブランドであることに変わりはないが、往年のキャデラックはいま想像するよりもずっと凄かった。どれほど凄かったのかは以下で述べるとおりだ。

 まずはキャデラックの生い立ちには意外なエピソードがいくつもあることを紹介したい。

1953年製キャデラック「エルドラドコンバーチブル」
1953年製キャデラック「エルドラドコンバーチブル」

 そもそもキャデラックという名称からして、アメリカを象徴する高級車ブランドながら、実はフランス人の名前に由来する。かつてデトロイトを開拓したフランスの貴族の名前であり、印象的なエンブレムも同氏の家紋をモチーフとしたものだ。

 さらに、アメリカを代表する高級車ブランドの双璧であるもう一方の「リンカーン」とキャデラックは、実はヘンリー・リーランドという同一人物が立ち上げたものだ。しかもキャデラックの起源には、実はGMではなくフォードが深く関わっている。
 
 1899年、のちにフォード・モーターを興し「自動車王」と呼ばれるヘンリー・フォードも関わり、氏の名を冠した会社が設立されたものの、事情により会社を去り、1902年に機械メーカーの工場長だったヘンリー・リーランドが後任に就いた。そして1902年一号車を完成し、翌年より本格的に自動車の生産をはじめた。これがキャデラックのはじまりだ。

 その後、1909年にGMの設立者であるウィリアム・C・デュラントに請われてGMの一員となり、最高級レンジを担うことに。これにより現在までキャデラックはGMの頂点に位置づけられるはこびとなる。
 
 ところがリーランドは、第一次世界大戦時に政府からの要請で航空エンジンの生産をしようとしたところ反対されたGMのデュラントと袂を分かち、1917年に自身でエンジン製造を目的にリンカーン社を設立。これがのちにフォードに傘下に収まり、キャデラックのライバルとなる高級車を生産するようになったわけだ。
 
 ちなみにリーランドはブランドに自身の名前をつけることを好まず、キャデラックが件のフランス人なら、リンカーンはリーランドが敬愛していたという第16代アメリカ大統領のエイブラハム・リンカーンに由来する。

 そんなキャデラックは、先進性においても傑出した存在だった。
 
 リーランド在籍時には、アメリカ車としていちはやく1910年にクローズドボディを標準装備として導入したほか、とりわけ1912年のセルフスターターは画期的な発明として知られる。以降も1915年には量産V8水冷エンジンや照射角度を調整可能なヘッドライトを実用化するなどした。

 リーランドが離れてからも、シンクロメッシュ サイレントシフト トランスミッション(1928年)、安全ガラスの全車標準装備化(1929年)、世界初のV16エンジンの市販化(1930年)、ダブルウィッシュボーン式前輪独立懸架(1933年)、オートマチックトランスミッション(1940年)、パワーステアリング(1951年)、パワーブレーキ(1954年)、クルーズコントロール(1958年)、サーモスタット式冷暖房システム(1964年)などの技術を矢継ぎ早に世に送り出した。現代の乗用車に搭載される技術の多くが、じつはキャデラックが生み出したものなのだ。

 デザインにおいてもキャデラックは際立っていた。好敵手だったリンカーンが当初はデザインにおいては評価が低かったのとは好対照だ。
 
なかでも1948年に導入した戦闘機をモチーフとするテールフィンは、ほどなく世界的な流行を見せるほどの影響を与えた。その他、自動車業界初の曲面ガラスやピラーレスハードトップの採用、1950年代からしばらく続いた、「イヤーモデル」と呼ぶ意匠変更や改良を毎年のように行なったのもキャデラックが先鞭をつけた。

1959年製キャデラック「エルドラド」のテールフィン
1959年製キャデラック「エルドラド」のテールフィン

 こうして自動車業界をリードしつづけてきたキャデラックは、アメリカ大統領の専用車として圧倒的に多く採用されたのをはじめ、多くの国々において王侯貴族や政府関係者、富裕層などに愛用されてきた。世界中の大富豪やセレブリティ、スーパースターらが愛用し、併せて多くのハリウッド映画にも登場したことで、アメリカ文化を象徴するアイコンとして、まさしく世界の頂点に位置する超高級車ブランドの一角をなしていた。
 
いまでいうとロールスロイスやメルセデスのマイバッハと肩を並べるというニュアンスであり、当時のイメージからすると、現在もっとも高価なエスカレードでも1300万円台からというのは信じられないような話なのだ。

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