ライバル比較! ルノー「カングー」のオーナーから見たシトロエン「ベルランゴ」の○と×とは
最新運転支援システム(ADAS)てんこ盛りのベルランゴ
安全装備:最新のモデルらしくベルランゴの圧勝
日本初上陸となったベルランゴは、欧州では1996年に初代が登場した歴史あるモデル。じつは初代カングーの欧州デビューは1997年だから、ベルランゴのほうが早かったとシトロエンの広報氏は主張している。今回日本に上陸したベルランゴは、2018年2月に欧州で発表された3代目モデルだ。
最新モデルだけあって、ベルランゴの安全装備はてんこ盛りだ。アクティブセーフティブレーキ、アクティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、ブラインドスポットモニター、インテリジェントハイビーム、パークアシスト、フロント/バック/サイドソナーなどなど、先進安全支援装備が標準で装着されている。
アクティブクルーズコントロールはボルボやメルセデス・ベンツ、スバルの各モデルほど滑らかではないとか、レーンキープアシストももう少し違和感なく作動してほしいとか、たしかに細かい部分に言いたいことはあるが、ちょっと前のラテン車では考えられない安全機能を標準装備したことは、フランス車好きにとって嬉しいところだろう。
一方のカングーというと、ADAS(先進運転支援システム)機能は付いていない。現行カングーは2代目で2007年に欧州デビュー、2009年に日本上陸したモデルで、すでに10年選手。2020年の今年、3代目ニューモデルが登場する予定というタイミングだから、ここはやはり分が悪い。
走り:ベルランゴの熟成に期待
ベルランゴはEMP2と呼ばれる最新のプラットフォームを採用。トルクのあるディーゼルエンジンと相まって元気に走る。高速走行ではしなやかに、まっすぐ走っていく。これほど背が高いのに、横風に対しても安定している。遮音性の高さも魅力で、ガサツなところはない。
一般道では、基本的にコンフォート性重視の印象。ただし路面によっては突き上げ感があるし、フワフワとボディ振動の収まりの悪いときもあった。またハンドル中立付近の無感領域が大きめで、ちょっと応答が鈍い感じ。プラットフォームもボディもサスペンションも素性が良さそうなので、ここらへんはさらなる熟成に期待だ。
対するカングーは、ああ見えてじつは「ハンドリングマシン」といえるほどの走りの良さを持っている。
もちろんエンジンや風切り音などのノイズは室内に大きめに入ってくるし、ボディ剛性感もいまとなっては古さを感じてしまう。そういったネガはありながも、正確なハンドリングと追い込んでいってからのロール感、しなやかに動く足、それでいてどこまでも失わない接地感など、完成形と言い切れるほど走りは熟成されている。
内装その他:商用車ベースとは思えないベルランゴの内装
ベルランゴのインテリアは、スキのなさが魅力だ。
細かく見ていけばダッシュボードがプラスチッキーだったりする部分もあるが、バイワイヤのダイアル式シフトセレクターのデザインも使いやすさと特別感を両立しているし、各所に散りばめられた収納スペースも実用性とワクワク感がある。
さらに「デビューエディション」にはMODUTOPと呼ばれるマルチパノラミックルーフが標準で装備される。これが明るくて長く乗っても飽きない室内空間を演出している。またリアシートは3席独立して分割可倒が可能だ。
バックドアは跳ね上げ式。ボディサイズが大きいため必然的にバックドアが大きくなるが、ガラスハッチだけでも単独で開くので、使い勝手は良い。
カングーのインテリア質感は、やはり新しいベルランゴに負けてしまう。ここらへんは、今年登場予定の3代目になる新型に期待したいところだ。後席は60:40の分割可倒式になる。
バックドアは観音開きになる。先代カングーだと観音開きと跳ね上げ式があったのだが、日本に入ってくる現行型カングーは観音開きのみ。ここは好みが分かれるだろう。
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車両価格は、ベルランゴ「デビューエディション」の325万円(税込、以下同)に対し、カングー「ZEN」は6速MTで254万6000円、EDCで264万7000円。2ペダルで比較すると、その差は60万3000円となる。
60万円の差は大きい。大きいが、ほぼほぼフルで先進安全支援装備が付くベルランゴの商品力も高い。対するカングーの魅力は、なんといっても「素」の良さだろう。
現行カングーとベルランゴのどちらを選ぶのか、ということももちろん興味深いが、ADASをフル搭載してデビューする新型カングーがどれくらいの価格で日本で登場するのか、といったところにも気になってくる。
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