世界中で好調なフレンチスポーツ「アルピーヌ」 どんな歴史と物語がある?【ブランド考察】

メーカーにとってスポーツ系サブブランドは重要な時代

 フランス北部のノルマンディ地方の海岸に面したディエップという町は「アルピーヌの聖地」といわれる。ジャン・レデレが最初にアルピーヌをつくり始めた場所なのだが、いまでもルノーR.S.などのスポーツモデルは、ルノーのディエップ工場で製造されている縁のある土地だ。

アルピーヌ新型「A110」(左)と先代「A110」(右)
アルピーヌ新型「A110」(左)と先代「A110」(右)

 ルノー「メガーヌR.S.」シリーズなども、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェでのFF最速タイムを誇るなど、サーキットでの走りにこだわるのはアルピーヌのDNAが生きている証拠だ。これからもアルピーヌというルノーの走りを意識させるスポーツブランドは生き延びていくはずだ。

 それは他社を見てもわかる。いまはスポーツブランドが人気だからだ。各社とも走る楽しさを味わえるモデルが必要なのだ。BMWでいうと「M」モデルがあり、「アルピナ」もある。

 MモデルはBMWの100%子会社のBMW M社がプロデュースして製造されるモデルで、サーキットを走るマシンで一般道も走れるというコンセプトでつくられている。Mモデルほど本格的でなくても、もう少しお手軽なスポーティモデルが欲しいという層に通常のBMWブランドとMモデルの中間のMパフォーマンスモデルも用意されている。

 アルピナは、BMWとは資本関係のない「アルピナブルカルトボーフェンジーペン社」が製造している。

 そもそもは市販のBMWのエンジンをチューニングしていたが、それが好評でBMWも認めて保証の対象にもなった。ベースはあくまでもBMW車であるが、エンジンだけでなくエクステリア、インテリア、シート、サスペンション、ホイール、タイヤ、ボディカラーまでアルピナスペシャルで仕上げている。

 1983年にはドイツの担当省から自動車メーカーとして認められた。

 いまでは開発段階からBMWと情報交換しながら研究開発しているので、BMWがデビューしてからタイムラグなくアルピナも同じボディのモデルが登場できるようになっている。

 アルピナはスポーティなラグジュアリーサルーンを目指している。エンジンパワーを比べるとMモデルに近いからライバル車かと思われがちだが、じつは乗り心地の良さ、静かさなどの快適性が優先されている。

 ただし、いざとなったらMモデルに引けを取らない速さで走ることもできるのだ。カタログ上の最高速はいつもアルピナが上だ。

 アルピナのエンジンは1台ずつ1人のマイスターが責任を持って組み上げる。シャシーナンバーかエンジンナンバーがわかれば組み立てたマイスターの名前もわかる。アルピナはこんなエクスクルーシブな造り方をしているため、年間生産台数は1700台程度に留まっている。そこが魅力のひとつになっている。

 メルセデスも「AMG」というスポーツモデルラインを用意している。このAMGもそもそもは別の会社だった。

 ダイムラーベンツのエンジン開発をしていた2人のエンジニアが、レース部門から撤退することになったため退職してAMGを立ち上げた。アウフレヒト(A)、メルヒャー(M)、それとアウフレヒトの故郷であるグロース・アスパッハ(G)の頭文字をとってAMGと名付けた。

 クオリティの高い仕事をするのは、そもそもダイムラーベンツの社員だからかもしれない。また世の中のスポーツ指向の需要もありダイムラーの参加に入った。カタログを見ると上級グレードにAMGが載っている。最近はメルセデス・ベンツのAMGでなく、メルセデスAMGと、呼び方も変わってきた。

 メインブランドをしっかり構築しておき、このようなスポーツ系のサブブランドを設けるのは最近のマーケティングの必須条件になっている。

 日本でもSUBARUは「STI」、日産は「NISMO」、トヨタは「GR」など、メーカーがスポーツ系のサブブランドをアピールしている。

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