ポルシェ911のベストバイは「911カレラS」でキマリ!?

スポーツカーの代名詞ともいえるポルシェ「911」の最新モデル「911カレラS」を、スーパーカー大王の異名を持つ山崎元裕が試乗。

素の良さがもっとも際立つ「911カレラS」

 伝統のスポーツカーであり、またスポーツカーの象徴的存在といえば、まず多くの人がイメージするのは、ドイツのポルシェが1964年から生産を続ける「911」ではないだろうか。

 もちろんこの間、911は常に進化を続けており、今回試乗した最新の911(タイプ992)は初代から数えて第8世代にあたる。ただし、その変わらぬボディシルエットは、初代モデルからコンセプトを受け継いでいる証明ともいえるだろう。

初代から数えて8世代目にあたる992型911
初代から数えて8世代目にあたる992型911

 エンジンをスタートする前に、まずは簡単に今回試乗した「911カレラS」の特徴やスペックを解説しよう。ポルシェ911のモデルラインナップは常に規則的で、第3世代となるタイプ964型以降は、駆動方式にRWDとAWDの両方を設定するほか、搭載されるエンジンも自然吸気とターボ付きの水平対向6気筒をラインナップする。

 ボディはスタンダードとなるクーペ(こちらは自然吸気とターボで、そのディテールに差別化が図られていた)のほかにオープンのカブリオレやタルガを設定。さらに高性能でサーキット走行にフォーカスした911を望むカスタマーのためには、エンジンが水冷式となったタイプ996以降、GT3やGT2といったスパルタンなモデルも誕生している。

 992型911も、もちろんこれまでのモデルと大きく変わらずに、そのモデルラインナップを充実させていく計画だと思われるが、今回ドライブしたのは「カレラS」である。

 これまでカレラには自然吸気エンジンが搭載されるのが常だったが、タイプ991型からはカレラにもツインターボが組み合わせられることになった。もちろんさらに高性能を誇る最新の「ターボ」系のモデルも、近い将来誕生することは間違いのないところだろう。

 2981ccの排気量を持つ、この水平対向6気筒ツインターボエンジンが発揮する最高出量&最大トルクは、450ps&530Nm。これにさらにアップデートされた8速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)とPTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)によって、常時最適なトルクを前後輪へと分配する。

 タイプ992のエクステリアは、歴代911のシルエットを受け継ぐものだが、もちろんそのディテールには新しさを多く見つけることができる。4灯式のデイライトを特徴とするヘッドライトや、この992型からカレラとカレラ4(Sも同様)で完全に共通化されることになったリアバンパーやテールライトのデザインはその代表的な例。

水平基調のラインを採用することで、初代911のイメージを再現したコクピット
水平基調のラインを採用することで、初代911のイメージを再現したコクピット

 一方インテリアへと目を向ければ、水平基調のラインを採用することで、タイプ901、すなわち初代911のイメージを再現したというフロントのダッシュボードや、それとは対照的に最新のバーチャルコックピットやディスプレイスイッチを採用することで機能性を大幅に高めたことなど、最新世代のモデルとしての魅力が一瞬で伝わってくる。

 メーターパネルはセンターにレイアウトされるタコメーターのみがメカニカル式。それは結果よりも経過が大切だという、スポーツカーに対するポルシェの主張が伝わってくるかのようなデザインである。

 450ps&530Nmのスペックを誇るエンジンは、さすがに日本のオンロードでは、それをフルに使い切るだけの環境を探すのは難しいだろう。リアに搭載されるエンジンは、排気量が不変であったため先代からのキャリーオーバーかとも考えられるが、実際には吸排気システムやインタークーラー、ターボチャージャーなど、さまざまなパートをリファインし、先代の991型カレラSと比較して30ps&30Nmのエクストラを得ている。

 それをもっとも強く感じるのは、やはりアイドリングからレブリミットに至るまでのスムーズさと、高速域での驚くほどにパワフルな感覚だ。ターボ付きエンジンであることをまったく意識させない、自然なトルクの上乗せ感も、このエンジンの大きな特長といえるだろう。

 アクセルレスポンスも素晴らしく、細かなアクセルの動きにも、エンジンは瞬時に、そして正確な反応に終始する。さらにワインディングロードでの魅力を大きくしているのが、正確無比の一言に尽きるステアリングと、こちらも絶対的な信頼性を持つことができるブレーキ。コーナリングでの動きは、ほぼ完璧なものと評価してもよいのではないだろうか。

スポーツクロノパッケージを装着すると、ローンチコントロール、レーシングシフトプログラム、スポーツレスポンスの3つの追加機能が備わる
スポーツクロノパッケージを装着すると、ローンチコントロール、レーシングシフトプログラム、スポーツレスポンスの3つの追加機能が備わる

 そして試乗車に装着されていた、さまざまなオプション装備も、走りや実用性の向上に大きく貢献している。まず紹介しなければならないのは、ポルシェのカスタマーにはお馴染みの、スポーツクロノパッケージだ。これを選択すると、ステアリングホイール上にダイヤル式のスイッチが備わり、ドライブモードを「スタンダード」から「ウエット」、「スポーツ」、「スポーツ・プラス」などへと変更することができる。

 スポーツでもその乗り心地には十分な節度があり、またコーナーでの動きにはさらなる安定感が生まれるので、走りを楽しむにはこのモードが最適な選択かもしれない。同様にオプションで、ADAS(先進安全運転支援システム)を装備することができるのも嬉しいところ。ポルシェ911は優秀なスポーツカーであると同時に、GT(グランドツーリング)でもあるので、走行中の負担を軽減する装備はカスタマーには歓迎すべきところだろう。

 新しい時代を迎えたポルシェ伝統の作、911。これからますます拡大されていくラインナップはどれも、魅力的なものであることは、間違いないだろう。

50年以上にわたって魅了し続けるポルシェ911のフライラインと呼ばれるシルエット
50年以上にわたって魅了し続けるポルシェ911のフライラインと呼ばれるシルエット

●ポルシェ911カレラS
・車両価格(消費税込):1696万8519円
・全長:4519mm
・全幅:1852mm
・全高:1300mm
・ホイールベース:2450mm
・車両重量:1515kg
・エンジン形式:水平対向6気筒DOHCターボ
・排気量:2981cc
・エンジン配置:リア縦置き
・駆動方式:後輪駆動
・変速機:8速AT
・最高出力:450馬力/6500rpm
・最大トルク:530Nm/2300-5000rpm
・0-100km/h:3.7秒
・最高速度:308km/h
・ラゲッジ容量:132リッター
・燃料タンク容量:64リッター
・サスペンション:(前)マクファーソンストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)6ピストンアルミニウム製モノブロックキャリパー/Φ350mmディスク、(後)4ピストン式アルミニウム製モノブロックキャリパー/Φ350mmディスク
・タイヤ:(前)245/35ZR20、(後)305/30ZR21
・ホイール:(前)8.5Jx20、(後)11.5Jx21

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