なぜボンネットに穴がある? かつては「ターボ車の証」だった理由とは
巨大なボンネットダクトは競技のために必要だった?
ダクトのあるボンネットは、ターボ車や、エンジンルームの熱を逃がすために有効ではあるものの、普通のボンネットに比べて部品点数が多くなり、自動車メーカーの製造コストも上がります。
ある意味「豪華な装備」ともいえるダクトですが、かつてターボを装備したスポーツカーには、必ずとっていいほどボンネットにダクトが装着されていた時代がありました。
1993年から1999年に発売されたトヨタ「セリカ GT-FOUR」や、1992年から2014年まで発売されていた「ランサーエボリューション」シリーズなどは、とくに大きなダクトを装着しています。
その理由について、モータースポーツに参加したこともある中古車販売店のスタッフは、以下のように話します。
「1980年から1990年代は、市販車をベースにしたモータースポーツであるWRC(世界ラリー選手権)が人気でした。そこにエントリーするクルマたちは、改造範囲の狭い『グループA』というカテゴリーであるため、市販車の外観を大きく変更できません。そのため、市販車の状態で大きなダクトを付ける必要があったのではないでしょうか。
競技用のクルマは常にエンジンに負荷がかかっているため、エンジンルームは非常に高い温度の状態になります。熱がこもらないようにするために、ボンネットのダクトは非常に効果的です。
ただ、ボンネットのダクトは雨水の入口にもなるため、エンジン部品に錆が発生する原因にもなります。かつてはその対策が十分ではなく、トラブルに至る車種も少なくありませんでした。
例えば、ランサーエボリューションでは、ダクトの真下にエンジンやターボチャージャーがあるため、雨水が原因でボルトが固着するといった症状が起こることもあり、中古車を購入する際は注意が必要です」
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なお、近年のスポーツカーでは雨水対策もされており、前出のRC-Fでは、ボンネットから入った雨水がエンジンに落ちてしまわないように、雨水が抜けていく専用の経路も設置されています。
インタークーラーの冷却というターボ車ならではの事情や、エンジンルームの熱を逃がすなど、ボンネットのダクトは車種に応じたさまざまな理由によって装着されています。
また、近年は「競技のために作られた市販車」として、トヨタから「GRヤリス」が登場していますが、ターボ車でありながらボンネットにダクトがないことを考えると、ダクトは必ずしも「ターボ車の証」とはいえない時代なのかもしれません。
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