SVの称号を冠した「アヴェンタドールLP750-4スーパー・ヴェローチェ」の役割とはなんだったのか

時代とともにかわる「SV」の意義

 6.5リッターV型12気筒エンジンの最高出力は、車名がアピールした通り、750馬力へと引き上げられた。のみならず、より高回転まで回るようになったのがポイントだ。同時に50kgのダイエットにも成功していたから、パワーウェイトレシオはアヴェンタドール開発時の、“そもそもの”目標であった2に近似到達する。最大トルクはノーマルと同じ値ながら、高回転域でのトルク落ちがなだらかになった。

リアフェンダーの「SV」の文字も大きさや位置を選ぶことができ、また、ステッカーではなく実際にペイントすることもできた
リアフェンダーの「SV」の文字も大きさや位置を選ぶことができ、また、ステッカーではなく実際にペイントすることもできた

 要するに、SV用のL539ユニットは、いっそう高回転型のエンジンへと進化したというわけだ。これは、アヴェンタドール登場前に、当時のCEOであるステファン・ヴィンケルマンが、次世代フラッグシップモデルについて語った意味深なフレーズの、正確な実現でもあった。

「次のV12モデルは、自然吸気で、驚くべきパワーウェイトレシオを誇る」

 最後に残った3つめのポイントは、実をいうと、エンジンパワーやスタイリングよりも、乗り手を大いに喜ばせてくれる内容のものだった。

 それは、MRS(マグネト・レオロジカル・サスペンション)とLDS(ランボルギーニ・ダイレクト・ステアリング)で、いずれも、その前に登場したウラカンに設定された装備である。実をいうと、アヴェンタドールSVのハンドリングが劇的に進化した理由を、この2つの新たな機能とエアロダイナミクス強化策に求めることができると思う。パワーアップと軽量化よりも、それは効いている。

アグレッシブなエアロスタイルを採用
アグレッシブなエアロスタイルを採用

 ここまで読んで、事情通はハタと膝を打ったのではないか? SVの真の意味を悟って。

 SVはフラッグシップの絶え間なき進化のための試金石、つまり、アヴェンタドールSへと発展するために必要不可欠な存在であった。そのことは、SVのインプレッションを振り返ってみてもよく分かる。

「乗り心地がいい。前アシがとても軽く、いっそうシャープ。接地感はしっかり。突っ張って硬く横滑りするようなフィールがほとんどない。エンジンフィールは変わらないが高回転域では明らかにパワフル。ISRミッションの変速ショックも嫌みのないレベルに。変速時間そのものは相当に短くなった。ダイレクト感もきっちり残す。パワートレインやシャシー、電子制御が、かなり熟成した」

 どうだろう? この記述はSV初試乗時のときのものだが、そのままSにも使えそうじゃないか! ランボルギーニにおける“SV”というネーミングの存在理由も、時代とともに変わってきた頭文字の意味合いと同様に、アヴェンタドールにおいて違うものになったのかもしれない。

 ミウラの最終形から、ディアブロのスタンダードモデル、ムルシエラゴでは再び最終発展形となり、アヴェンタドールでは後期型プロトタイプとなった。同じタイミングで、ランボルギーニが、その名前から馬力を表す数字を取り去ったという事実もまた、意味深だ。煩雑な名前を避け、他メーカーのイメージと被らない数字を探す労力から解放され、近い将来のダウンサイジングや次世代ユニット化にも対応する、という他に、数字だけに斯界のヒエラルキーを求める風潮に、釘を刺すべく、史上最強のマシンをセットアッパーに使った、と、いえなくもないのである。

※ ※ ※

Lamborghini Aventador LP750-4 SV
ランボルギーニ・アヴェンタドールLP750-4 スーパー・ヴェローチェ
・生産年:2015年
・年式:2015年
・新車当時価格:5179万2353円
・総排気量:6498cc
・トランスミッション:7速ISR
・最高速度:350km/h
・0-100km/h:2.9秒未満
・全長×全幅×全高:4835×2030×1136mm
・エンジン:V型12気筒DOHC
・最高出力:750ps/8400rpm
・最大トルク:690Nm/5500rpm
・生産台数:600台

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