なぜ「SUV」の定義バラバラ? 日本と世界で異なるSUVトレンドとは
近年、日本のみならず世界的な人気となった「SUV」カテゴリには、明確な定義はありません。世界的に人気があるにも関わらず、なぜ厳密に定まっていないのでしょうか。
SUVの登場で生まれた言葉「多目的スポーツ車」とは
近年の登録車市場において、SUVは人気の高いカテゴリです。2020年1月の登録車年間販売台数ランキングでは前年11月に発売されたトヨタの小型SUV「ライズ」が首位を獲得したほか、2020年にはSUVの新型モデルが多数登場すると予想されており、SUV市場はますます活気づくと思われます。
しかし、人気カテゴリのSUVには、じつは厳密な定義はないといわれています。なぜ、人気カテゴリのクルマであるにも関わらず、定義が曖昧なのでしょうか。
近年になって、クルマ好き以外にも知られる言葉となった「SUV」という名詞は、「Sport Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビーグル)」の略で、日本国内では1990年代になって流通します。
メディアによっては「Sport Utility Vehicle」を “多目的スポーツ車”とした妙な日本語翻訳も見かけますが、これは「Sport」を正しく訳せていないことに起因します。
基本的にSUVの「S:Sport」は、スポーツカーの“スポーツ(スポーティ)”のことではなく、おもに“娯楽”の意味です。
そこから“アウトドアスポーツ(娯楽)のための道具を積載する機能”というのが本来の意味で、「Utility Vehicle」は乗用車に対する商用車/軍用車のような、特定の目的に沿ってつくられたクルマを指します。そのため“多目的”という意味は特段内包していないのです。
しかし、新聞社やテレビ局などを中心にニュース用語として「多目的スポーツ車」と表記する媒体も存在しているので、結果的に一般化した言葉であるといえます。
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日本でSUVという言葉が流通する10年ほど前の1980年代、国内外に存在する四輪駆動車に目を向けると、ラダーフレームにボディや荷台を架装したトラックと同じ構造の堅牢なモデルが中心でした。
国産モデルではトヨタ「ランドクルーザー」(60系-100系)や、三菱「パジェロ」などが存在。また海外モデルではランドローバー「レンジローバー」やメルセデス・ベンツ「Gクラス」などがありましたが、これらの本格的な四輪駆動車はまだSUVとは呼ばれず、そもそも「SUV」という言葉がありませんでした。
その後、これらの本格的な四輪駆動車を一般ユーザーが使いやすくアレンジしたモデルが登場します。この“派生モデル”とも呼ぶべきカテゴリのクルマが「SUV」と呼ばれているのです。
しかし、SUVがあくまでオリジナルに対する“派生モデル”であるという事情からか、セダンやクーペのような明確な定義は存在しません。
ただ、ボディの構造をみると、本格的な四輪駆動車に多いラダーフレーム構造ではなく、ボディとフレームが一体となった一般的な乗用車と同じモノコック構造を持ったクルマがSUVには多いです。
そのため、前出のランドクルーザーやパジェロなどの本格的な四輪駆動車とSUVを区別する人も多く存在します。
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