さよならマークX! 日本中のサラリーマンが憧れた名車が生産終了へ
日本のセダンとして長い歴史を持つ「マークII(マークX)」。その最後の1台が生産されました。かつて日本中のサラリーマンが憧れたセダンとは、どのようなモデルなのでしょうか。
300万円台以下で買えるFRセダンが無くなる
2019年は令和元年ですが、平成の最後の年でもありました。そんな平成の終了を追いかけるように、長い歴史を持つレジェンドモデル「マークX」が姿を消すことになり、2019年の12月23日に製造していたトヨタ自動車元町工場で生産終了のセレモニー「THANK YOU MARK X」がおこなわれました。
すでにマークXは2019年4月に「2019年12月で生産を終了する」ことがアナウンスされ、生産終了を記念する最終モデルとして「250S ファイナルエディション」を設定。予定通りに生産を終え、前身の「マークII」時代も含め51年という長い歴史に幕を下ろしたのです。
セレモニー会場に展示されたのは、まさにこの日に完成検査を終えたばかりのマークXの最後の1台となる生産車。
最終生産車はファイナルエディションではなく、ホワイトに塗られた「250G」でした。
マークIIの生産は累計で約651万8000台、マークXが約36万3500台。合計で約688万1500台。そのうち元町工場での生産台数は約349万5000台といいます(そのほかは関東自動車工業〔現:トヨタ自動車東日本〕東富士工場やトヨタ自動車九州宮田工場で生産)。
マークII時代は9世代に渡り合計36年、マークXにバトンタッチしてからは2世代で15年。長い歴史を持つマークIIとマークXですが、共通しているのはサラリーマンの憧れのセダンだったということでしょう。
開発セレモニーにおいて、自身がマークIIオーナーだった元町工場・工場長の二之夕裕美氏(にのゆひろよし)は次のようにマークIIの思い出を語りました。
「マークIIは高度経済成長を日本中のサラリーマンに感じさせたクルマでした。日本中が“中流”といわれるなかで、中流のなかでも上級とオーナーに思わせるのがマークIIだったのです」
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二之夕氏は学生時代にアルバイトをして30型(3代目)のマークIIを購入し、トヨタに入社した後は周囲に勧められたAE86ではなく70型(5代目)のマークIIを購入したほど、マークIIに惚れ込んだといいます。
筆者(工藤貴宏)にとってマークIIといえば、なんといってもGX71型(5代目)が印象的です。都会的な直線デザインに、あまりの白さに驚いた「スーパーホワイト」のボディカラー、そしてワインレッドのラグジュアリーな内装と豪華装備を備えた「グランデ」のマークIIは、当時小学生だった筆者にとっても衝撃的でした。
筆者の父親は購入を検討したものの、結局日産「スカイライン」(当時はスカイラインとマークIIはライバル関係だった)を購入したので、マークIIは実家のガレージに収まることはありませんでした。
しかし、まさに中流階級のサラリーマンだった父親にとってもマークIIは憧れのクルマだったようです。
70型(5代目)世代の1987年に年間新車販売ランキングで2位に躍り出たマークIIは、1994年までそのまま2位をキープしますが、1990年代の終わりに販売台数が減少し、2000年代に入ると急降下。
マークXと名前を変えてイメージを切り替えますが、日本でのセダンの衰退もあって盛り返すことはありませんでした。それが、生産終了へとつながったのです。
トヨタは今後、車種数を半分程度に減らすことを表明しています。それはすなわち、今後もマークII/マークXのようにビッグネームが消える可能性があることを示唆しているといえるでしょう。
ところで、マークXの終了により日本から消えてしまうものがあります。それは手軽に買えるFRセダンです。
マークXの価格は270万6000円からで、これは日本でもっとも安く買えるFRセダンでした。しかしマークXが終了することで、日本から200万円台だけでなく、300万円台のFRセダンもなくなります。つまり、FRセダンは遠い存在となってしまうのです。
マークXが消えた後にもっとも安く購入できるFRセダンは日産スカイライン「GT」ですが、価格は435万3800円と一気に跳ね上がるのでした。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
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