なぜ車はモデルチェンジする? 新型車や大幅改良で成功・失敗する要因とは

クルマのモデルチェンジは、メーカーや車種によって変化の大小はさまざまですが、その変化が命運を分けるケースもあるようです。では、なぜ自動車メーカーは多額の開発費を掛けて造った新型モデルに手を加えて改良やモデルチェンジをおこなうのでしょうか。

クルマの運命を分けるモデルチェンジ

 クルマは、新型モデルとして発売された後、幾度となく改良が施されます。これらのなかには、同じモデルなのかと思わず二度見するほど外観デザインが大幅に変更されているものから、どこが変わったのか分からないレベルの改良など、さまざまです。

 では、なぜ自動車メーカーは多額の開発費を掛けて造った新型モデルに、再度手を加える改良やモデルチェンジをおこなうのでしょうか。

クルマは一新するフルモデルチェンジや刷新レベルのマイナーチェンジなどさまざまな改良をおこなっている
クルマは一新するフルモデルチェンジや刷新レベルのマイナーチェンジなどさまざまな改良をおこなっている

 クルマの「フルモデルチェンジ」は、米国の自動車メーカーであるゼネラルモーターズ(GM)のアルフレッド氏が、フォード社への巻き返しを図るためにおこなったのが始まりとされています。

 外装や内装、車内設備を一新した同車種の新型車を出すことで、GM車ユーザーの購買意欲を高めて販売促進に繋げました。

 現代でたとえるなら、最新のスマホを持っている人を見ると自分もつい欲しくなる、といった消費者心理へのアプローチに似ています。

 フルモデルチェンジといえど、基本的には先代モデルのコンセプトやデザインを継承しているものがほとんどですが、姿を大きく変えて再登場するというクルマもあります。

 最近では、トヨタのSUV「RAV4」がその代表的な例です。かつて国内で販売されていた初代から3代目は、当時SUVの主流であったオフロードタイプと一線を画した街乗りメインのオンロードタイプとして、現在に至るSUVブームの発端的な存在でした。

 しかし、4代目は海外向けのみの販売であったため、一度国内市場から撤退したRAV4でしたが、2019年にフルモデルチェンジされ5代目となるモデルが国内で販売されます。

 5代目RAV4はそれまでと一転し、オフロードタイプとして登場。わずか3ヶ月で約1万7000台を販売し、デビューまもなく人気車種となりました。

 その後も販売は好調で、2019年4月から9月の普通車新車販売台数ランキングでは13位、販売台数は3万9299台で、SUVジャンルでは1位となっています。

 また、トヨタでは3代目「プリウス」以来となる2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、名実ともに人気車種となりました。

 しかし、RAV4のような例は少ないといえます。思い切ったフルモデルチェンジは成功すれば大ヒットが見込めますが、失敗すればそのクルマの人気を下げかねません。そこで、自動車メーカーは現行車種を改良する「マイナーチェンジ」をおこなうようになります。

 マイナーチェンジは、フルモデルチェンジほどのコストをかけなくとも現行車種に新鮮さを出せることから、早ければ登場から2年ほどでおこなわれる場合もあり、現在では多くのメーカーが実施する販売戦略です。

 前後のバンパーやライト類といった外装デザインの刷新から、サスペンションのセッティング調整や安全・快適・燃費の各性能の向上など、外見では分からない中身のものまで、自動車メーカーによってさまざまなマイナーチェンジ(商品改良)がおこなわれています。

 また、マイナーチェンジにおいては、4代目「プリウス」の成功が顕著に現れた例です。

 4代目プリウスは2015年に発売されました。プリウス史上最も売れた3代目の人気をそのままに、満を持して登場しましたが、「歌舞伎顔」と呼ばれるフロントマスクデザインの不人気などで、販売が伸び悩みます。

 そこで、2018年12月にマイナーチェンジをおこない、フロントグリルや前後のバンパー形状に加え、前後のランプ形状などのデザインを一新しました。

 マイナーチェンジ後のプリウスは「後期型」と呼ばれ、歌舞伎顔からマイルドな顔立ちへ変更。後期型は登場してから徐々に人気を獲得し、2019年4月期の新車販売台数ランキング(登録車)では、プリウスが2017年12月から16か月ぶりに首位になり、2019年1月から11月現在でも通算トップの販売台数です。

 プリウスのマイナーチェンジについて、トヨタの販売店スタッフは以下のように話します。

「マイナーチェンジ前も堅調な販売でしたが、デザインが変わったことで、先代モデルのプリウスユーザーの方からの評判が上がったように感じます。

 新型プリウスへの乗り換えを迷っていたが、デザインが変わり気に入ったので乗り換えを決めた、という方が一定数いらっしゃったのが印象的です」

 3代目からフルモデルチェンジした結果、4代目の勢いが衰えましたがマイナーチェンジで挽回し、かつての絶対的王者プリウスの底力が垣間見えました。

※ ※ ※

 また、一部改良やマイナーチェンジの違いと、販売動向について大手自動車メーカーの広報スタッフは次のように話します。

「メーカーによって、マイナーチェンジや一部改良、商品改良と呼び方は異なります。自動車業界的には、外装や中身の機能などの少幅変更などを一部改良と呼び、外観デザインが大きく変更される場合や、パワートレインの追加などをマイナーチェンジということが多いです。

 また、マイナーチェンジや一部改良は、新型車として発売して時間が経ったモデルの商品価値を底上げするためにおこなっています。

 しかし、一部改良レベルでは大きく販売台数が変化することは少ないです。もし、マイナーチェンジレベルで販売台数が既存台数よりも上振れしなければ、社内的に失敗の烙印を押される可能性もあります」 

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