FFスポーツの頂点を極める! ルノー「メガーヌR.S.トロフィー」を筑波サーキットで試乗してみた
ドイツにあるニュルブルクリンクは、「世界一過酷なサーキット」として知られています。そのニュルブルクリンク北コースで2019年4月5日、量産FF車最速となる7分40秒100を記録したモデルがルノー「メガーヌR.S.トロフィーR」です。そのDNAを受け継ぐモデル「メガーヌR.S.トロフィー」が日本に上陸。さっそくサーキットで試乗会が開催されました。
1.8リッターターボエンジンは300馬力/420Nmで前輪を駆動
フランス生まれのルノー「メガーヌ」も、ドイツ西部に位置するニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)が気になるようです。
1周20kmを超える、世界一過酷といわれるサーキットで、FF最速タイムを更新しているのがメガーヌ「ルノー・スポール」です。ルノー・スポールは通常「R.S.」と略され、クルマに付けられるバッジもこの略称で表示されています。
そして、これまでのどのメガーヌR.S.より強力な「メガーヌR.S.トロフィー」が上陸しました。
メガーヌR.S.にトロフィーの名前が付くモデルは、過去にも2005年発売の「メガーヌII R.S.トロフィー」、2012年発売の「メガーヌIII R.S.トロフィー」、そして2015年に発売されたフェイスリフト後の「メガーヌIII R.S.トロフィー」と、日本にも3車種が上陸しました。
今回のトロフィーは、メガーヌR.S.通常モデルの、1.8リッター直噴ターボエンジンから21馬力アップして300馬力になり、最大トルクは30Nmアップして420Nmとさらに強力になっています。ちなみにこのトルクは、2ペダルの6速EDC(DCT)モデルのスペックで、6速MTモデルは400Nmです。これはおそらく、トランスミッションのキャパシティに合わせて最大トルクを決めたのだと思います。
日本では、2019年10月31日から発売が開始されましたが、デビューしたてのメガーヌR.S.トロフィーにサーキットで乗ることができました。とはいっても、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェの10分の1、1周2kmの筑波サーキットです。このサーキットを舞台に、新しいメガーヌR.S.トロフィーの走行フィーリングをお伝えします。
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ホームストレートを過ぎて第1コーナーに向かっていき、150km/hオーバーからブレーキングを開始します。
60km/h台までスピードを落としてターンインして、そこから出口に向かってアクセルを踏んで徐々に加速していきます。ターンインのときの挙動は、「R.S.ボタン」による走行モードの切り替えによって変化します。
デフォルトである「ニュートラルモード」では、リアが滑り出す気配もなく弱いアンダーステアをキープして安定感があります。
「スポーツモード」にすると少しリアが出るようになって、ニュートラルモードより曲がりやすくなっています。
そして「レースモード」では気持ち良く曲がるくらいリアが滑り、いち早くノーズがコーナー出口に向かってくれるので、早めにアクセルペダルを踏み込んで加速に移れます。リアが少し滑り出した段階でパワーオンすると、そこからはアンダーステアは出ずに素晴らしいトラクションにより加速していきます。アウトに膨らんでいかないので、思い切りアクセルペダルを踏み込んでいけます。
やはりサーキットを走るときには、このレースモードが走りやすいのです。
これは最大2.7度動く後輪操舵「4モーション」の、逆位相から同位相への変換点の車速が変わるためです。通常のニュートラルモードでは60km/hで切り替わります。逆位相は小回りが効くように動くのですが、同位相では安定性を高めるために効果があります。
それがレースモードになると、切り替わる車速が約100km/hに上がります。つまり100km/hを超えないと安定方向に後輪操舵しないので、第1コーナーのターンインのスピード域ではよく向きが変わるように作用しているのです。
ターンインで少しリアが滑り出すような感じにはなりますが、安定性を欠くような動きではなくサーキット走行として安心感があります。ゆっくりした動きなのでコントロール性はとてもいいです。
4モーションは、ニュートラルモードとスポーツモードでは同じように60km/hで切り替わります。なぜフィーリングに差が出たのか不思議だったのですが、ルノーのスタッフに聞いたところ、ESC(横滑り防止装置)の作動に違いがあるそうです。スポーツモードの方がESCの介入が遅いそうで、よりスポーティな走りに合わせているからだそうで納得がいきました。
新種のスポーツカーだ、いやそんな狭い括りで語れる存在などではなく「高性能実用車に新ジャンルを築く」エポックと言っても過言ではない、そう確信する。
だからこそタウンユースにはいまいち硬めのサスペンションがもう少ししなやかなら100点満点と思うに惜しまれる。
メガーヌRSとRSトロフィーの連合で「アウディA7 55TFSIやメルセデスCLS450辺り迄」なら対等の動力性能を持つのだから、ゴルフGTIに飽きたらぬ人間やゴルフRの「怪物のような高価格」についていけず尚且軽妙な身のこなしを求める欲張りマニア、前記3リッターターボから上のフルサイズセダンからのダウンサイザーに至る多様なユーザー層をどのように惹き付け、磁石のように虜にしていくか今後の活躍に期待したい。