「レクサス」ブランド登場30年 最新モデルに乗ってわかったレクサスらしいクルマづくりとは
1989年にレクサス「LS」が北米で登場してから2019年で30年を迎えます。レクサスがこれまでの30年で培ってきたブランド力と今後の方向性を、最新バージョンの「LC」「RX」のインプレッションを元に考えます。
1989年、北米で登場したレクサス「LS」は大きなインパクトを与えた
レクサスは、日本のプレミアムカーブランドとして定着してきました。
レクサスブランドの始まりは、ベルリンの壁が崩壊した1989年ですから、いまからちょうど30年前のことです。最初に「LS」が登場したとき、アメリカ市場ではレクサスブランドで発売されましたが、日本市場では「セルシオ」というトヨタのブランドでした。やがてLSはレクサスブランドに統一され、世界市場に浸透していきました。
30年前にデビューした初代LSは、世界のプレミアムカーに大きなインパクトを与えました。
それは、桁違いの静粛性でした。運転中に聞こえる音で目立つのは、雨の日にウインドシールドに当たる雨粒の音くらいです。それまでは、走れば車内に騒音がするのが当たり前と考えられていました。
ところがLSの登場によって、車室内を静かにすることが乗員に対してどんな大きなメリットを生むのかを考えさせるきっかけになりました。単に遮音材を厚くして車内に音を伝えないだけでなく、レクサスはタイヤやエンジンという音の発生源から静かにすることに配慮したクルマづくりにアプローチしていました。
車内を静かにするということは乗員の快適性に貢献するのですが、初期のレクサスの乗り心地は日本的でもあり、アメリカの高級車のようでもあるソフトな乗り味でした。路面のインフォメーションも伝えないほどの乗り心地は、ハンドリング性能にとってはマイナスで、ユーザーからはもっと走りの良いレクサスを望む声が増えました。
1991年には「SC」(日本名「ソアラ」)、そして1993年は「GS」(日本名「アリスト」)が登場しましたが、この頃からドイツのプレミアムカーのハンドリング性能を目指すようになりました。バネを強くしてダンパーの減衰力を高めにセットして、ハンドリング性能重視のセッティングになっていきました。
1996年には「LX」、1998年には「RX」というSUVモデル、1999年にはDセグメントセダンの「IS」、2002年は「GX」、2008年にはスポーツバージョンの「IS F」、2009年はハイブリッド専用の「HS」、2010年にはスーパースポーツカー「LFA」、2011年にはプレミアムコンパクト「CT」、2014年には2ドアクーペ「RC」、SUVの「NX」、そして2017年のフラッグシップクーペ「LC」というように、レクサスは続々と新型車を世に送り出してきました。どれも快適性を高めつつ、良い走りに重点をおいたセッティングにしてきました。
そして今回、改めてLCに試乗しました。2017年にデビューした2ドアスポーツカーのLCが2018年にマイナーチェンジ、そして2019年にも手を入れて熟成させたモデルです。
2018年には、乗り心地のほかにステアリングサポートをアルミダイキャスト化し、ステアリングギヤブッシュの剛性アップ、ブレーキの効き味などにも手を加えていました。今年も乗り心地を向上させたほか、接地性を向上させてハンドリング性能をアップ、V型8気筒エンジン車は速度コントロール性の向上も狙っています。
実際にハンドルを持って走ってみると、肩の力を抜いて運転できるようになったと感じました。
ドライバーがハンドル、アクセル、ブレーキを操作しながら走るとき、それぞれの反応が期待どおりなので自然な感じで運転できたからです。ハンドルの応答性は自然で、シャープ過ぎることもなく、鈍過ぎることもなく、また応答遅れも感じずにドライバーの描くラインをトレースしてくれます。
そして乗り心地も、路面凹凸への当たりの硬さがなくなっただけでなく、ブルブル震えるようなバネ下の振動もなくなり、自然な感じでサスペンションがストロークするようになりました。新型が誕生してから、こうして改良を加えていくことはプレミアムブランドとしては大事なことだと思います。このような進化が、ブランドを創っていくことになるのだと思います。
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